Education in Front-Line and Essays by Hiroshi Hayashi (はやし浩司)

(Mr.) Hiroshi Hayashi, a professional writer who has written more than 30 his own books on Education, Chinese Medical science and Religion in Japan. My web-site is: http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/ Please don't hesitate to visit my web-site, which is always welcome!!

Thursday, August 12, 2010

●アスペルガー障害児

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 彡彡人ミミ      彡彡彡彡彡
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 子育て最前線の育児論byはやし浩司      8月   13日号
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【1】(子育てのこと)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

休みます。

【2】(特集)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

●高機能広汎性発達障害(アスペルガー障害児)

【Nさん(東京都在住)からの相談】

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東京都に住んでいる、Nさん(母親)から、
こんな相談が届いている。

「カウンセリングの先生に”高機能広汎性発達障害”
かもしれないといわれてしまいました」という内容
のもの。

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【Nさんより、はやし浩司へ】

はじめまして。

数年前から子育てに関して悩むたびに先生のHPを拝見しております。
息子は現在5歳、公立幼稚園の年長さんです。

2歳頃から数字が大好きで、すべてを数字に関連付けるとあっという間にひらがな、カタカ
ナ、漢字と書けるようになり、現在では小学校2年生レベルの学力を持っているように感
じます。

そんな長所とは裏腹に、3歳頃から嫌なことや困ったことがあっても口で言うのではなく、
手がでたり、泣いてしまったりで手を焼いていました。親にしてみれば、3歳で足し算引き
算を理解できる能力があるのにどうして人の気持ちを察することが出来ないのか自分の気
持ちを言葉にすることができないのかとアンバランスさに悩まされていました。


そんな折、市の発育相談でお話させていただいたことがきっかけで現在幼稚園でも年に1
回程度の相談を受けさせてもらっています。親にも落ち度があることかと思い、軽い気持
ちで相談させてもらっていました。

ところが最近、園で同級生の子供達に暑い、眠たい、お腹すいたなどの理由(本人がそう
いいます)から意味もなく物を蹴飛ばしたり、友達に当たったりしているそうです。他に
も、昨年はなかなかなかの良いお友達を見つけることができなかったのですが、新学期か
らいつも一緒に遊びたいと思うお友達も出来、幼稚園が楽しい様子なのですが、その子が”
遊べない”と誘いを断るとたたいたり、つねったりと相手に手をあげているようです。最近
ではその子の母親から先生に対して、どうしてもっと注意しないのか、親はどうしている
のか、と相談が寄せられているそうです。

そんな折、先日恒例の発達相談を受け、カウンセリングの先生に”高機能広汎性発達障害”
かもしれないといわれてしまいました。そして、他の生徒の親御さんから誤解のないよう
に皆に説明をしてみるのはどうか…と提案されました。

もちろん、専門医の診察は受けていません。この言葉を主人やお姑さんに伝えたところ、
二人とも口をそろえて”人の息子を勝手に障害者扱いしやがって””公立に入れたのが失敗や、
先生のレベルが低すぎる”と怒ります。確かに自宅での息子は自分の興味あるものへの執着、
またそれ以外のものへの無頓着さというのはありますが、やさしい子ですし、問題があっ
てもどこに家庭にでもあるようなことです。

先生方というのは、自分のクラスで手に余る子供に対して何らかの診断をつける事によっ
て責任回避をできることもあるのでは、と思う節もないわけではありません。カウンセリ
ングの先生の見立てに関しては、その可能性を踏まえたうえで(長い目で)親として出来
ることをやっていこうと思っています。ただ、専門医に診てもらうというのはどうでしょ
うか?

公立幼稚園、私立幼稚園で先生に違いはあるのでしょうか?そして上記のような反応を返
す家族にたいして私はどのように説明、対処していったらよいのでしょうか?
もっともっと息子の状況をお伝えしたいのですが、どんなことをお伝えしたら先生の判断
にお役にたてるのか…。

先生、もしもお時間が許すのであれば是非アドバイスをお願いします。

【はやし浩司よりNさんへ】

 11年ほど前から、「アスペルガー」(高機能広汎性発達障害)という言葉が、よく
聞かれるようになりました(1999年ごろ)。
その当時はともかくも、こと「アスペルガー」については、診断方法も確立し、教育、
医療の世界でも一般化し、今では見立てを誤るということは、まずありません。
ですからカウンセラーの先生が、「アスペルガーではないか?」と言ったということ
ですから、その見立てには、ほぼまちがいないものと思われます。
(今ではたいへんわかりやすい障害のひとつです。)

 ただ「広汎性」という言葉からもわかるように、症状の内容、軽重は様々で、最近
では、「幅が広い」という意味で、「自閉症スペクトラム」という言葉を使います。
一様ではないということです。
いただいたメールを読む範囲でも、それが疑われます。
たとえば「数字」に、ふつうでない(こだわり)を見せる部分など。

 それについて書いた原稿を添付します。

+++++++++++++++++++++

●自閉症スペクトラムの子どもたち

+++++++++++++++++++++

「自閉症」と言うと、ほとんどの親たちは、
(無口で、内気。殻(から)に閉じこもった
子ども)を想像する。
しかしこれは誤解。

そこで最近では、自閉症という言葉はあまり
使わない。
「広汎性発達障害」という言葉を使うことが
多い。
(以前は、多動性、多弁性のある自閉症児を、
「活発型自閉症児」と呼びことが多かった。)

