Education in Front-Line and Essays by Hiroshi Hayashi (はやし浩司)

(Mr.) Hiroshi Hayashi, a professional writer who has written more than 30 his own books on Education, Chinese Medical science and Religion in Japan. My web-site is: http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/ Please don't hesitate to visit my web-site, which is always welcome!!

Monday, February 14, 2011

●子育てQ&A

3月号相談事例

相談(1)小学6年生の母親から
 長女は几帳面な性格で、宿題もきちんとするし、忘れ物もしないしっかりした子なのですが、もう少し自分の意見をみなの前で言えるような積極性を身につけてほしいと思います。
 報道で社会の状況がますます厳しくなることを知るにつけ、この子の将来を考えると、このままでいいのか考えてしまいます。何かできることはないでしょうか?
























A:私の母は、いつもこう言っていました。『上見てキリなし、下見てキリなし』と。子どもはすでに思春期に入っています。この時期は、子どもの良い点だけを見、それを伸ばすことだけに心がけます。欠点を指摘すれば、役割混乱が起き、自我の確立に失敗します。結果として自己評価力の低い子どもになり、「まだ以前の方が良かった…」を繰り返しながら、「下へ、下へ」と向かってしまいます。親子の間に、大きなキレツを入れることにもなりかねません。
 文面から判断するかぎり、すばらしい子どもです。『まじめにまさる美徳なし』。むしろ心配なのは、不安先行型(=取り越し苦労型)のあなたの育児姿勢です。恐らくその姿勢は、長女を妊娠したときからつづいていると考えられます。その結果が、「今の状態」ということになります。ではどうするか。
 最初は言いにくくても、「うちの子はすばらしい」を、みなの前で繰り返し言ってみてください。その言葉はやがて第三者を経て、子どもの耳に入ります。直接、子どもの耳に入るよりも、はるかに効果的です。これを「ウィンザー効果」といいます。またこうすることによって、それが「パブリック・アナウンスメント(公的宣言)」になり、あなた自身の心を作り替えることもできます。
 で、6年後、10年後の心配はしないこと。まず「今」できることを、懸命にします。「結果」はかならず、あとからついてきます。
 


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相談(2)中学3年生の父から
 入試を控え、合格に向けてがんばっている息子。しかし志望している高校は、少し背伸びをして届くかどうかという学校を選びました。
 受験する高校を選んだのは本人だし、親としても本人とよく相談したことなので、合格を信じて応援しています。でももしものとき、親はどういう態度を取ったらいいのかを考えると、憂うつです。どうしたらいいでしょうか?

























A:憂うつになって当然です。憂うつにならない親はいません。そこで大切なことは、視野を広くもつ、です。そこに健康な子どもがいる。元気で生きている。そこを原点に考えれば、子どもの受験など、腸から出るガスのようなものです。賢明な人は、その価値を失う前に気づき、そうでない人は、失ってから気づきます。健康しかり、青春時代しかり、そして子どもの良さも、またしかり。
 で、相談の件。子どもの受験はすべて、「不合格のときを考えて準備する」です。そのとき親はどのように対処し、子どもの心を守るか。いかに心の傷(トラウマ)を最小限に抑えるか。それを今から準備します。ポイントは子どもとともに、どうそれを乗り越えていくか、その道筋を、あなた自身が用意しておく、です。方法は簡単です。親ではなく、子どもの「親友」として、子どもの横に立ちます。それができれば、つぎの行動は自ずと決まってきます。
 なお、あなた自身もそうであったように、子どももまた、挫折し、失敗し、そのつど傷まるけになりながら、よりたくましくなっていきます。親としてはつらいところですが、その苦しみに耐えるのも、親の仕事のひとつです。恐れないこと。逃げないこと。
 あとは子どもに任せます。合格すれば祝い、そうでなければ、おいしいものでも食べて忘れます。それがドラマ。そのドラマの中にこそ、生きる意味や価値が隠されています。


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1月号事例

相談(1)小学2年生の母から

 子どもがまだ幼児のころに離婚したのですが、離婚したことを子どもに話すタイミングはいつがいいのか悩んでいます。
「離婚は、あなたが原因ではないよ」ということを伝えたくて、それとなく話すこともあるのですが、具体的なことを話すのは、子どもがはっきり聞いてくるまで待つのがいいか、早い時期に話しておく方がいいのか、どちらがいいのでしょう。























