*Are High-Rise Apartment Buildings affecting Children's Mental Problems?
【疑わしきは、罰する】
●心が壊れる子ども(無関心、無表情は要注意)(精神的に不安定な環境が原因?)
A小学校のA先生(小一担当女性)が、こんな話をしてくれた。「一年生のT君が、ヘビをつかまえてきた。そしてビンの中で飼っていた。そこへH君が、生きているバッタをつかまえてきて、ヘビにエサとして与えた。私はそれを見て、ぞっとした」と。
A先生が、なぜぞっとしたか、あなたはわかるだろうか。それを説明する前に、私にもこんな経験がある。もう一五年近くも前のことだが、一人の園児(年長男児)の上着のポケットを見ると、きれいに玉が並んでいた。私はてっきりビーズ玉か何かと思った。が、よく見ると、それは虫の頭だった。その子どもは虫をつかまえると、まず虫にポケットのフチをかませる。かんだところで、体をひねって頭をちぎる。ビーズ玉だと思ったのは、その虫の頭だった。また別の日。小さなトカゲを草の中に見つけた子ども(年長男児)がいた。まだ子どもの小さなトカゲだった。「あっ、トカゲ!」と叫んだところまではよかったが、その直後、その子どもはトカゲを足で踏んで、殺してしまった!
原因はいろいろある。貧困(それにともなう家庭騒動)、家庭崩壊(それにともなう愛情不足)、過干渉(何でも親が決めてしまう)、過関心(息が抜けない)など。威圧的(ガミガミ)な家庭環境や、権威主義的(問答無用の押しつけ)な子育てが、原因となることもある。要するに、子どもの側から見て、「精神的に不安定な家庭環境」が、その背景にあるとみる。不平や不満、それに心配や不安が日常的に続くと、それが子どもの心を破壊する。言いかえると、愛情豊かな家庭環境で、心静かに育った子どもは、ほっとするような温もりのある子どもになる。心もやさしくなる。
さて冒頭のA先生は、ヘビに驚いたのではない。ヘビを飼っていることに驚いたのでもない。A先生は、生きているバッタをエサにしたことに驚いた。A先生はこう言った。「そういう残酷なことが、平気でできるということが信じられません」と。
このタイプの子どもは、総じて他人に無関心(自分のことにしか興味をもたない)、無感動(他人の苦しみや悲しみに鈍感)。情意(喜怒哀楽の情)の動きも平坦になる。よく誤解されるが、このタイプの子どもが非行に走りやすいのは、そもそもそういう「芽」があるからではない。非行に対して、抵抗力がないからである。悪友に誘われたりすると、そのままスーッと仲間に入ってしまう。ぞっとするようなことをしながら、それにブレーキをかけることができない。だから結果的に、「悪」に染まってしまう。
そこで一度、あなたの子どもが、どんなものに興味をもち、関心を示すか、観察してみてほしい。子どもらしい動物や乗り物、食べ物や飾りであればよし。しかしそれが、残酷なゲームや、銃や戦争。さらに日常的に乱暴な言葉や行動が目立つというのであれば、家庭教育のあり方をかなり反省したらよい。子どもの場合、「好きな絵を描いてごらん」と言って紙と鉛筆を渡すと、心の中が読める。心が壊れている子どもは、おとなが見ても、ぞっとするような絵を描く。ただし、小学校に入学してからだと、子どもの心を修復するのはたいへんむずかしい。子どもの心をつくるのは、四、五歳くらいまでが勝負だ。
●疑わしきは、罰する(流産率、10階以上で39%)(紫外線対策を早急に)
今、子どもたちの間で珍現象が起きている。四歳を過ぎても、オムツがはずせない。幼稚園や保育園で、排尿、排便ができず、紙オムツをあててあげると、排尿、排便ができる。六歳になっても、大便のあとお尻がふけない。あるいは幼稚園や保育園では、大便をがまんしてしまう。反対に、その意識がないまま、あたりかまわず排尿してしまう。原因は、紙オムツ。最近の紙オムツは、性能がよすぎる(?)ため、使用しても不快感がない。子どもというのは、排尿後の不快感を体で覚えて、排尿、排便の習慣を身につける。たとえば昔の布オムツは、一度排尿すると、お尻が濡れていやなものだった。この「いやだ」という感覚が、子どもの排尿、排便感覚を育てる。