また症状や程度は、千差万別。
ふつうの子ども、(この言葉には、少なからず
抵抗を覚えるが)、そのふつうの子どもと
ほとんど違わないレベルから、顕著な症状の
現れる子どももいる。
そのため患者数も、36万人~120万人
(日本自閉症協会)と、大きな幅がある。

そのこともあって、最近では、「スペクトラム」
という言葉を使うことが多い。
「自閉症スペクトラム」というような言い方を
する。

たとえば現在、自閉症といっても、高機能自閉症
(アスペルガー症候群含む)は、区別して考える。
症状としては、AD・HD児や、LD児のそれを
併せもつケースも多い。
もちろん知的障害をもった子どもも多い。
が、先にも書いたように、その境界が、よくわからない。
わからないという意味で、「スペクトラム」という
言葉を使う。

「スペクトラム」というのは、光の分光器で光を
分解したときのように、それぞれの症状が、多岐、
複雑に分かれ、かつ連続性をもつことをいう。

+++++++++++++++++++++
 
●自閉症スペクトラム

 診断については、DSMによる診断基準が、広く、一般的に使われている。
ウィキペディア百科事典に出ている、「DSMによる診断基準」を、そのまま紹介
させてもらう。

+++++以下、ウィキペディア百科事典「自閉症」より転載+++++

DSMの診断基準

DSMの診断基準に挙げられている症状は次の通り。

●コミュニケーションにおける質的な障害
○視線の相対・顔の表情・体の姿勢・身振り等、非言語行動がうまく使えない。
○(例)会話をしていても目線が合わない。叱られているのに、笑っ
ている。
○発達の水準にふさわしい仲間関係が作れない。
○興味のあるものを見せたり指さしたりする等、楽しみ・興味・成果を他人と
自発的に共有しようとしない。
○対人的または情緒的な相互性に欠ける。
●(例)初対面の人に対する無関心。

●意思伝達の質的な障害
○話し言葉の発達に遅れがある。または全く話し言葉がない。
(例)クレーン現象
○言語能力があっても、他人と会話をし続けることが難しい。
(例)一問一答の会話になってしまう。長文で会話ができない。
○同じ言葉をいつも繰り返し発したり、独特な言葉を発する。
(例)人と会話をする際に同じ返事や会話を何度もする。
○発達の水準にふさわしい、変化に富んだ『ごっこ遊び』や社会性を持った
『物まね遊び』ができない。

●限定され、いつも同じような形で繰り返される行動・興味・活動(いわゆる「こ
だわり」)
○非常に強く、常に繰り返される決められた形の一つ(もしくはいくつか)の
興味にだけ熱中する。
○(例)特定の物、行動などに対する強い執着心。
○特定の機能的でない習慣・儀式にかたくなにこだわる。
(例)物を規則正しく並べる行動。
(例)水道の蛇口を何度も開け閉めする行動。
○常同的で反復的な衒奇(げんき)的運動物体の一部に持続的に熱中する。
(例)おもちゃや本物の自動車の車輪・理髪店の回転塔・換気扇な
ど、回転するものへの強い興味。
(例)手をヒラヒラさせて凝視する。

+++++以下、ウィキペディア百科事典「自閉症」より転載+++++

●軽重の判断を正確に

 この診断基準を読んでもわかるように、自閉症のもっとも顕著な特徴は、他者との
良好な人間関係(コミュニケーション)をとれないところにある。
 もちろんその程度も、子どもによってちがう。
一日中、小刻みな運動を繰り返し、ほとんどコミュニケーションがとれないタイプの
子どももいれば、ふとしたきっかけで、親や兄弟たちと、いっしょになって行動する
というタイプの子どももいる。

 そこで自閉症が疑われたら、まずどの程度の症状かを、正確に把握する必要がある。
症状が軽いばあいには、自閉症であることをあまり意識せず、(ふつうの子ども)として、
ふつうの環境で育てるのがよい。
私の経験でも、自己管理能力が育つ、小学3~4年生を境にして、症状は急速に収まって
くる。
大切なことは、それまでに症状をこじらせないこと。
多くのばあい、その症状の特異性から、親が乳幼児期に、はげしく叱ったり、ときに
暴力を加えたりしやすい。
こうした一連の不適切な対処の仕方が、子どもの症状をこじらせる。

●原因

 こと教育の場では、(原因さがし)というのは、しない。
しても意味はない。
「そこにそういう子どもがいる」という立場で、指導を開始する。
ただ親には、ある程度のことは話す必要がある。

 というのも、自閉症が疑われると、ほとんどの親は、その瞬間から、はげしい
絶望感を覚える。
が、こと自閉症に関していえば、「脳の機能障害」であり、さらにわかりやすく
言えば、一時的であるにせよ、あるいは長期的にあるにせよ、機能が不全の状態
であるにすぎない。
(詳しくは、ウィキペディア百科事典を参照のこと。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E9%96%89%E7%97%87)

 たとえば私のばあい、軽度自閉症であれ、アスペルガー症候群であれ、高機能
自閉症であれ、その子どもが一定のワクの中に入れば、そうした「障害」は無視し
て指導を開始する。
(ここでいう「高機能」というのは、「知的な障害が見られない」という意味で、
そう言う。)

