Education in Front-Line and Essays by Hiroshi Hayashi (はやし浩司)

(Mr.) Hiroshi Hayashi, a professional writer who has written more than 30 his own books on Education, Chinese Medical science and Religion in Japan. My web-site is: http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/ Please don't hesitate to visit my web-site, which is always welcome!!

Monday, October 04, 2010

●核(コア)形成の遅れた子ども(ある母親からの相談より)

●ある母親からの相談

【Y県SD市のDさん(母親)より、はやし浩司へ】(一部改変)

こんにちは、はじめましてSD市に住んでいます、Dといいます。
相談するのは、小学5年生の長男についてです。
下に小3の二男と、1歳の三男がいます。

ずっとその長男について、悩んでいました。
親や友人に相談もしていたのですが、良くなることがなくどうしたらいいのかわからなくなってしまいました。

先生のこのページを見てまさしく、ドラ息子に当てはまります。

まず、(1)に今年の先生から授業中手いたずらが多い、忘れ物が多い、机の中が汚い、みんなで音楽の授業をしていても歌わないと指摘されました。去年の運動会でみんなで踊るのに踊っていませんでした。それまではやって見せてくれていたの、何があったのかどうしたのかわかりません。

(2)人の話が聞けない、自分の意見を上手く話せない。
(せっかちで人が話している間に割り込んでしまい最後まで聞けません。話すのも早口でよく冗談でアナウンサーみたいと言うくらい、早口になってしまいます。)

(3)マジギャザに今はまっていて漫画もせりふなど覚えてしまうほど読んでいて、ゲームもマジギャザ。ゲームやりたさに宿題は学校でやったと嘘をついていました。(もしかして嘘ついてるかなとは思っていましたが信じようと思ってほっといたんです。先日、先生に言われ嘘とわかりました。)

(4)みんなといっしょのゲームができない。(負けず嫌いで負けると泣いたりやる気をなくしたりする)良くないと思い、鍛えさせる様なつもりでボーリングに連れて行ったりするのですが、良い方法に向かっているのかわかりません。

(5)小さい頃から絵を描くのが好きなんですが、この2年くらい家では描かなくなりました。わけを聞くと弟が下手だとか言うから。二男はよく絵を描いています。二男だけ褒めないように私も主人も心がけているのですが。逆にうちで書いていた頃はよく褒めていたくらいです。

(6)食事中、毎回お茶碗を持ってと言わないといけない。(小学校の2年生くらいから犬食いになったり、持たなくなったりとして注意が始まりました。犬食いはなくなりましたが落ち着きがありません。)

周りに関心がありません。みんなと同じようにというのができないのです。食事のマナーだったり学校での歌や練習です。友達に言われたりして恥ずかしいとかそのうち思う年頃だと思うのですが、その気配がありません(鼻くそもほじります)幼いと主人や母が言います。

食事のときくらいしか子供とゆっくり話ができないので、テレビはいつもつけていません。学校など話をしようとしても気が付くと、兄弟でマジギャザの話になってしまいがちです。主人は不規則な仕事をしているため、ほとんどが私と子供たちの生活です。休みで主人がいるとあまりのできなさに、説教の一日になってしまうこともしばしばあります。

三男が生まれる前は仕事もしていたりして、子育てと家事と仕事でつねにイライラしてました。小さい頃からそんな私のイライラを子供たちにぶつけていた気がします。
長男は悪くないに私のせいで主人や学校の先生に責められています。どうしたらいいのか分からなくなってしまいました。何からどうしたらいいのでしょうか? 教えてください。よろしくお願い致します。

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

【はやし浩司より、Dさんへ】

 一読して、ウ~ンと、うなってしまいました。
いくつかの問題が複合して重なり、それが長い時間をかけて、こじれてしまっている。
しかしもう小学5年生。
どこからどう話すべきか……。

(1)長男を、D君とします。 
あなたとD君のリズムは、D君を妊娠したときから、合っていない。
不安先行型、心配先行型、それに恐らく愛情問題(夫婦間の問題)などがあり、あなたはD君をいつも否定的態度で育ててきました。
今もそれがつづいています。
あなたはD君を愛することができないでいる。
そういう自分をごまかすために、「問題はD君にある」と、問題の核心をすりかえてしまっている。
が、私はあなた自身に、問題があると思います。