このことをある雑誌で発表しようとしたら、その部分だけ削られてしまった(M誌九八年)。「根拠があいまい」というのが表向きの理由だったが、実はスポンサーに遠慮したためだ。根拠があるもないもない。こんなことは幼稚園や保育園では常識で、それを疑う人はいない。紙オムツをあててあげると排尿できるというのが、その証拠である。
……というような問題は、現場にはゴロゴロしている。疑わしいが、はっきりとは言えないというようなことである。その一つが住環境。高層住宅に住んでいる子どもは、情緒が不安定になりやすい……? 実際、高層住宅が人間の心理に与える影響は無視できない。こんな調査結果がある。たとえば妊婦の流産率は、六階以上では、二四%、一〇階以上では、三九%(一~五階は五~七%)。流・死産率でも六階以上では、二一%(全体八%)(東海大学医学部逢坂文夫氏)。マンションなど集合住宅に住む妊婦で、マタニティブルー(うつ病)になる妊婦は、一戸建ての居住者の四倍(国立精神神経センター北村俊則氏)など。母親ですら、これだけの影響を受ける。いわんや子どもをや。が、さらに深刻な話もある。
今どき野外活動か何かで、真っ赤に日焼けするなどということは、自殺的行為と言ってもよい。私の周辺でも、何らかの対策をこ講じている学校は、一校もない。無頓着といえば、無頓着。無頓着過ぎる。オゾン層のオゾンが一%減少すると、有害な紫外線が二%増加し、皮膚がんの発生率は四~六%も増加するという(岐阜県保健環境研究所)。実際、オーストラリアでは、一九九二年までの七年間だけをみても、皮膚がんによる死亡件数が、毎年一〇%ずつふえている。日光性角皮症や白内障も急増している。そこでオーストラリアでは、その季節になると、紫外線情報を流し、子どもたちに紫外線防止用の帽子とサングラスの着用を義務づけている。が、この日本では野放し。オーストラリアの友人は、こう言った。「何も対策を講じていない? 信じられない」と。ちなみにこの北半球でも、オゾンは、すでに一〇~四〇%(日本上空で一〇%)も減少している(NHK「地球法廷」)。
法律の世界では、「疑わしきは、罰せず」という。しかし教育の世界では、「疑わしきは、罰する」。子どもの世界は、先手先手で守ってこそ、はじめて、守れる。害が具体的に出るようになってからでは、手遅れ。たとえば紫外線の問題にしても、過度な日焼けはさせない。紫外線防止用の帽子を着用させる、など。あなたが親としてすべきことは多い。
●疑わしきは、罰する(ふえる排尿異常)(紫外線対策を早急に)
今、子どもたちの間で珍現象が起きている。四歳を過ぎても、オムツがはずせない。幼稚園や保育園で、排尿、排便ができず、紙オムツをあててあげると、排尿、排便ができる。六歳になっても、大便のあとお尻がふけない。あるいは幼稚園や保育園では、大便をがまんしてしまう。反対に、その意識がないまま、あたりかまわず排尿してしまう。原因は、紙オムツ。最近の紙オムツは、性能がよすぎる(?)ため、使用しても不快感がない。子どもというのは、排尿後の不快感を体で覚えて、排尿、排便の習慣を身につける。たとえば昔の布のオムツは、一度排尿すると、お尻が濡れていやなものだった。この「いやだ」という感覚が、子どもの排尿、排便感覚を育てる。
このことをある雑誌で発表しようとしたら、その部分だけ削除されてしまった(M誌九八年)。「根拠があいまい」というのが表向きの理由だったが、実はスポンサーに遠慮したためだ。根拠があるもないもない。こんなことは幼稚園や保育園では常識で、それを疑う人はいない。紙オムツをあててあげると排尿できるというのが、その証拠である。
