2か月前の経済予想
【過去の記事を読み返す】 ●当たるも経済専門家、当たらぬも、これまた経済専門家 Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司 時には、過去の記事をほじくり返してみるのも、楽しい。 とくに、予想記事と呼ばれる記事は、楽しい。 結果は、「今」ということになる。 その「今」と読み比べてみる。 それが楽しい。 Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司 ●経済 今日(5月18日)、日本の株価は、大暴落した。 前日比、265円安。 週末観測で、7週連続の下落という。 Bloombergは、つぎのように伝える。 まず、それを読んでほしい。 『……5月18日(ブルームバーグ): 東京株式相場は大幅反落し、日経平均株価、TOPIXともことし最大の下落となった。 ギリシャ情勢の混乱が波及し、スペインの債務懸念が高まったほか、米国経済統計の低調でリスク資産圧縮の動きが鮮明化した。 対ドル、対ユーロでの円高も警戒され、輸出や金融を中心に東証1部33業種は全て安い。 TOPIXの終値は前日比21.62ポイント(2.9%)安の725.54、日経平均株価は同265円28銭(3%)安の8611円31銭。両指数は週間で米同時多発テロ前後の2001年9月以来、約11年ぶりに7週連続で下げた』(Bloomberg)と。 ●ひどい! こういう記事を読むと、私はすぐこんなことを考える。 とくに今回は、そうだ。 ほんの数か月前には、ほとんどの経済学者たちは、口をそろえ、日本の株価は上昇しつづけると言っていた。 いくら「当たるも~~、当たらぬも~~」と言っても、これはひどい。 数か月前の記事を探してみる。 ●2か月前には、みな、どう書いていたか 以下、2012年3月14日、つまりちょうど2か月前の記事である。 Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司 Seesaa 2012年03月14日より ●岡三オンライン証券チーフストラテジスト、IT氏 ★日経平均、5月までに「震災前水準を回復」へ 『5月に向けて国内の年金基金の投資資金が流入するとみられ、日経平均は震災前水準(1万0434円)を回復。 目先の高値のメドである11年2月に付けた1万0891円を上回る展開になりそうだ。 ★外国人投資家の買い意欲旺盛 外国人投資家の買い意欲は強く、欧米のヘッジファンドの買い戻しにとどまらず、米年金基金などの長期投資家の資金も動き出している。 年金資金を運用する機関投資家は、注文を平準化して一定期間続けて買うという傾向がある。 外国人は日本株を11年5月下旬から12月半ばまでに2兆円超売り越したが、そこから12年2月末までの買越額は1兆円を上回ったばかり。買いはまだ続くだろう』と。 ●BNPパリバ証券日本株チーフストラテジスト、MR氏 ★金融緩和で円高修正進む 上値メドは「1万1000円」 『FRBが実施した量的緩和第2弾(QE2)が効いてきた。 米景気回復が加速し、銀行貸し出しが増える好循環に入る兆しがある。 日米金利差が拡大し、円相場は1ドル=85円程度まで円安・ドル高が進みそうだ。 一方、欧州でも欧州中央銀行(ECB)の量的緩和策が奏功し、債務問題は小康状態を保っている。 日経平均は4~6月に1万1000円台を回復し、年内の高値をつけるのではないか。 ★(3月)14日の日本株の上昇はショートカバー(売り方の買い戻し)が主体だろう。 空売り比率が24%程度と高まっていたので、買い戻しの動きが強まった。 長期投資家は国内外ともに、今の日本株の上昇に乗り切れていない。 本格的に買ってくるのはこれから。復興需要も株高を後押しするだろう』と。 Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司 結果は、ハズレ! デタラメと言い切ってよいほどの、ハズレ! とくに記事を選んだわけではない。 ここに書かれていることは、おおかたの経済学者たちも言っていたこと。 が、問題はそのことではない。 ハズレたことが問題ではない。 問題は、こうした経済学者たちの意見を鵜のみにし、今というこの時点で、大損をした人がいるということ。 どこの記事だったかは、忘れた。 しかしこんな記事もあったはず。 「日本株は出遅れ感が強い。 夏場にかけて、大儲けのチャンス」と。 ●経済学 つまりこんな予想なり、コメントなら、だれにでも書ける。 私のような素人にでも書ける。 つまり書かないほうが、まし。 そこらの霊能力者の予言のほうが、ずっとわかりやすい。 言い換えると、それほどまでに経済学というのは、いいかげん。 と、同時に、魔物。 一寸先は闇という言葉がある。 それに近い。 さらに言えば、経済学者の予想ほど、アテにならないものはないということ。 