 結婚当初の夫との不和もあったかもしれません。
家庭問題もあったかもしれません。
全幅にD君を、愛情でくるんで迎えたというよりは、何かのわだかまりやこだわりをその時点でもってしまった。
それが今につづいているということです。
あなたはD君の悪い面ばかりが目につき、またそれを問題にして勝手に騒いでいる。
「勝手に」です。

D君にとって、今の家庭はさぞかし、居心地の悪い家庭でしょうね。
気楽にハナクソもほれない、気楽に食事もできない、テレビを見ることも、ゲームをすることもできない。
私がD君なら、「うるさい!」「バカヤロー!」と叫んで、家を出ていくでしょうね。
あるいはそうなる可能性が高い。

(2)D君には、あなたの知らない、何かの情緒的問題(発達障害)があったものと思われます。
今は年齢的にそれが改善していると思われます。
本来なら、3~5歳期に、発達相談センターのようなところで、相談すべきだったかもしれません。
情報が不足していますから、ここではこれ以上のことは書けません。
しかし相談していれば、何かの診断名がくだされていたはずです。
つまり本人の意思では、コントロールできない問題を、D君はもっていたということです。
いわんや親が説教したり、叱ったりしたくらいでは、なおるはずもない。
むしろそんなことを繰り返せば、症状はこじれてしまいます。

 それに気づかないまま、あるいはあえて目をそむけたまま、無理に無理を重ねてきた。
症状をこじらせてしまった。
メールを読んで、そんな印象をもちました。

(3)あなた自身の生まれ育った環境にも、問題があります。
あなたは「男の子」というものが、どういうものか、まったくわかっていない。
小学5年生にもなって、学校であったことを親に話す子どもは、いません。
(あるいはD君は、あなたとは話をしたくない。)
過干渉と過関心。
それが混然となって、あなたは自分が理想とする子どもに、D君を作ろうとしています。
もしあなたに自然な親像、あるいは「男子観」があれば、もう少し自然な子育てができるはずです。
つまりそれができないということは、あなた自身が生まれ育った環境に、問題があったということです。
たとえばあなたの父親が、権威主義的であったとか、あなたに男の兄弟がいなかったとか……。(これは私の推測です。)

(4)D君は、その一方で、愛情飢餓状態にあります。
二男との年齢差が小さいので、逆算するとD君が2歳前後のとき、二男が生まれたことになります。
今の状態からすると、赤ちゃん返りもあったかもしれません。
あなたはD君の愛情飢餓に気づくこともないまま、「お兄ちゃんだから」と、上下意識でもって、D君を抑え込んでしまった。
その可能性もあります。
だから今、思春期前夜の反抗期にかかり、無意識のうちにも、あなたの求める理想的な子どもとは別の子どもを演じている。
「どうせ嫌われているのだから……」とです。
あなたにはD君のそんな悲しい声が聞こえないかもしれませんね。
おかしな親意識ばかりが強くて……。

 子どものウソを知ってどうなりますか。
どうしたいですか。
そんなウソが、どうして悪いのですか。
それともあなたは、そういうウソをついたことがないとでもいうのですか。
どうして笑ってすませないのですか。
言い替えると、自分の子育ての失敗を、子どもの責任にしてしまっている!

「子どもは家族の代表」と考えてください。
子どもに何か問題があったら、反省すべきは、まずあなた自身です。
自分のどこにどのような問題があったかを知る。
子どもというのは、あくまでも、「代表」、つまり「結果」です。

(5)問題はさらにこじれます。
今、あなたは「長男は最悪」と思っているかもしれません。
しかしこうした問題には、さらに二番底、三番底があります。
「まだ以前の状態のほうがよかった……」ということを、周期的に繰り返しながら、子どもは二番底、三番底に落ちていきます。

 だから「直そう」と思わないこと、
「今の状態をこれ以上悪くしないことだけ」を考えて対処します。
ボーリングへときどき連れていったくらいで、性格が直るはずもないでしょう。
5年生ですよ。
「鍛える」とか、「鍛えない」とか、そういう問題ではありません。
0~2歳まで、さんざん、甘やかしておいて、その結果、今の状態になり、あわてて「鍛える」?
はっきり言いますが、もう直りません。
あきらめなさい。
あきらめて、「うちの子は、こういう子」と居直りなさい。
そこを原点にして、D君をもう一度、見つめなおしてあげてください。
そしてあなたは、こう言うのです。