……というような問題は、現場にはゴロゴロしている。わかってはいるが、はっきりとは言えないというようなことである。その一つが住環境。子どもには、高層住宅よりも、土のにおいのする一戸建ての家のほうが好ましいことは、言うまでもない。実際、高層住宅が人間の心理に与える影響は無視できない。こんなデータがある。たとえば妊婦の流産率は、六階以上では、二四%(一~五階は六~七%)、帝王切開などの異常分娩率は、二七%(一戸建ての居住者は一五%)、妊娠関連うつ病(マタニティブルー)になる女性は、一戸建ての居住者の四倍(国立精神神経センター、北村俊則氏)など。子どもは当然のことながら、母親以上に、住環境から心理的な影響を受ける。が、もっと深刻な話もある。
日本では昔から、真っ黒に日焼けした顔は、健康のシンボルとされてきた。今でも子どもの日焼けについて、何らかの対策をこうじている学校は、ほとんどない。無頓着といえば、無頓着。無頓着過ぎる。オゾン層のオゾンが、一%減少すると、有害な紫外線が二%増加し、皮膚がんの発生率は四~六%も増加するという(岐阜県保健環境研究所)。実際、オーストラリアでは、一九九二年までの七年間だけをみても、皮膚がんによる死亡件数が、毎年一〇%ずつふえている。日光性角皮症や白内障も急増している。そこでオーストラリアでは、その季節になると、紫外線情報を流し、子どもたちに紫外線防止用の帽子とサングラスの着用を義務づけている。が、この日本では野放し。
オーストラリアの友人は、こう言った。「何もしていないだって? 日本も早急に、対策をこうずるべきだ」と。ちなみにこの北半球でも、オゾンは、すでに一〇~四〇%も減少している(NHK「地球法廷」)。
そこでどうだろう。私たちの住む地域だけでも、子どもたちに紫外線防止用の帽子とか、サングラスの着用を試してみたら。害が具体的に出始めてからでは、手遅れ。法律の世界では、「疑わしきは、罰せず」という。しかし教育の世界では、「疑わしきは、罰する」。子どもの世界は、先手先手で守ってこそ、はじめて、守れる。
●高層住宅の問題点(「疑わしきは罰する(2)」)(ストレスの発散をじょうずに)
以前このコラムで、「疑わしきは罰する」を書いた。その中で、「高層住宅の一〇階以上に住む妊婦の流産率は、三九%」「(マンションなど高層住宅に住む人で)、マタニティブルー(妊娠関連うつ病)になる人は、一戸建ての家に住む人の四倍」などと書いた。このコラムは大きな反響を呼んだ。と同時に、多くの人に不安を与えてしまった。しかしそこに書いたことに、まちがいはない。私はそのコラムを書くにあたって、前もってそれぞれの研究者と手紙で連絡を取り、元となる論文を入手した。しかもある程度の反響は予測できたので、中日新聞東海本社の報道部のI氏に、論文のコピーを渡しておいた。
ただし流産の原因については、高層住宅とそのまま結びつけることはできない。高層住宅のもつ問題点を知り、対応策を考えれば、流産は防げる。逢坂氏も流産率が高いことについて、「居住階の上昇に伴い、外に出る頻度(高さによる心理的、生理的、物理的影響)が減少する」(「保健の科学」第36巻1994別冊783)と述べている。高層階に住んでいると、どうしても外出する機会がへる。人との接触もへる。それが心理的なストレスを増大させる。胎児の発育にも悪い影響を与える。そういういろいろな要因が重なって、それが流産につながる、と。
このことを言い換えると、高層階に住んでいても、できるだけ外出し、人との交流を深めるなど、心理的な風通しをよくすれば、流産は防げるということになる。事実、高層階になればなるほど、心理的なストレスが大きくなることは、ほかの多くの研究者も指摘している。たとえば平均死亡年齢についても、マンション住人の平均死亡年齢は、五七・五歳。木造住宅の住人の平均死亡年齢は六六・一歳。およそ九歳もの差があることがわかっている(島根大学中尾哲也氏・「日本木材学会」平成七年報告書)。さらにコンクリート住宅そのものがもつ問題点を指摘する研究者もいる。マウスの実験だが、木製ゲージ(かご)でマウスを育てたばあい、生後二〇日後の生存率は、八五・一%。しかしコンクリート製ゲージのばあいは、たったの六・九%。ほかにコンクリート製ゲージで育ったマウスは、生殖器がより軽い、成長が遅いなどということも指摘されている(静岡大学農学部水野秀夫氏ほか)。さらに高層住宅にいる幼児は、体温そのものが低く、三六度以下の子どもが多い(「子どもの健康と生活環境」VOL41、小児科別冊)など。こういう事実をふまえて、私は、「子どもは当然のことながら、母親以上に、住環境から心理的な影響を受ける」と書いた。