 つまり診断名を親に告げる必要はないし、(また「診断名」を告げることは、
タブー中のタブー)、原因や、将来の予想を告げる必要もない。
重要なことは、「先月よりも、今月はよくなった」「半年前より、症状が軽くなった」
という状況を作ることである。
 またそういう状況になるように、指導に専念する。

●親の無理解

 症状が重く、医師による診断がくだされているケースは、別として、先にも
書いたように、症状があいまいな子どもも少なくない。

(ただし医師の診断が、いつも正しいとはかぎらない。
私も医師によって「自閉症」と診断された子どもを、何十例と指導してきた経験
があるが、そのうち3~4割については、「?」と感じている。)

 たいていは2~3歳ごろになって、「どうもうちの子は、おかしい」「言葉の
発達が遅れている」「落ち着きがなく、突発的に錯乱状態になる」などの症状が
現れて、ふつうではないことに気づく。
多動性、衝動性が見られることも多く、そのため先にも書いたように、はげしく
叱ったり、ときに暴力を加えたりしやすい。
それが症状をこじらせるだけではなく、指導するばあいも、親の協力が得られず、
苦労する。

やっとの思いで、(ふつうの子ども?)になっても、「この教室は効果がなかった」
という判断をくだして、そのまま去って行く親も少なくない。
(というより、そういうケースが、ほとんどと考えてよい。)
そういうばあい、私(=指導者)が受ける落胆感というか、絶望感には相当な
ものがある。
自閉症にかぎらず、親の無知、無理解が原因で、そうした絶望感を味わうことは
じばしばある。
が、いまだに、その絶望感だけは、どうしようもない。

 つまりこういうことが重なるため、指導する側(幼稚園や保育園を含む)は、
どうしても指導に消極的になる。……ならざるをえない。
目に余るほど症状が顕著なばあいには、入園そのものを断るケースが多い。

●希望

 最近では、自閉症児に対する理解も進み、またその周囲環境も整えられてきて
いる。
いろいろな団体や組織が、治療プログラムを用意し、好成績を収めている。
またあくまでも機能障害であり、(機能の改善)をめざした医学的治療法も、
現在急速に進歩しつづけている。
原因についても、大脳生理学の分野で、かなり精密に解明されつつある。

 また(流れ)の中でみると、自閉症児にかぎらず、AD・HD児、かん黙児
にしても、小学3~4年生を境に、急速に症状が緩和されてくる。
とくに脳内ホルモンのバランスが調整されてくる思春期前夜ごろになると、
子ども自身がもつ、自己治癒機能が働くようになる。
専門家が見れば、そうとわかるが、そうでなければ、外目にはわからなくなる。
つまりその程度までに、改善する。

 そのため仮に、専門機関で自閉症と診断されても、(親が受けるショックは
大きいが)、それを「終わり」と考えてはいけない。
そのためにも、つぎのことに注意する。

(1)専門機関で診断名をつけてもらい、自閉症に対する知識をしっかりともつ。
(2)愛情の糸だけは大切にし、どんなばあいも、子どもを「許して忘れる」。
(3)乳幼児期には、「症状を悪化させないこと」だけを考える。
(症状をこじらせれば、いろいろな合併症を併発する。
また立ち直りも、その分だけ遅れる。)
(4)治療のターゲットを、小学3~4年生(9~10歳)ごろに設定する。
それまではジタバタしない。
「ようし、十字架のひとつやふたつ、背負ってやる」という前向きな、
暖かい愛情が、何よりも重要と心がける。
(5)幼稚園以後の教育法などについては、各地域にある、「発達障害相談窓口」
(多くは保健所、保険センター)に相談するとよい。
現在、この浜松市でも、10年前とは比較にならないほど、そうした障害
をもつ子どもに対する支援プログラム、支援組織、支援団体が組織化されている。
けっして「私、1人」と、自分を追い込んではいけない。

(2009年7月22日記)

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て Hiroshi
Hayashi 林浩司 BW はやし浩司 自閉症 自閉症スペクトラム)

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

●かんしゃく発作

 Nさんのお子さんについて言えば、「暴力的行為」の部分について言えば、同時に
かんしゃく発作も疑われます。
つまり「自閉症スペクトラム」と、「かんしゃく発作」が同居しているというふうに、
私は判断します。
(もちろん私はドクターではありませんので、カウンセラーの先生の指示に従って
ください。
あくまでも参考的意見です。)

 「かんしゃく発作」については、一般的には「家庭教育の失敗」とみます。
とくにこのタイプの子どもは、根気ある指導、深い親の理解と愛情が必要です。
が、どこかで短絡的に叱ったり、突き放したりしてしまった。
親子関係がわかりませんが、下の子がいれば、愛情飢餓、愛情不足も疑われます。
「自閉症スペクトラム」イコール、「暴力的行為」ということではありません。
よく見られる症状は、

(1)キレるとき、カラにこもってしまい、異常にがんこになる。
(2)まちがいを指摘したり、注意したりすると、異常にがんこになる。
ときに体を震わせて、それに抗議する、など。

 能力的には、問題がないばかりか、ある特異なことに強い関心と理解を示します。
たとえば数学的な部分については、天才的な能力を発揮するなど。
そのあたりをよく観察して、ご自身で判断するのがいちばんよいかと思います。

