Education in Front-Line and Essays by Hiroshi Hayashi (はやし浩司)

(Mr.) Hiroshi Hayashi, a professional writer who has written more than 30 his own books on Education, Chinese Medical science and Religion in Japan. My web-site is: http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/ Please don't hesitate to visit my web-site, which is always welcome!!

Saturday, July 17, 2010

●ほたる

●ほたる(Firefly)(7月17日)

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夜中にふと、窓の外を見た。
時刻は午前2時ごろ。
ワイフがトイレに起きた、そのあとのことだった。

網戸と窓が見えた。
が、その向こうに、なにやら光るもの。
ぼんやりと、やさしく光っては、
おなじようにやさしく消える。

私は思わず、声をあげた。
「ほたる!」と。

その声に驚いて、ワイフが寄ってきた。
「あら……」と。
網戸を開けた。
窓の外を見た。

1つや2つではなかった。
20……、
30……。

それぞれが深い草の中で光っていた。
うれしかった。
どういうわけか、うれしかった。

「ほたるだよ」
「本当ね、ほたるだわ」
「こんなところに出るなんて!」
「こんなところに出るなんて!」と。

窓からは数メートルも離れていない。
裏手が低い土手になっている。
そこにほたるはいた。

飛んでいなかった。
枝につかまって、じっとしていた。
そんな様子だった。
私とワイフは、時間を忘れて、
その光に見とれた。

……子どものころが思い浮かんできた。
私はかごにつめたほたるを、一晩中ながめていた。
独特のにおい。
そしてあの光。
そんな自分が、たまらなく懐かしい。

「まだ幼虫なのかしら」とワイフが言った。
「そうかもね……」と。

私は懐中電灯を手にすると、庭に出た。
土手に向かった。
ほたるは、まだそこにいた。
私に警戒するふうでもなく、やさしい光を
放っていた。

ホワ~ンと光り、またホワ~ンと消える。
それを静かに繰り返していた。

が、懐中電灯でそのあたりを照らすたびに、
写真のネガとポジが入れ替わるように、
景色が一変する。
遠近感が狂う。
光る方向をしっかりと定めながら、
懐中電灯をつける。
数回、それを繰り返す。

「いた!」

細い枝に、5ミリ~1センチくらいのホタル。
まだ色は茶色い。
幼虫のようだ。

枝ごと折る。
ワイフに見せたかった。
が、折ったとたん、どこかへ消えた。

「ま、いいか」と思って、その場を去る。

再び、うれしさがこみあげてきた。
裏庭で、ほたるを見た。
自分の家の裏庭で、ほたるを見た。
それがどういうわけだか、うれしかった。

家に入り、再び寝室へ。
が、ワイフは、もういびきをかいて眠っていた。
のんきな女性だ。
私は静かにふとんをかぶると、電灯を消した。

「どうすれば写真に撮れるだろう……」と、
そんなことを、私は懸命に考えていた。
「今度のコンデジではだめだろうか?」と。

この夏に、もう一度、チャレンジしてみる。
ほたるの写真を撮ってみる。

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2010/07/17朝

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