こうした事実があるにもかかわらず、日本の政府は、ほとんど対策をとっていない。一人、「そうは言っても、都会で一戸建てを求めるのは難しいです」「日本の住宅事情を考えると、高層住宅を否定することもできません」と言った人もいた。あるいは「こんなことを書いて、建設会社からクレームがきませんでしたか」と心配してくれた人もいた。しかしここから先は、参考にする、しないの問題だから、判断は、読者の方がすればよい。ただこういうことは言える。あなたや子どもの健康を守るのは、あなた自身であって、国ではないということ。こうした建設がらみの問題では、国は、まったくあてにならない。
●すさまじい反響
月※日、「子どもの世界」で、「疑わしきは罰する」を書いた。その中で、私は東海大学地域保健学の逢坂文夫氏の論文を引用して、「妊婦の流産率は、六階以上では二四%。一〇階以上では、三九%(一~五階では、五~七%)。流・死産率は、六階以上では、二一%(全体では八%)」などと書いた。わかりやすく言うと、高層住宅の六階以上に住む妊婦のうち、四人に一人が流産し、五人に一人が流・死産しているということになる。
さらに一〇階以上では、約二人に一人が、流産していることになる。驚くべき調査結果といってよい。これについて、それまで経験したことがないほど、読者からすさまじい反響があった。「事実か?」という問い合わせが多かったが、中には「いいかげんなことを書いてもらっては困る」というのもあった。私の記事が、かえって高層住宅、日本でいう高層マンションに住む人たちの不安をかきたてるというのだ。
原稿を書いた経緯
そこで今回、「疑わしきを罰する」を書くに至った、経緯をここに説明する。まず高層住宅のもつ危険性については、すでに三〇年以上も前から、欧米では広く議論されていることである。私がメルボルンにいたときすでに、メルボルンでは高層住宅が問題になっていた。これはあいまいな記憶によるものだが、高層住宅の住人ほど自殺者が多いというのもあった。一方、この日本でも散発的にではあるが、そのつど指摘されている。そこで私はインターネットを使って、「高層住宅→心理的影響」という名目で検索してみた。
結果、無数の情報を手に入れることができた。その中でも特に目を引いたのは、A社の情報コーナーであった。しかしこのA社は、どこか宗教団体的な雰囲気がしたので、私はその中に出ている「事実」と「出典先」だけを取りだし、独自の立場で調べた。結果、今回、その原稿を書くにあたって、次の四人の研究者、教授、元教授と連絡を直接とることに成功した。連絡は手紙によるものであり、うち三人(北村、逢坂、中尾氏)は直接、手紙で返事をくれた。それには元となる論文も同封されていた。一人(水野氏)は、電話で連絡をとった。
国立精神神経センター、北村俊則氏
東海大学医学部地域保健学、逢坂文夫氏
鳥取大学総合理工学部教授、中尾哲也
静岡大学名誉教授、水野秀夫氏の四氏である。
私はこの「子どもの世界」を書くにあたって、実名を使うときは、その人物と事前に連絡をとり、実名の使用について許可を得るようにしている。そして許可を得たときだけ、実名を使い、そうでないときは、必要に応じて、アルファベットによるイニシャルを使うようにしている。こうした研究者から論文を直接手に入れた後、数値を自分で確認し、なおかつ、私の元原稿のコピーをこれらの研究者に送った。そのあと、「疑わしきは罰する」を新聞紙上で発表した。
危険な高層住宅?