 これも以前書いた原稿ですが、参考のために、再録しておきます。

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

【アスペルガー障害】

++++++++++++++++++++

症状から、明らかに「アスペルガー障害」と
思われる子どもについての相談があった。

++++++++++++++++++++

【はやし浩司より、GN先生へ】

GN先生へ

拝復

 お手紙、ありがとうございました。相談のあった子どもを、以下、T君(男児)として
おきます。

 私はドクターではありませんので、子どもを診断することはできませんが、症状からす
ると、T君は、アスペルガー障害(アスペルガー症候群)と、活発型自閉症の複合したタ
イプと考えてよいのではないでしょうか。それが基本にあって、不適切な家庭環境と指導
で、症状がこじれてしまっている。私は、そう判断しました。

 以下、アスペルガーついて、いくつかの文献から、資料をあげてみます。



+++++++++++++

●文献より

【臨床心理学・稲富正治・日本文芸社】

 自閉性障害の中でも、言葉や、記憶の発達に遅れがないケースを、「アスペルガー障害」
と呼ぶ。

 対人関係の障害と興味や活動が限定されているという点が、特徴である。

 高機能自閉症とともに、高機能広汎性発達障害に含まれる。

 圧倒的に男児に多く、知能は平均以上であるものの、コミュニケーションがうまく取れ
なかったり、不器用であるため、孤立しやすくなる。

 計算や文字、地図など限定されたものに対して、異常なほどの関心を示し、その中で独
創性を発揮する人もいる。が、自分が守っている範囲に、他人が侵入してきたり、乱され
たりすることに対して、著しく、攻撃的になる。

 原因は、中枢神経の障害であると言われているが、まだ解明されたわけではない。遺伝
の要素も強く、パーソナリティ障害や情緒障害と診断されるケースもあるため、診断には
最新の注意が必要。

 最近では、対人関係のトラブルをどのように解決するかを意識的にトレーニングする、
行動療法などの治療法がある。



【発達心理学・山下富美代・ナツメ社】

 アスペルガー障害は、言語発達に遅れがみられないほか、知能も高い水準を維持してい
るといわれる。しかし自閉症と同様に、相互的な対人関係の障害がみられること、ある特
定のものに対する関心の程度が高すぎることなどが特徴である。

 また自閉症とともに、男の子に多い障害でもあり、医学的な治癒は難しいとされている。

 特徴としては、(1)正常な対人関係をもつことは困難、(2)特定のものに対する、こ
だわり、興味の偏(かたよ)りがみられる。(3)言語障害はみられない。



【心理学用語・渋谷昌三・かんき出版】

 ……ウィングは、自閉症には、3つの特徴があると説明している。

(1)社会性の問題

 自分の体験と他人の体験が重なりあわない。(他人がさっと顔色を変え、怒った表情をす
れば、自分が悪いことをその人に言ったのではないかと思うが、自閉症の人は、こうした
他人の感情を推し量るのが、非常に苦手。)

(2)コミュニケーションの問題

 言葉の遅れから、双方のコミュニケーションが、うまくとれない。(声の大きさや、イン
トネーションの調整が苦手、自分の意見を言うとき、どのように言うべきかを迷う。)

(3)想像力の遅れ

 1つの対象に、異常なほど興味を示す。特定の儀式にこだわる。

 これらの特徴のうち、コミュニケーションの障害が、非常に軽いものを、「アスペルガー
症候群」と呼ぶ。軽い遅れというのは、冗談が通じにくい、比喩を使った表現が理解しに
くいことをいう。

 すなわち、アスペルガー症候群は、言語発達の遅れが目立たず、知的には正常だが、生
まれつき社会性の障害と、こだわり行動をもっている自閉症を指す。



【臨床心理学・松原達哉・ナツメ社】

 アスペルガー障害は、乳児期後半から特徴が出始め、6~7歳に顕著になる。ほとんど
男児のみにみられる障害である。

 言語的な発達には遅滞はないが、言葉は単調で、抑揚がないという特徴がある。言語や
容貌に子どもらしさがなく、コミュニケーションがとれず、集団の中では孤立することが
多い。

 特定の対象、数字・文字・地図・貨幣などに興味を示し、独創性もあり、知能は平均以
上と推定される。しかし自己の領域を侵されると、パニックを起こし、攻撃的になる。ま
た、多くの全体的な知能は正常だが、著しく、不器用であることが多い。

 青年期から成人期へ、症状が持続する傾向が強いが、統合失調症(精神分裂病)の診断
基準は満たさないので、成人後も、精神分裂病にはならないといわれている。

 治療法は、その子どもの特性を理解し、それに合った、治療・教育をすれば、じゅうぶ
ん社会に適応できるようになる。大切なことは、病態に対する周辺の理解であり、治療に
おいても、社会福祉的な領域が重要になる。

 ……アスペルガー症状は、自閉症と類似しており、自閉症の軽度の例にもみえるため、
それぞれの診断は困難である。

症状の例として、本人のやっていることを中断させると、突然、怒り出すなどがある。

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 
アスペルガー アスペルガー障害 アスペルガー症候群 アスペルガー症)

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●親自身の問題

 こうした事例で、まず注意しなくてはいけないのは、親自身が、すべてを話しているか
どうかということです。つまりほとんどの親は、自分に都合の悪いこと、たとえば不適切
な対処法で、子どもの症状を、かえってこじらせてしまったようなことについては、話し
ません。