とくにどこかの証券会社に籍を置いている人間の言うことには、さらにアテにならない。 耳を貸さないほうがよい。 それを書きたかった。 ●若い女の子 それにしても、ひどい。 「大損」といっても、財産を失った人も、多いはず。 途方に暮れている人も、多いはず。 さらに恐ろしいことは、こうしたまちがった情報を、証券会社の女の子(怒りの念をこめて、そう言う)が、もっともらしく口にすること。 「今が底値ですから、買い時ですよ」と。 経済学の「ケ」の字も知らない。 人生経験の「ジ」もないような、女の子。 そういう女の子が、それなりの年配者を手玉に取り、自分の利益につなげる。 私もバカだったから、あのバブルショックのあと、それまでに儲けた分以上の損を出してしまった。 リーマンショックのときは、さすがに、それほどまでの損はしなかったが、それでも損をした。 が、そのあとは、「賢明な損切り」で、難をのがれることができた。 具体的には、証券会社の女の子の言いなりには、ならなかった。 ドバイショック(2009)、3・11大震災(2011)ショックを経て、私は現在、証券会社との付き合いは、すべて断ち切っている。 が、これは日本経済にとって、たいへんな損失と考えてよい。 自由主義貿易体制の中にありながら、日本人の私たち自身が、資本主義の基本に不信をいだいている。 だから昔から、こう言う。 「株屋」と。 子どものころは、「株屋」といえば、詐欺師の代名詞にもなっていた。 ●自己責任 この世界には、「自己責任」という無責任主義が平気で大手を振って、大通りをかっ歩している。 だれも責任を追及しない。 だれも責任を取らない。 すべてが、ナーナーですんでしまう。 が、おかしなことに、いつも大損をするのは、庶民という個人。 今回の福島第一原発事故もそうだが、だれも責任を追及しない。 責任を取らない。 東京電力にいたっては、「私たちには責任はない」と、居直ってしまっている。 「私たちは、国の指導に従い、やってきただけです」と。 本来なら、万死……つまり責任者の法的処分に値する事故なのだが……。 ……ともあれ、ときどきこうして過去をほじくり返してみるのも、楽しい。 その1例として、ちょうど2か月前の記事を、読みなおしてみた。 で、ふと今、こう思う。 先に紹介した、岡三オンライン証券チーフストラテジスト、IT氏や、BNPパリバ証券日本株チーフストラテジスト、MR氏は、自分の書いたことに、少しは責任を感じているのだろうか、と。 Hiroshi Hayashi+++++++May. 2012++++++はやし浩司・林浩司 【K君との会話】はやし浩司 2012-05-20 Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司 昨日、市内のホテルで、K君と食事をした。 K君は、メルボルン大学(オーストラリア)で、修士号(Master’s Degree)を取得したあと、現在に至るまで、モナーシュ大学(メルボルン)に籍を置いている。 大学の教官(インストラクター)を、総合的に指導する立場にある。 その場でのこと。 いろいろな話をした。 Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司 ●ノーベル賞受賞者 モナーシュ大学に、現在、ノーベル賞受賞者はいるかと尋ねると、「いない」と。 理由を聞くと、「受賞すると、みな、ほかの大学や研究機関に移ってしまう」と。 欧米では、学生はもちろん、教授たちも、よりよい教育(待遇)を求めて、大学から大学へと渡り歩く。 日本の大学で見るような、徒弟制度そのものがない。 「インターナショナルハウス(メルボルン大学)には、毎週のようにノーベル賞受賞者がやってきて、泊まっていった」と話すと、「それは今でも、そうだ」と。 が、そのあと、K君は、こう言った。 「ヒロシは、あのノーベル賞という賞が、公平と思うか」と。 ●ノーベル賞 K君はいくつかの例をあげ、ノーベル賞の問題点をあげた。 まず推薦人制度。 それぞれの国には、推薦人が割り当てられている。 どういう基準で、だれが選ばれるか、だれも知らない。 その推薦人が、ノーベル受賞者をノルウェー政府に推薦する。 つぎに今では、研究といっても、単独で研究する例は少ない。 複数以上の研究者が集まって、共同で研究する。 しかし賞を受けるのは、その「長」ということになっている。 実際K君が知っている例でも、部下に研究を任せ、自分では何もしなかった研究者がノーベル賞を受けた例もあるという。 「日本でも、昔、SEという元首相が、ノーベル平和賞を受けたことがある」と話すと、K君は、笑った。 ●知識人 私は率直にこう言った。 「ぼくは、君がうらやましい。毎日、第一級の知識人(インテリジェントな人)と、接することができる」と。 が、K君はこう言った。 「ヒロシ、インストラクター(教授たち)といっても、ほとんどが、頭がおかしい。君がうらやましがるような世界ではない」と。 