逢坂文夫氏は、横浜市の三保健所管内における四か月健診を受けた母親(第一子のみを出生した母親)、1615人(回収率、54%)について調査した。結果は次のようなものであったという。
流産割合(全体) …… 7.7%
一戸建て …… 8.2%
集合住宅(1~2階) …… 6.9%
集合住宅(3~5階) …… 5.6%
集合住宅(6~9階) ……18.8%
集合住宅(10階以上)……38.9%
これらの調査結果でわかることは、集合住宅といっても、1~5階では、一戸建てに住む妊婦よりも、流産率は低いことがわかる。しかし6階以上になると、流産率は極端に高くなる。また帝王切開術を必要とするような異常分娩についても、ほぼ同じような結果が出ている。一戸建て、14.9%に対して、六階以上では、27%など。
これについて、逢坂氏は次のようにコメントしている。「(高層階に住む妊婦ほど)妊婦の運動不足に伴い、出生体重値の増加がみられ、その結果が異常分娩に関与するものと推察される」と。ただし「流産」といっても、その内容はさまざまであり、また高層住宅の住人といっても、居住年数、妊娠経験(初産か否か)、居住空間の広さなど、その居住形態はさまざまである。その居住形態によっても、影響は違う。逢坂氏はこの点についても、詳細な調査を行っているが、ここでは割愛する。興味のある方は、「保健の科学」第36巻1994別冊781頁以下をご覧になってほしい。
子どもの心理との関連性
「子どもの世界」の中で、私は、「母親ですらこれだけの影響を受けるのだから、いわんや子どもをや」と書いた。もちろん集合住宅であることから子どもが直接影響を受けることも考えられるが、母親が影響を受け、その副次的影響として、子どもが影響を受けることも考えられる。どちらにせよ、あくまでも「考えられる」という範囲で、私は「疑わしきは罰する」と書いた。逢坂氏の論文で、私が着目したのはこの点である。逢坂氏は、流・死産の原因の一つとして、「母親の神経症的傾向割合」をあげ、それについても調査している。
神経症的傾向割合 全体 …… 7.5%
一戸建て …… 5.3%
集合住宅(1~2階) …… 10.2%
集合住宅(3~5階) …… 8.8%
集合住宅(6階以上) …… 13.2%
この結果から、神経症による症状が、高層住宅の6階以上では、一戸建て住宅に住む母親より、約2.6倍。平均より約2倍多いことがわかる。この事実を補足する調査結果として、逢坂氏は、喫煙率も同じような割合で、高層階ほどふえていることを指摘している。たとえば一戸建て女性の喫煙率、9.0%。集合住宅の1~2階、11.4%。3~5階、10.9%。6階以上、17.6%。
つまりこれらの調査結果を総合すると、高層住宅の高層階(特に6階以上)に住む母親は、より神経症による症状を訴え、その症状をまぎらわすため、より喫煙に頼る傾向が強いということになる。母親ですらそうなのだから、「いわんや子どもをや」ということになる。
好ましい木造住宅?