 無意識のうちに、こじらせてしまうというケースもありますが……。

 T君について言えば、乳幼児期から多動性があったということですが、この段階で、母
親が、かなりきびしく叱ったり、怒ったり、あるいは体罰としての暴力を振るったことも、
じゅうぶん、考えられます。

 T君にみられる、一連の不安症状、さらには、基本的な不信関係は、そういうところか
ら発生したと考えられます。母親からの報告内容にしても、まるで他人ごとのような観察
記録といった感じで、私はそれを読ませてもらったとき、「?」と思いました。あたかも、
「うちの子は、生まれつきそうで、それは、私の責任ではない」と言わんばかりの内容で
すね。

 で、私の経験を話します。

●私の経験より

【U君(小3児)のケース】

 U君を最初に預かったのは、まだ、「アスペルガー症候群」という言葉が、ほとんど知ら
れていないころでした。1990年代の中ごろです。(1944年に、オーストリアの
小児科医のアスペルガーが、その名前の由来とされていますが、日本でこの名称が使われ
始めたのは、90年代に入ってからです。)

 最初、自閉症かなと思いましたが、知的能力の遅れはなく、言語障害も、みられません
でした。が、いくつかのきわだった特徴がみられました。

(1)ほかの子どもと仲間になれない

 そのあと、U君が小学校を卒業するまで、私が週2回指導しましたが、最後の最後まで、
結局は、友だちができませんでした。いつも集団から1歩、退いているといった感じで、
軽い回避性障害もありました。集団の中へ入ると、心身が緊張状態になってしまうからで
す。

(2)ずば抜けた算数の力

 計算力はもちろん、算数全般について、ずば抜けた能力を示しました。知的能力は、平
均児より高かったのですが、最後まで、乱筆には、悩まされました。文字を書かせても、
メチャメチャでした。こうした不器用さは、アスペルガー障害の子どもに、共通していま
す。こまかい作業が苦手で、それをさせると、混乱状態から、突然、キレた状態になるこ
ともあります。

(3)極端な自己閉鎖性

 U君のばあいは、まちがいを指摘しただけで、突然、キレて、激怒することもありまし
た。(軽いばあいは、顔をひきつらせて、大粒の涙だけを流す、など。)たとえば計算問題
などで、まちがいを見つけ、「やりなおしなさい」と指示しただけで、キレてしまう、など。

(キレないときもありましたが、あとでノートを見ると、エンピツで、きわめて乱暴に、
それを塗りつぶしてあったりしました。)

 こうした特徴を総合すると、U君には、心の持続的な緊張感、特別なものへのこだわり、
自己閉鎖性があったことになります。

 幸いなことに、U君のケースでは、母親が、たいへん穏やかで、心のやさしい人でした。
ですからそれ以上、心がゆがむということは、U君のばあいは、ありませんでした。私は、
当時は、「U君は、ほかの子どもとはちがう」と判断し、U君はU君として、指導しました。

●治療は考えない

 こういうケースで重要なのは、アスペルガー症候群にかぎらず、子どもの心の問題に関
することは、「治そう」とか、「直そう」と思わないことです。

 「あるがままを認め」、「現在の状態を、今より悪くしないことだけを考えながら」、「半
年、あるいは1年単位で、様子をみる」です。

 で、相談をいただきましたT君にケースですが、全体に、周囲の人たちが、「治そう」と
か、「直そう」とか、そういう視点でしかT君をみていないのが、気になります。「少しよ
くなれば、すぐ無理をする」。その結果、症状を再発させたり、悪化させたりしている。あ
とは、その繰りかえし。そんな感じがします。

 U君のケースのほか、兄と弟でアスペルガー障害のケースなど、「アスペルガー」という
言葉がポピュラーになってから、(2000年以後ですが……)、私は、4例ほど、子ども
を指導してきました。

 (最近は、体力の限界を感ずることが多く、指導を断るケースが、多くなりました。)

 その結果ですが、アスペルガー障害そのものの(治癒)は、たいへんむずかしいという
ことです。そのかわり、小学3、4年生ごろから、自己意識が急速に育ってきますから、
それを利用し、子ども自らに自己管理させることで、見た目には、症状を落ち着かせると
いうことはできま
す。

 子ども自身が、自分で自分を管理できるように、指導していくわけです。

 しかしこれも、1年単位の根気と、努力が必要です。とくに指導する側は、その生意気
な態度のため、カッとなることもあります。たとえばU君のばあいでも、私がまちがいを
指摘しただけで、私に向かってものを投げつけてきたことがあります。あるいは、ぞんざ
いな態度で、「ウルセー」と、言い返してきたこともあります。

 そういうとき、ふと、その子どもが、アスペルガー障害であることを忘れ、「何だ、その
態度は!」と叱ってしまうこともありました。「根気が必要だ」というのは、そういう意味
です。

 先生からいただいた報告の中に、担任の教師が、かなり乱暴な指導をしたという記録が
書いてありますが、それもその一例と考えてよいのではないでしょうか。記録だけを読む
と、担任の教師が悪いように思われますが、このタイプの子どもの指導のむずかしさは、
ここにあります。

子どもがキレた状態になったとき、きわめて生意気な様子をしてみせるからです。ふつう
の態度ではありません。おとなを、なめ切ったような態度です。

●親側の問題

 で、先にも書きましたが、現在、T君と母親の関係についても、考えなければなりませ
ん。親というのは、こういうケースでは、自分に都合の悪いことは、話しません。そうい
う母親がよく使う言葉が、先にも書きましたが、「生まれつき」という言葉です。