私「しかし、ぼくはいつも、知識に飢えている。知識人に会う機会が、ほとんどない」 K「ぼくは大学にいても、いつも本ばかり読んでいる。今はインターネットがある。ヒロシも、そうすればいい」と。 学生時代のK君は、毎日本ばかり読んでいた。 今でも世界中を回りながら、古本をあさるのが、K君の趣味にもなっている。 が、K君は、私の住んでいる世界を知らない。 あえて言えば、私の住んでいる世界は、砂漠のような世界。 一方、K君は、知識が水のようにこんこんとわき出る、オアシスのような世界に住んでいる。 「知識」に対する基準、そのものが、ちがう。 「飢え」の感じ方、そのものが、ちがう。 ●有名人 たまたま私の前の席に、その世界では有名なスポーツ選手が座った。 年齢は30歳くらい。 妻らしき女性と、数人の家族が同席していた。 私がK君に、「あの男は日本でも有名な、プロ~~だ」と教えると、すかさず、K君はこう言った。 「バカ顔(no brain)に見える」と。 K「日本ではどういう人を、有名(famous)と言うのか」 私「正しくは、よく知られた人(well-known)と言うべきだったかもしれない」 K「商業主義の世界では、人は正しく評価されない」 私「そう。ぼくも、その意見に同感だ。この4月に、慶応大学に9000人の化学者が集まった。ぼくの知人がその場で、基調講演をした。が、この日本では、ただの一行も、またただの1秒も報道されなかった」 K「オーストラリアでも、そうだ」と。 で、その一方で、商業主義に乗った人たちが、この日本では、「よく知られた人」となり、それを自分の名声や財力につなげていく。 ●低進国 「低進国」という言葉は、私が考えた。 「後進国」というのは、経済用語。 「低進国」というのは、文化用語。 この日本は、先進国かもしれないが、低進国。 英語でどう表現したらよいか。 それが議論になった。 たとえば以前は、後進国と言った。 が、20年ほど前から、発展途上国と言うようになった。 だから「低進国では、まずい」と。 あえて言うなら、「文化的発展途上国(Culturally Newly-developing Country)」。 「日本では、テレビへの露出度で、文化人が決まる」と話したら、オーストラリアでは、それはないと教えてくれた。 「社会への貢献度で決まる」と。 ●ハーバード大学で講演? こんな話もした。 もう20年ほど前のこと。 日本のある宗教指導者が、ハーバード大学で講演をしたという。 が、この話そのものが、「?」。 外国の大学を少しでも知っている人なら、だれしも首をかしげる。 そこで私は、すかさずハーバード大学へ電話を入れた。 もちろんハーバード大学といっても、広い。 会場となるような会館(ホール)は、いくつもある。 広い講義室を貸すこともある。 もちろん有料。 で、やっとそのホール(会場)を見つけた。 で、電話で聞くと、「どこかの団体に貸したことはある」と。 「詳しくは文書で返事するから、文書で問い合わせてほしい」とも。 そこですぐ私は手紙を書いた。 折り返し返事が届いた。 それにはこうあった。 「在米のある団体に、会場(講義室の1室)を貸した。利用目的、内容は、大学としては、関知しない」と。 が、この日本では、そういうことが堂々と宣伝に利用される。 あたかもハーバード大学に招へいされ、講演でもしたかのように装う。 そんな話をK君にしたら、K君は、フンと鼻先で笑った。 ●SKI 話は家族、さらには遺産の話にも及んだ。 オーストラリアでも、息子や娘には遺産を残さない人がふえているそうだ。 それを、つまり、子どもに遺産を残さないことを、英語では、「SKI(スキー)」と言うと。 「Spend the Kids’ Inheritance(子どもの遺産を消費する)」を略して、「SKI」と。 私がどういう言い回しをするのかと尋ねると、「I am going to SKI.(スキーに行く=ぼくは息子や娘たちに財産を残さない)」と教えてくれた。 オーストラリアでは制度として整っているから、息子や娘が親の老後の世話をするということは、めったにない。 K君自身も、国からの年金など、あてにしていない。 民間の保険会社に積み立てた私的年金で老後を、老人ホームで過ごすつもりという。 SKI……おもしろい言い方なので、ここに記録する。 ●忘却 ほかにもいろいろな話をした。 が、数日もたつと、そのほとんどを忘れてしまう。 その場だけでも、2時間も話した。 が、こうして記録できることは、たったのこれだけ。 読めば、5分足らずの文章でしかない。 残りの1時間55分は、どこへ消えたのか。 考えてみれば、これほど恐ろしい話は、そうはない。 2012/05/20記 Hiroshi Hayashi+++++++May. 2012++++++はやし浩司・林浩司
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