A:今どき「離婚」など、珍しくも何ともありません。くだらない罪悪感など、捨てなさい。バカげています。子どもにいちいち理由など、話す必要もありません。いわんや子どもに、「原因はあなたではないよ」とは! あなたはあなたで、前向きに、明るくさわやかに生きていけばよいのです。
 ただし聞かれたときは、ありのままを正直に話します。事実だけを話し、それですませます。父親の悪口、愚痴、自分の正当化は、タブー。あとの判断は、子どもに任せます。
 それよりも大切なことは、父性欠如による、子どもの心のゆがみを、どう防止するか、です。『母親は子どもを産み育てるが、狩りの仕方を教えるのは父親』(イギリスの教育格言)です。(1)母子関係の是正と、(2)行動の限界設定を、だれにどのような形で負担してもらうか、です。子どもの近くに、「父親」と見立てられるような男性を置くのがよいでしょう。先生やおじ、近所の男性など。子どもはそういう男性を通して、「父親像」を身につけていきます。けっして、ベタベタの母子関係に溺れてしまってはいけません。
 繰り返しになりますが、あなたが罪悪感をもてばもつほど、子どもの心に暗い影を落とすことになります。あなたは何も悪いことをしていません。今のあなたにとって大切なことは、『我らが目的は成功することではない。失敗にめげず、前に進むこと』(スティーブンソン・「宝島」の著者)です。


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相談(2)小学3年生の父から

 うちの長男は、体重が増えることをすごく気にします。身長はあるのですが、体の線が細いので、運動もやっているから、もっと食べるようにと言うと、「太るから……」と言ったりします。
 また参観会や運動会などでは、たいてい女の子グループに男の子1人だったり、男の子グループから外れて、女の子グループの方に座っています。太ることを気にするのは、女の子と仲がいいから? それとも……? 心配です。























A:かなり回りくどい質問ですね。要するに、末尾の「それとも……?」が心配なわけですね。そういうあなたにアドバイスできることは、ただひとつ。『許して、忘れる』です。英語では、「For・give & For・get」と言います。
 この英語をよく見てください。「与えるため&得るため」とも読めます。つまり「子どもに愛を与えるために許し、子どもから愛を得るために忘れる」という意味です。つまりどうであれ、またどういう方向に進もうとも、子どもは子ども。あなたの子ども。許して忘れる。その度量の深さこそが、愛の深さということになります。
 あとは自然の流れに任せます。水にせよ、雲にせよ、流れていくところに流れていきます。親のあなたでも、できることには限界があるということです。もちろんだからといって、あなたの子どもが、「それとも……?」に向かっているということではありません。この時期、ホルモン分泌においては、男女、ほとんど差異がありません。私も小学3年生のとき、人形を抱いて寝ていました。思春期になると、また大きく変化してきます。今しばらく、様子を見られたらどうでしょうか。
 で、「それとも……?」という状態になったら、この言葉を思い出してください。『許して、忘れる』です。人は子どもをもつことで親になりますが、「真の親」になるのはたいへんなことです。その道は険しく、苦しい。あなたはその第一歩を踏み出したというわけです。


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12月号事例

相談(1)小学3年生の父から
 長男は小学3年生で9歳、二男は保育園の年中で5歳です。
このごろ、寄ると触るとけんかになり、「お兄ちゃんがたたいた!」「○○先にけるからじゃーん!」となります。だいたいは長男の方をいさめて、「弟をたたいちゃだめ」としかるのですが、これでいいのでしょうか? 上手な対応のしかたを教えてください。

























A:『けんかする兄弟ほど、仲がいい』といいます。兄弟げんかも、ある一定のワクの中、たとえば親の前で、祭りのようにするのであれば、親はよき聞き役に徹します。判断をくだしたり、罰を与えたりしてはいけません。ただひたすら、聞き役に徹します。
 つまるところ子育ては、「自分探し」です。わかりやすく言えば、あなたは、あなた自身が受けた子育てを繰り返しているだけです。「私は私の親とはちがう」と思っているかもしれませんが、中身は同じです。これを心理学の世界では、「世代連鎖」と言います。
 常にあなた自身は、子どものころどうであったかを問いかけてみてください。あなたも子どものころ、つらい思いや悲しい思いをしたことがあったはず。そういうときあなたは、あなたの親にどうあってほしかったでしょうか。どう接してほしかったでしょうか。それをさぐっていけば、あなたの子どもへの接し方が、自然と定まっていきます。
 いつか私は『兄弟げんかは親の前』という格言を考えました。言い換えると親の前でしているようなら、心配しなくてよいということです。無視して、したいようにさせておきなさい。
 ただし一言。「お兄ちゃんだから・・・」という『ダカラ論』には、注意。問答無用式に相手を押さえつけるときに、よく使われます。上下意識が強く、権威主義的なものの考え方をする人ほど、この言葉をよく口にします。