 「うちの子は、生まれつき、こうです」と。

 子どもの症状を悪化させながら、その意識も、自覚もない。もっとも、だからといって、
親を責めてもいけません。親は親で、そのときどきにおいて、懸命に子育てをしているか
らです。懸命にしている中で、客観的に自分を見る目を失ってしまう。よい例が、
不登校児です。

 子どもが「学校へ行きたくない」などとでも言おうなら、その時点で、たいていの親は
パニック状態になり、子どもを、はげしく叱ったり、暴力的に学校へ行かせようとします。
この無理が、症状を悪化させてしまいます。

 たった一度の一撃でも、子どもの心が大きくゆがむということは、珍しくありません。

 で、その時点で、親が冷静になり、「そうね。どうして行きたくないのかな? 気分が悪
ければ、無理をしなくていいのよ」と親が言ってやれば、不登校は不登校でも、それほど
長期化しなくてすんだかもしれません。そういうケースも、私は、やはり何十例と経験し
てきました。

●年単位の観察を

 先生からいただいた報告書を読むかぎり、親も、担任の教師も、みな、少しせっかちす
ぎるのではないかと思います。先にも書きましたが、この問題だけは、1年単位、2年単
位で、症状の推移をみていかなければなりません。

 「先月より今月はよくなった」ということは、本来、ありえないのです。ですから週単
位、月単位の変化を記録しても、意味はありません。またそうした変化に一喜一憂したと
ころで、これまた意味がありません。もう少し、長いスパンで、ものを考える必要があり
ます。

 簡単に言えば、現在のT君を、あるがままに認め、そういう子どもであるということに
納得し、(もっとわかりやすく言えば、あきらめて)、対処するしかありません。T君は、
給食におおきなわだかまりをもっているようですが、そういう子どもと、先に認めてしま
うのです。

 それを何とか、食べさせようと、みなが無理をする。それが症状をして、一進一退の状
態にしてしまう。あるいはときに、もとの木阿弥にしてしまう。

 ……といっても、年齢的に、小4ということですから、症状は、すでにこじれにこじれ
てしまっていると考えられます。本来なら、乳幼児期にそれに気づき、その時点で、親が
それに納得し、指導を開始するのが望ましいのですが、報告書を読むかぎり、そういった
記録がありません。

 ご指摘のように、T君の親は、学校側の指導法ばかりを問題にしているようですね。し
かし、これでは、いけない。本来なら、専門のドクターに、しっかりとした診断名をくだ
してもらい、そうであると親自身が納得しなければなりません。

 で、指導する側の私たちとしては、「知って、知らぬフリ」をして指導するわけです。私
が指導してきた子どもたちにしても、現在、指導している子どもたちにしても、私は、「知
らぬフリ」をして、指導してきました。今もそうしています。もちろん私のほうから、診
断名をくだすということは、絶対に、ありえません。またしてはなりません。

 が、親のほうから、たとえば「アスペルガー」という言葉が出てきたときは、話は別で
す。そのときはそのときで、「アスペルガー」という言葉を前面に出し、指導します。しか
しそれまでは、知らぬフリ、です。

 ただ「そうでない」という判断はくだすことがあります。自閉症の子どもではないかと
心配してきた親に対して、「自閉症ではないと思います」というように、です。そういうこ
とは、しばしばあります。

●親の無知

 で、やはり、ここは親に、それをわかってもらうという方法をとるしかありません。し
かしこれも、むずかしいですね。

 最近でも、明らかにADHD児の子ども(小5)がいました。で、それとなく親に聞い
てみたのですが、親は、まったく自分の子どもがそうであることさえ疑っていないのを知
り、がく然としたことがあります。「うちの子は、活発な面はあるが、ふつうだ」と。

 つまり親の無知、無理解をどう克服するかという問題も、生まれてきます。
アスペルガー障害であれば、なおさらでしょう。幼児教育の世界でも、この言葉がポピュ
ラーになったのは、ここ5、6年のことですから……。

 以上、私の独断で、T君を判断してしまいましたが、まちがっていることもじゅうぶん、
考えられます。一番よいのは、私自身が、T君を直接観察してみることです。また機会が
あれば、そっと遠くから観察してみてもよいです。ご一考ください。

 あまりよい返事になっていませんが、さらに最近の研究では、環境ホルモンによる脳の
微細障害説を唱える学者もいます。アスペルガー障害にかぎらず、このところ、どこか「?」
な子どもがふえているのは、そのためだ、と。

 あくまでも、参考的意見として、お読みいただければうれしいです。

 では、今日は、これで失礼します。

 長々とすみませでした。相談いただいたことをたいへん光栄に思い、感謝しています。
ありがとうございました。



敬具



                                はやし浩司

Hiroshi Hayashi++++++はやし浩司

【Nさんへ】

●こじらせない

 この10年間だけでも、10人以上の子どもについて、3~8年間指導してきた経験
があります。
もちろん診断名を口にすることはありませんでした。
親の方も、口にすることはありませんでした。
たがいに暗黙の了解(?)というような状態でした。

 で、結論から言うと、簡単には治らない。
その中でもK君(幼児~小5まで指導)は、毎週名古屋にある、そういった子どもを専門
に指導する会に通っていました。
効果があったというよりは、「どの部分が効果なのか」、私にはよくわかりませんでした。