住環境と人間の心理の関係については、多くの研究者が、その調査結果を発表している。コンクリート住宅と木造住宅について、静岡大学の水野名誉教授は、マウスを使って興味深い実験をしている。水野氏の調査によれば、木製ゲージ(かご)でマウスを育てたばあい、生後二〇日の生存率は、85.1%。しかしコンクリートゲージで育てたばあいは、たったの6.9%ということだそうだ。水野氏は、気温条件など、さまざまな環境下で実験を繰り返したということだが、「あいにくとその論文は手元にはない」とのことだった。
ただこの調査結果をもって、コンクリート住宅が、人間の住環境としてふさわしくないとは断言できない。マウスと人間とでは、生活習慣そのものが違う。電話で私が、「マウスはものをかじるという習性があるが、ものをかじれないという強度のストレスが、生存率に影響しているのではないか」と言うと、水野氏は、「それについては知らない」と言った。また私の原稿について、水野氏は、「私はコンクリート住宅と木造住宅の住環境については調査はしたが、だからといって高層住宅が危険だとまでは言っていない」と言った。水野氏の言うとおりである。
中尾哲也氏の研究から
住環境について、鳥取大学の中尾哲也教授は詳しい調査をしている。
●疑わしきは、罰する(2)(高層住宅は危険?)(国はまったくあてならない)
前々回、『疑わしきは、罰する』で、高層住宅について書いた。私はこの中で、東海大学医学部地域保健学教室の逢坂文夫氏の研究論文を引用した。そして「妊婦の流産率は、一〇階以上では、三九%(一~五階では五~七%)」などと書いた。このコラムは大きな反響を呼んだ。「事実か?」という問い合わせも、いくつかあった。が、前々回のコラムを発表するにあたって、情報の一部を入手したあと、私は逢坂氏、北村両氏に直接手紙を書いて、内容を確認している。両氏は、わざわざ論文(「保健の科学」94-36別刷)を送り届けてくれた。その上で、前々回のコラムを発表した。一人、「いいかげんなことを書いてもらっては困る」と言ってきた読者もいるが、私は決していいかげんなことを書いていない!
高層住宅が危険な住宅であるという資料は、山のようにある。たとえば平均死亡年齢についても、マンション住人の平均死亡年齢は、五七・五歳。木造住宅の住人の平均死亡年齢は六六・一歳。およそ九歳もの差があることがわかっている(島根大学中尾哲也氏・「日本木材学会」平成七年報告書)。さらにコンクリート住宅そのものがもつ問題点を指摘する研究者もいる。マウスの実験だが、木製ゲージ(かご)でマウスを育てたばあい、生後二〇日後の生存率は、八五・一%。しかしコンクリート製ゲージのばあいは、たったの六・九%(静岡大学農学部水野秀夫氏ほか)。ほかにコンクリート製ゲージで育ったマウスは、生殖器がより軽い、成長が遅いなどということも指摘されている。さらに高層住宅にいる幼児は、体温が三六度以下の子どもが多いなど。こうした事実があるにもかかわらず、国は誰に遠慮しているのか、まったく対策をとろうとしない。「環境」ということを考えても、高層住宅は、決して好ましい建築物とは言えない。オーストラリアのメルボルンでは、すでに三〇年も前に、大きな社会問題になっていた。
私は『疑わしきは、罰する』と言っているのである。そしてそれが子どもたちの世界を守る、一つの方法だと言っているのである。こんな話も紹介しよう。私は二八歳のとき、国際産婦人科学会の通訳として、南米のアルゼンチンへ行ったことがある。そこでのこと。ある夜、日本を代表する産婦人科のドクターがこんなことを話してくれた。「新生児の奇形がふえている。原因はタバコだ。しかし証明できない」(京都大N教授)と。動物実験では確認できても、人間では人体実験することができない。だから最後の一歩のところで、確証がとれない、と。当時、日本では、上も下も、「タバコ無害キャンペーン」を展開していた。全国の主要な駅前では、専売公社の職員たちがパネルを並べて、「タバコには害はありません」と叫んでいた。今から思うと、何と、おぞましいキャンペーンであったことか!
ここから先は、参考にする、しないの問題だから、判断は、読者の方がすればよい。それでも見晴らしがよい高層階のほうがよいと思えば、それはそれで、その人の勝手だ。私がとやかく言う問題ではない。ただ一言。私が書いたことが気に入らないからといって、私を個人攻撃をしても、意味はない。いくら私の口にフタをしようとしても、それはできない。ただこういうことは言える。あなたや子どもの健康を守るのは、あなた自身であって、国ではないということ。こういう問題では、国は、まったくあてにならない。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司
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