●汚染物質も、水で薄めれば安心?
●おかしな論理(2)
昨夜遅く、寝る前に、「お馬鹿狂騒曲」を書いた。
測定された放射線量についてのエッセーである。
その一部。
「……厚労省は「お湯を入れて飲めば濃度は30分の1以下に薄まるのでただちに健康への影響はない」としています』(9月3日TBS)と。
つまり基準値を超えたお茶でも、実際に飲むときは、お湯で溶かして飲むから、30分の1の(濃度?)になる。
だから、「ただちに健康への影響はない」と。
私はこの記事を読んだとき、改めて、日本人の脳みそを疑った。
そこらの2チャンネルや、コメントへの投稿ではない。
ちゃんとした政府機関のコメントである。
●積算(蓄積量)
もしこんな論理がまかり通るなら、どんな汚染物質だって、薄めて飲食すればだいじょうぶということになる。
が、これは誤解。
放射性物質と通常の毒物を混同している。
放射性物質は、一度体内へ取り込まれれば、以後どんどんと積算(蓄積)されていく。
もちろん対外へ排出されていく分もあるだろうが、基本的には積算(蓄積)されていく。
しかも毒物とちがい、「しきい値」はない。
「これ以下なら安全」という「量」はない。
お湯で溶かして30分の1になったところで、そのお茶を、30杯飲めば、積算(蓄積)量は同じ。
もしこの論理が正しいとするなら、汚染牛肉であっても、0ベクレルの外国産牛肉と混ぜて食べれば安全ということになる。
一度体内へ取り込まれた放射線物質は、以後、永久にその部位の細胞を破壊しつづける。
「半減期」という言葉もある。
中には、数週間というのもあるそうだ。
が、もしそうなら、3月11日以後、6か月もたった今、どうして各地で放射性物質に汚染されたキノコやお茶が見つかっているのか?
●「ただちに」というウソ
これはあくまでも仮定の話である。
数字については、あくまでも仮定として、私が考えた。
こうだ。
仮に年間被爆量が2ミリシーベルトで、10年以内のがんの発生率が、1%だったとする(仮定1)。
100万人のうち、1万人が、がんで死ぬことになる。
そこで今度は、年間被爆量が、2倍の4シーベルトだったとする。
(仮定1)を基準にすれば、つぎのようになる。
(1)10年以内のがんの発生率は、2%になる。
(2)5年以内のがんの発生率は、1%になる。
(3)しかし20年以内のがんの発生率は、4%になる。
(4)40年以内のがんの発生率は、8%になる。
被爆量とがんの発生率は、「一次関数的に」相関関係を保つ。
「これ以下なら安全というしきい値はない」というのは、そういう意味。
そこで改めて聞きたい。
「ただちに」というのは、どういう意味なのか、と。
「10年以内は、安心」という意味なのか。
「20年以内は、安心」という意味なのか。
チェルノブイリ事故のときは、2年後から5年後にかけて症状が出始め、10年後にピークを迎えたという(「週刊現代」)。
この先、東北地方では、とんでもないことが起こる。
というのも、放射性物質は、何も飲食物のみから、体内へ取り込まれるわけではない。
呼吸によっても、取り込まれる。
むしろこちらのほうが、こわい。
プルトニュームなどの微細粉末(ホットパーティクル)は、そのまま肺へと蓄積されてしまう。
政府は、プルトニュームは比重が重いからだいじょうぶと言っている。
しかしいくら重くても、プルトニュームのホットパーティクルの大きさは、大腸菌ほど。
この大きさだったら、自由に風に乗って、宙を舞う。
アスベストを例にあげるまでもない。
●では、どうすればよいのか
今、この日本ではたいへんなことが起きている。
たとえば今回、福島第一原発事故で飛び散った放射性物質は、広島型原爆の160倍と言われている(保安院)。
しかしだれも、こんな数字を信じない。
原発1機で、年間250倍もの放射性物質が生ずる(「原発事故」宝島社)。
10年で、2500倍。
30年で、7500倍。
原発4機だったら、3万倍!
仮に「160倍」としても、意味がよくわからない。
海側へ飛び散った分については、除外しているのか?
あるいはしていないのか?
桁(けた)が、2桁ちがうのではないのか?
3・11大震災から、ちょうど半年。
日本人の間から、ますます緊張感が薄れていく。
むしろ私は、そちらのほうを心配する。
ついでに……。
『愛知県は2日、県内で販売された栃木県産腐葉土から暫定許容値の約150倍の1キロ当たり6万800ベクレルの放射性セシウムが検出されたと発表した。県は「人への影響はない」と説明している』(毎日JP)という。
どこのだれが、腐葉土など、食べるものか!
2011/09/04記
Hiroshi Hayashi++++++Sep. 2011++++++はやし浩司・林浩司
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