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相談(2)中学2年生の父から
 勉強もせず部活も熱心にやっているわけではない二男が、「料理人になりたいから、高校へは行かない」と言い出しました。
 それ以来、夕食の手伝いや自分で料理をしてみたりしていますが、いつまで続くやら・・・。
「バカ言っていないで高校へ行け!」と頭ごなしに反対した方がいいか、「やってみな」と後押しした方がいいか、どっちでしょうか?



























A:親の思うようにならないのが、子育て。私の二男も中学2年生のとき、勉強を放棄。以来パソコンと遊んでばかりいました。三男は横浜国大をセンター試験2位の成績で入学はしたものの、3年になるとき中退。 
 私も三井物産という会社をやめ、幼稚園の講師になると言ったとき、母は電話口の向こうで泣き崩れてしまいました。「浩ちゃん、あんたは道を誤ったア!」と。
 以来、私は、外の世界では自分の職業を隠し、内の世界では、自分のキャリアを隠しました。が、もしあのとき、母だけでも私を支えてくれていたら、その後の私の人生は大きく変わっただろうと思います。
 今のあなたにとって大切なことは、子どもを信ずること。子どもがどんな選択をしても、子どもを支えること。「パパは、お前を信じている。お前の行くべき道を進め。どんなことがあっても、応援する」と。
 中学2年生と言えば、自我の同一性を確立する重要な時期です。今、あなたが頭ごなしに反対すれば、あなたの息子の自我はバラバラになってしまうでしょう。それはたいへん危険なことです。注意してください。
 なお私の二男は現在、インディアナ州立大学に籍を置き、CERN(スイス量子加速研究所)のスパコン技術官をしています。三男はJALで副機長(B777)をしています。
 子どもを信ずることは、たいへん苦しいことです。その苦しさは、私も経験しました。



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11月号相談事例

相談①小学2年生の母から
 三女が生まれたばかりで手がかかり、上の子にかける時間が減ったためか、長女と二女のけんかが増えているような気がします。そんなときは、つい長女をしかってしまいます。
 長女は物わかりもよく、親としても頼りにしている面があり、長女ばかりしかってしまうことが申し訳ない気がします。やはり気持ちを切り替えて、しからないほうがいいのでしょうか?
























A:長女はいい子ぶっているだけ。本当は下の妹たちが憎くてならないのですが、それを表に出すと、自分の立場がなくなってしまう。だから仮面(ペルソナ)をかぶる。こういうのを心理学の世界では、「反動形成」といいます。たいへんよくあるケースです。「物わかりもよく…」などと思っていると、ますます長女を追い込んでしまうことになりかねません。一度、イプセンの『人形の家』を読んでみたらよいでしょう。
 結論から先に言えば、長女と二女は、慢性的な愛情飢餓状態にあると考えてください。あなたという親から見れば、3人を平等に育てているつもりかもしれませんが、長女にしてみれば、3分の1に減らされてしまった。そういう状態です。
 で、こういうケースのばあい、『ダカラ論』を振り回してはいけません。「あなたは長女だから…」と。あなた自身も親意識(=上下意識)が強く、子どもを上下に分けて考える傾向があります。つまり長女をしかりやすいというのは、あくまでもその結果と考えてください。
 これは一般論ですが、兄弟姉妹がたがいに名前で呼び合う兄弟姉妹は仲がよく、「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」と上下意識をもって呼び合う兄弟姉妹は、仲が悪くなる傾向があります。そういうことも考えながら、まずあなたの心の中に潜む上下意識を消すこと。しかる・しからないは、そのあとの問題です。


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相談②中学3年生の父から
 いよいよ長男が受験の年ということで、夫婦共々肩に力が入ってしまうのか、さ細なことも受験に結びつけてしまい、あれこれと口を出してしまいます。
 自分が中3のときにどうだったか考えれば、そっと見守るのがいちばんだとはわかっているのですが……。受験期の親はどうあるべきか? アドバイスをください。



