 言い替えると、もしそうであっても、診断名は忘れて、「うちの子は、そういう子」と、
割り切って対処するのがいちばんよいかと思います。
ちょっとむずかしい性格と考えて、割り切ります。

ドクターはすぐ薬物投与を考えますが、私は慎重に考えたほうがよいと思います。
というのも、小学3、4年生を境に、自己管理能力が育ち、子ども自身の力で、自分を
コントロールするようになるからです。
そのあとは、急速に、症状はわかりにくくなります。

 大切なことは、無理な指導で、症状をこじらせないこと、です。
(もちろん症状の軽重にもよりますが……。)

 先生や友だちの親には、「すみません。ああいう子ですから」と、先に頭をさげてすませ
ます。
もちろん診断名を告げる必要はありません。
相手の親たちは、もっと無知(素人)なのですから。

 そうしたこともふまえた上で、一度専門医に相談してみることは、必要かもしれません。
対処の仕方も見えてきます。
また誤解により、子どもを叱りつけるなどという行為にも、自制が働くようになります。

さらに言えば、「障害」という言葉に、あまり神経質になってはいけません。
英語では、「disorder」という名前をつけています。
「脳の機能の変調」という程度に考えてください。
(「障害」という言葉は、いやですね。私は言い方を変えろと、もう10年以上も前から
主張しているのですが……。)
親戚の方がショックを受けるのは、当然のことですが、ここは冷静に。
やがてすばらしい能力を発揮するようになります。
そのときまで、今は、がまんしてください。
「高機能広汎性発達障害」というのは、そういう「障害」です。

(はやし浩司 家庭教育 育児 教育評論 幼児教育 子育て Hiroshi Hayashi 林浩司 
BW はやし浩司 高機能広汎性発達障害 自閉症 自閉症スペクトラム アスペルガー 
はやし浩司 アスペルガー児 アスぺルガー障害児)
2010/07/16記


【3】(近ごろ、あれこれ)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□

●吉良温泉、「きらかん」(吉良観光ホテル)

【吉良上野介(きたこうずのすけ)】

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type="application/x-shockwave-flash" allowscriptaccess="always"
allowfullscreen="true" width="425" height="344">


●YOUTUBEへは

http://www.youtube.com/watch?v=Q3Utf1s_9Ho

+++++++++++++++++

今日は、愛知県吉良吉田町にある温泉に一泊。
ホテルの名前は、『吉良観光ホテル』。
「きらかん」というのが、正式のホテル名らしい。
このあたりでは老舗(しにせ)旅館。
部屋は10畳から12畳。
間取りは広い。
何といっても特徴は、あのケーブルカー。
山の上の露天風呂までは、ケーブルカーであがる。
その風情というか、遊び心が楽しい。

旅館のエレベーターの中に、こんな文字が見えた。
「吉良上野介うんぬん」と。
「まさか!」と思ってフロントに電話をかけ確かめる。
「ここに吉良上野介の菩提寺があります」と。
ギョッ!
知らなかった!

吉良上野介の領地はあちこちにあった。
その中でも当領地が一番大きかったということで、
菩提寺は、ここに定められたとのこと。
吉良家とは、何やら深い縁がありそう(?)。

が、窓の外は、あいにくの雨。
対岸の知多半島は霧で煙っていた。
雨が嫌いというわけではない。
晴天も悪くないが、雨模様のほうが、旅をする者
にとっては、心が休まる。
落ち着く。

露天風呂の湯は少し熱かった。
その熱気が、小雨の粒で調和され、心地よかった。
シーズンオフということもあって、入浴客は
私と長男だけ。
近くの木々や湯を打つ雨の音が、心をなごませる。

「きらかん」……吉良観光ホテルは、料理よし、
風呂よし、サービスよし、星は4つの★★★★。
交通の便はあまりよくないが、それがかえって
この温泉郷を、穴場に仕立てている。
(アクセスは、名鉄電車で吉良吉田下車。
送迎サービスがあり。)

眼下には、海水浴場も見える。
夏場は、にぎわうはず。

雲間に飛びかうトンビを、のんびりとながめる。
過ぎ行く時間を、しばし忘れる。

「きらかん」(吉良観光ホテル)……三河湾国定公園、吉良温泉内。
電話……0563-32-1181

++++++++++++++++++++

●午後7時

 午後7時というのに、外はまだ明るい。
雨もあがり、遠くに細く長く、知多半島が見える。
先月はその先端にある、伊良湖ビューホテルに泊まった。
それを思い出しながら、伊良湖岬の先端をさがす。

 ところで夕食のとき、右足のひざの下あたりに、1円玉大の赤い斑点を見つけた。
中央がやや盛り上がっていた。
何かの虫に刺されたらしい。
周辺部がやや黒ずんでいるところをみると、刺されてからかなり時間がたっているらしい。
気がつかなかった。
ダニでもない。
蚊でもない。
が、ハチだったら、こんな大きさではすまない。
痛くもかゆくもない。
なんだろう?