「あなたはよくがんばっているわね」と。

あとは『許して、忘れます』。
(「はやし浩司、許して 忘れる」で原稿を検索してみてください。)

 あなたが「何とかしよう」「何とかなってほしい」とがんばればがんばるほど、あなたに安穏たる日々はやってこないでしょう。
あなたはそれでよいとしても、かわいそうなのは、D君です。
私はあなたより、D君のほうに同情してしまいます。
もしD君にその力があるなら、きっと逆に、私にこんな相談をしてくるでしょうね。

「ぼくのママは、うるさくてたまりません。
ゲームも自由にできません。
宿題をやったかと、毎日聞きます。
で、ウソを言いました。
が、それを先生から聞き、また説教です。
家に帰るたびに説教です。
おまけにいつもできのいい弟と比較され、『あんたはダメな子』と決めつけてきます。
やりたくもないボーリングをさせられ、何をしても、おもしろくありません。
歌も、踊りもへたです。
家族には、幼稚ぽいとよく言われます。
食事のときくらい、テレビを見たいです。
が、あれこれと勉強の話ばかり……。
ぼくはどうしたらいいでしょうか」と。

(6)あなたはイライラしていた……。
理由は何であれ、もしそこまで気がついているなら、「これが運命」と受け入れるしかないですよ。
人間には無数の糸がからんでいます。
その糸が、ときとして自分を思わぬ方向へと導いていってしまうことがあります。
その運命ですが、逆らえば、キバをむいてあなたに襲いかかってきます。
しかし受け入れてしまえば、向こうからシッポを巻いて逃げていきます。

 私が今、あなたにできるアドバイスは、こうです。
運命を受け入れなさい、です。
あなたの子どもは、今、そこにいる子どもです。
これ以上、どうにもなりません。
あなたがもっている理想像など、クソ食らえと、捨てなさい。
(あるいはどんな子になれば、あなたは満足するのですか?)

「私のできが悪いから、子どものできも悪い」と、認めればよいのです。
気が楽になりますよ。
そしてここが重要ですが、あなたの気が楽になれば、D君もまた気が楽になるということです。
そのときD君の顔にも、笑顔が戻ってくるでしょう。

 たとえばゲームについても、頭から「悪いこと」と決めつけないで、たまにはあなたもいっしょにゲームをしてみたらよいのです。
攻略本がたくさん出ていますから、一冊くらい買ってきて、読みなさい。
子どもの世界に、あなたが入っていくのです。
そうすれば、子どものほうから心を開いてくれます。
よかったら、私の「BW公開教室」をのぞいてみてください。
(http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/より)

(7)D君が、幼児もしくは小学1~2年生なら、別のアドバイスができたと思います。
しかし5年生です。
この時期はあっという間にすぎ、子どもはおとなになっていきます。
……というより、すでに半分、おとなです。
(おそらくあなたの異常な過関心と過干渉で、人格の核(コア)形成が遅れている可能性もあります。幼稚ぽく見えるのは、そのためと考えてください。)

 あなたのできることは、もうほとんどないということです。
もしあるとすれば、先にも書いたように、D君をそういう子どもと認め(=人格を認め)、そこを原点として再出発することくらいです。

 この先、とくに親子の絆づくりが大切なときがやってきます。
ここでキレツを入れると、そのまま「断絶」ということにもなりかねません。
もしそうなったら、それこそ家庭教育の大失敗ということになります。
それだけは避けてください。

 そのためにも、D君を信ずる。
信ずるということは、疑わないということです。
これはあなた自身との闘いです。
今のあなたにはたいへんむずかしいことかもしれませんが、……というのも、すでに10年以上も確執がつづいていますから……、がんばってするしかないでしょう。

 よい面を見たら、ほめる。
よい面だけをさがして、それをほめる。
それを繰り返してください。
アラさがしは、タブーですよ!

歌や踊りのことは、先生に任せておけばよいでしょう。
あなたまでカリカリしてはいけません。
D君はますます行き場をなくし、やがて非行(二番底)へと進むかもしれません。

 ずいぶんときびしいことを書きましたが、参考にしてください。
今がまさに正念場です。