A:ある父親は事業に失敗。そこで高校生になった娘に、「大学進学はあきらめてくれ」と。が、この言葉に娘は猛反発。「ちゃんと親としての責任を取れ!」と。
そこで私が割って入ると、その娘はこう言いました。「私は子どものときから勉強しろ、勉強しろと、そんなことばかり言われてきた。それを今になって、あきらめてくれと、どうしてそんなことが言えるの!」と。
 内閣府(平成21年)の調査によれば、「将来、どんなことをしてでも親のめんどうをみる」と考えている日本の青年は、たったの28%(イギリス66%、アメリカ64%)。
 そこで本題。子育てが終わると同時にやってくるのが、老後。今のあなたは「下」ばかり見ているから、自分の老後がわからない。長男の受験の心配より、自分の老後の心配をしなさい。へたに「勉強しろ!」「塾へ行け」などと言おうものなら、あとあと責任を取らされますよ。しかも一度大学生として都会へ出すと、まず地元には戻ってこない。中には「親のために大学へ行ってやる」と豪語する高校生すらいます。感謝の「カ」の字もない。
あとは(独居老人)→(孤独死)。今のままでは、あなたもそうなります。そこで教訓。長男が、「大学(高校)へ行かせてください」と3度頭をさげるまで、学費など出さないこと。口も出さないこと。…というのは無理かもしれませんが、そうしたき然とした姿勢が、かえって親子の絆を太くします。


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10月号相談事例

相談①中学1年生の母から
 中学で初めてのテストで思うような結果が出ず、すっかりやる気を失った息子に、「目標があったからがっかりするんだよ。目標に近づけるようにがんばろう!」と話したところ、「直前に詰め込むのでなく、毎日がんばるぞ!」と言ってくれたのもつかの間、次の日にはやっぱりお楽しみが先になって、お勉強は忘れられ……。子どものやる気を長続きさせるよい方法は、何かないでしょうか。
(静岡市・HA)























A:『親は海。子どもは船』。こういうときの鉄則は、動揺しないこと。親が動揺すればするほど、子どもは不安定になり、落ち着いて勉強に集中できなくなります。目標といってもこのケースのばあい、それは親の目標であって、子どもの目標ではないということ。親の目標を子どもに押しつけてはいけません。「目標」という言葉を使って、あなたは子どもを自分が望む方向に誘導しているだけ。
 中1といえば、すでに思春期。『自我の同一性』の構築を始める大変重要な時期です。子どもがどういう未来像を描いているか(=自己概念)を知り、それを側面から応援していきます。が、たいていのばあい子どもの描く未来像は、親の希望とはちがったものです。そのためこの先、親子の間で長くて苦しい葛藤がつづきます。つまり子どもは親の夢や希望をひとつずつ潰しながら、成長していきます。それともあなた自身は、親の希望通りの「娘」になりましたか。
で、第二の鉄則は、『最後まで子どもを信ずる』です。子どもがどんな道を選ぼうとも、あなたは子どもを信じます。そして子どもにはこう言います。「お母さんは、あなたがどんな道を選んでも、あなたを信じていますからね」と。
 子どもはこうして現実の自分を作り上げていく。つまり自我の同一性を確立していきます。やる気(自発的行動)はあくまでもその結果として生まれるものです。


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相談②小学2年生の母から
 毎日、学校から帰ってすぐ遊びに来る子に悩んでいます。遊ぶなら宿題を終えてからにさせたいので、その子と宿題を一緒にさせたり、遊びに来るなら一時間くらい後に来てほしいとその子に伝えたこともありますが、わかってくれていないようです。
 親御さんは仕事で遅いらしく、なかなか連絡がしにくいです。いい方法はないでしょうか。
(浜松市・MH)

























A:夜、寝る前になってあなたの子どもが、宿題をやっていないと言ったら、あなたはどうしますか。①いっしょに宿題を片づけてやる。②「明日、学校で先生に叱られてきなさい」と言って、寝させる。
 「自由」とは、もともと「自らに由(よ)る」という意味です。子育てについて言えば、「由らせる」。「自分で考えさせ」「自分で行動させ」「自分で責任をとらせる」です。その自由が子どもを自立させます。
こういうケースのばあい、言うべきことは言い、あとの判断は子どもに任せます。小2といえば、その自覚のある子どもは、どんなに忙しくても時間を見つけ、宿題(勉強)をします。そうでない子どもは、いくら親がお膳立てをしても、つまり時間を作ってあげても、宿題をしません。仮に相手の子どもが1時間あとに遊びに来るようになっても、宿題はしないでしょう。相手の子どもの親に相談しても、無駄です。そういう点では、あなたの家庭教育はすでに失敗しています(失礼!)。自分の子どもが宿題(勉強)をしないことを、相手の子どものせいにしてはいけません。
 過保護ママと依存性ベタベタの子ども。この相談の向こうに見えるのは、そんな母子関係です。それを是正するためには、心を鬼にして、先の②のような親をめざしてください。子どもは小3前後を境に、急速に親離れを始めます。今のあなたにとって大切なことは、「いかにうまく子離れするか」です。


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9月号相談事例

相談(1)小学2年生の父から
 小学2年生の息子に「目標に向かってがんばれる力をつけたい」という思いから、小3の誕生日までにクリアできそうな課題を設けてがんばらせようかと思っています。課題をクリアできれば、ごほうびは何でも欲しい物を買ってあげるつもりです。
 でも妻から、「ごほうびがないとやる気が出ない子にならない?」と言われて、止めた方がいいかと迷っています。こういうやり方は、いけないのでしょうか?























A:完全に的はずれです(失礼!)。動機付けの三悪に、無理、比較、条件があります。「課題をクリアできれば…」は、この中の条件ということになります。よくあるのは、「100点を取ったら、小遣いをあげる」というもの。
 条件のこわいところは、年齢とともにエスカレートしやすいこと。小学生のときは、1000円のほうびでも、高校生になると、10万円になります。
 さらに進むと、条件なしでは、何もしなくなります。物欲と結びつくと、さらにやっかいなことになります。それが必要だから、それを求めるのではなく、物欲を満足させるために、それを求めるようになります。脳の中で、ニコチン中毒と同じようなメカニズムが働くようになります。
で、問題は「課題」の中身ということになります。もしそれが個人的なものであれば、「自分のためにする」を徹します。勉強であれば、なおさらです。「勉強は自分のために、自分でするもの」と。 
 大切なのは、達成感です。「できた!」という実感が、子どもを前向きに引っ張っていきます。
「何でも欲しい物を買ってあげる」? 愚かな育児観は捨てなさい(失礼!)。あのバートランド・ラッセルは、こう書いています。『限度をわきまえた親のみが、真の家族の喜びを与えられる』と。


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相談(2)小学4年生の父から
 小学4年生の長男のことで相談します。
 私の仕事が忙しく、なかなか相手をしてやれないまま過ごしてしまったのがいけなかったのか、遊びといえばひとりでゲームばかり、友達と遊んだり外に遊びに行ったりしません。
 先日、「外で遊ばないの?」と聞いたところ、「外で何して遊べばいいの?」と返されて、がく然としました。このまま、集団で遊ぶ経験もなく成長すると、どんな子になってしまうか不安です。今からできることは、何かないでしょうか?























A:(相手をしてやらなかった)から(ゲームばかりする)と、短絡的に結びつけて考える必要はありません。あなたは父親として、じゅうぶん、その責任を果たしています。たしかに最近の子どもは、集団で遊ぶということをしません。が、こうした傾向はすでに20年以上も前から始まっていることです。
 で、どんな子どもになるかですが、すでにあなたの子どもは大きな流れの中にいます。その流れの中で、子どもたちはつぎの世界を創りあげていきます。その流れに対しては、私もあなたも、無力でしかありません。あえて言うなら、つぎの格言が役に立つでしょう。『子どもを産み育てるのは母親の役目。狩の仕方を教えるのは父親の役目』(イギリスの教育格言)と。
 つまり社会性の養成と、母子関係の是正。この2つがこの時期の父親に与えられた重要な使命と考えてください。
 なおゲームについてですが、韓国や中国では、ゲーム中毒が問題にならない日がありません。そのための矯正プログラムや矯正施設もできています。が、この日本では、野放し。ゲームを批判しただけで、猛烈な抗議の嵐にさらされます。私自身も経験しています。
 ゲームを許すにしても、ある程度の自制は必要です。時間を決めてさせるとか、ゲームの内容を決めるとかなど。


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8月号相談事例

相談(1)小学2年生の母から
 小学2年生の三男は、1年生ときから、「最後までやり遂げようという意志は認めますが、行動がほかの子に遅れがち」と、担任の先生に面談で言われます。では、実際にどうしたら早く行動できるようになるのか知りたいです。
 3人兄弟の末っ子で、とてもマイペースな子になってしまったようで、親としてもどうしていいのかわかりません。
























A:『欠点を見つけたら、ほめる』です。子どもには、こう言います。「最近、あなたは早くできるようになったわね。先生も、ほめてくれたわよ」と。欠点を責めれば責めるほど、子どもは自信をなくします。それが悪循環となって、子どもはますますあなたの望むのとは、別の方向に進んでしまいます。
 また子どもに何か問題を見つけたら、『子どもは家族の代表』と考えます。子どもの問題は、家族の問題ということです。先生はたぶん、子どもの緩慢行動を言ったのだと思います。が、こういうケースのばあい、まず疑ってみるべきは、あなた、つまり母親の育児姿勢です。子どもが生まれたときから、何かにつけ、母親がせっかちで、こまごまとうるさいことを言い過ぎた? 「早く、早く」を言い過ぎた? 「根」が深い分だけ、簡単にはなおらない。…と考えて、「うちの子は、まあ、こんなもの」と、子どもの特性を認め、あとはあきらめます。『あきらめは悟りの境地』です。子どもというのは、親がカリカリしているときは、伸びません。が、親があきらめたとたん、伸び始めます。子ども自身の心が軽くなるからです。
 どうにもならない問題は、どうにもならない。今は、先生とのリズムが合っていない程度に考え、あまり深刻に悩まないこと。小学3年生以上になり、自己管理能力が発達してくると、この種の問題は、自然と解消していきます。


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相談(2)小学6年生の母から
 小学6年生になった息子は、自己主張が強くなり、親としてうれしい半面、自分が興味をもてないこと、(たとえば苦手な教科の復習など)は、頑としてやりません。
「本人の好きなこと、得意なところを伸ばしてやるとよい」とよくアドバイスされますが、6年生の今からこんなことでは、この先どうなるのだろうと悩みます。



























A:「この先どうなるだろう」ということですが、何も変わりません。5年後も、10年後も、今のままです。あるいはあなたはいったい、あなたの子どもを、どうしたいのですか。相談を一読して、そこに子離れできない母親の姿を想像してしまいました(失礼!)。
 『本人の好きなこと、得意なところを伸ばして…』は、家庭教育の大原則です。ひとつが伸びると、その相乗効果で、ほかの部分(科目)も伸びてきます。大切なことは、子どもに一芸をもたせること。「これだけは人には負けない」というのが、一芸です。その一芸が子どもの心を支え、守ります。将来の職業につながることもあります。
 また6年生という年齢からして、いよいよ自我の同一性の確立の時期に入ったと考えてください。「自分はこうあるべきだ」という自己概念と、現実の自分を一致させる時期です。その構築に失敗すると、心は無防備状態になり、精神的に軟弱な子どもになってしまいます。非行にも走りやすくなります。
 また「苦手な科目」というのは、「点数が低い科目」ということでしょうか。もしそうなら、その判断は、子どもに任せなさい。親があれこれ言っても、かえって逆効果です。
 子どもというのは、親の夢を一つ一つつぶしながら、成長していくものです。それがわかなければ、あなた自身を振り返ってみることです。あなた自身は、優等生だったでしょうか。答は、「NO!」のはずです。
 

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7月号相談(Q&A)
相談(1)小学4年生の母から
 最近わが子の親に対する話し方が気になります。たとえば、私が何か「こうしなさい」と注意すると、「そんな法律がどこにあるの?」などと言ってくるので、ついつい怒ってしまうこともしばしば……。
 これは反抗期なのでしょうか?




























A:思春期最大のテーマは、「同一性の確立」(エリクソン)です。(私はこうでありたい)という理想の自己像と、(現実の私)、つまり現実自己を、一致させようとします。一致した状態を「自我の同一性」と言います。その第一歩が、おとなの優位性の打破です。それが「思春期の反抗」と考えてください。
 (悪態)もそのひとつ。「そんな法律がどこにあるの?」と。それを許せということではありません。それができないほどまでに、子どもを抑えてはいけないということです。カリカリするのはしかたないとしても、「ああ、うちの子は、今、児童期から青年期へと、脱皮を始めているのだ」と、一歩退いて子どもを見ます。
 この時期、親意識(とくに「親に向かって何よ!」式の悪玉親意識)が強すぎると、子どもは親の前では仮面をかぶるようになります。自我の確立に失敗し、非行に走ったり、親子の間にキレツが入り、親子が断絶するケースも目立ちます。最悪のばあいには、自我の崩壊……。ナヨナヨとした軟弱な人間になることもあります。
 親には3つの役目があります。①ガイドとして子どもの前に立つ。②保護者として子どものうしろに立つ。そして3番目が重要ですが、③友として子どもの横に立つ、です。
 悪玉親意識を捨て、子どもの友になるつもりで、子どもの横に立ってみてください。とたん、肩の荷が軽くなりますよ。
 
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