 ふと「がんだったら……」と思った。
皮膚がんについての知識を、懸命に頭の中からさがす。

 形が不定形。
出血がある。
乳首のようにでこぼこしている、など。
皮膚がんにもいろいろある。
そんなことを考えながら、「これからは何があってもおかしくないな」と思う。
が、不思議なことに、恐怖感はあまりない。
「あと10年、体がもてばいい」とか、そんなふうに考える。
そのころ私の健康寿命は終わり、そのあとは、死に向かって病気を繰り返す。

●体調

 実のところ、この数日間、体調は最悪だった。
自分を支えるのもつらいほど、体をだるく感じた。
原因も理由もわからなかった。
ほかに症状もなかった。
たぶんに季節的なものとは思うが、今までにないだるさだった。

 時間があればふとんの上で体を横たえた。
が、それで疲れが取れたわけではない。
そのままいつまでも眠っていたい……そのつどそう思った。

その私が今日は、吉良温泉へ。
が、人間の体というのは不思議なものだ。
動き出せば動き出すもの。
「ええい、ままよ!」と動き出したとたん、疲れを忘れてしまった。
足(大腿部)が痛いのも、足の裏がだるいのも、みな、忘れてしまった。
旅行にはいつも小型のバッグをもって歩くが、その重さも忘れてしまった。
「気力」というのは、そういうもの。
もう少し正確には、自律神経というのは、そういうもの。

 夕食を食べるころには、体のだるさも取れ、頭の中もすっきりとしてきた。
熱い風呂にがまんして入ったのが、よかったかも?

●ためしてガッテン

 夕食後、また露天風呂に入ってきた。
客は、4人組みの女性客と、私たち3人だけらしい。
ホテルには申し訳ないが、私たちは貸し切り気分を楽しんだ。

 今、時刻は午後9時になるところ。
テレビではローカルニュースを放送している。
少し前、「ためしてガッテン」(NHK)という番組を見ていた。
登山と下山の仕方を話していた。
私はいつも下山するとき、足を痛める。
その番組を見て、その理由が、はじめてわかった。

 結論から先に言えば、下山するときは、大またで歩かないこと。
小またで歩くこと。
心拍数があがらないため、どうしても大またで歩いてしまう。
そのため大腿筋がズタズタに切れてしまう。

 この世の中には、私が知らないことがまだ、山のようにある。
山どころではない。
私が知っているのは、山の一部の、そのまた一部に過ぎない。
その番組を見ながら、そんなことを考えた。

●風呂

 露天風呂には、不思議な魅力がある。
たとえば私は、結婚して以来このかた、ワイフといつもいっしょに入浴している。
そのため今では、ワイフを「女」と見ることは、まず、ない。
ワイフも私の前では、平気。
私を「男」と意識することはない。

 しかし露天風呂の中のワイフは、まるで別人のよう。
別人のように色っぽく見える。
美しく見える。
これはどうした心理的作用によるものなのか。
(ただしワイフは、私に対して特別な変化を感ずることはないようだ……。)

 つまり「男」には、それぞれ特有の性癖のようなものがある。
女性の下着に興味をもつ人もいれば、スカートの下に興味をもつ人もいる。
太った女性がよいという人もいれば、汗臭い女性がよいという人もいる。
私のばあいは、入浴中、あるいは入浴後の女性に、色気を覚える。
若いころは、風呂あがりの、あの独特の石鹸ににおいをかいだだけで、ムラムラと
した。

 こうした性癖は、いつどのようにして作られるのか。
私が正常というわけではない。
私以外の人がそうでないというわけでもない。
人、それぞれ。
が、正直に、本当に正直に書くが、私にはマゾ趣味、サド趣味はない。
男としても「濃い男」で、同性愛には、まったく関心がない。
スカートの下など、頼まれても、のぞきたくない。
「便臭」などは、その臭いがしただけで、性欲が消えてしまう。
が、入浴中の女性にはぞっとするような美しさを感ずる。
エドガー・ドガの描いた絵に、『浴盤(たらいで湯浴みする女)』
というのがある。
あの絵などは、私が大好きな絵の一枚である。

 幼いころ、そういう受容体が、心のどこかにできたせいだろう。
思い当たるのは、銭湯で女湯を垣間見るのが好きだったこと。
番台に料金を払うときに、横目でチラリと女湯のほうをのぞく。
それが楽しみで、銭湯に通った。

●正常vs異常

 となると、正常、異常とは何かということになる。
あるいはそういうことを論ずること自体、無駄ということになる。
こと「性」に関して言うなら、正常もなければ、異常もない。
どんな行為も、一定のワクの中に収まる。
ワクの中に収まる以上、どんな行為も正常ということになる。

 ただこの問題は、(相手)をともなう。
相手が納得するなら、それでよし。
どんな行為も、そのワクの中でなら許される。
そうでないなら、そうでない。
「スカートの下をのぞきたい」と思うのは、その人の勝手。
しかしのぞかれた人が不愉快に思うなら、それは反社会的行為となる。
つまり「犯罪」。

●ドーパミン

 肉体は刺激を受けると、その信号は、脳の中の「脳幹」に伝わる。
その脳幹は刺激を受けて、ドーパミンを分泌するよう指令を出す。
ドーパミンは、欲望と快楽を司る脳内ホルモンの一種である。
覚せい剤と分子構造がたいへんよく似ている。

 そのドーパミンが、大脳辺縁系を興奮させる。
甘い陶酔感で満たす。
これが性的な快感へとつながっていく。

 で、問題は、その「刺激」。
男性と女性とでは、メカニズムがかなりちがう。……らしい。
男性は視覚的な刺激を受けて、脳幹はドーパミンを分泌するよう刺激を出す。
一方、女性は、全身が性感帯。
その分だけ刺激も強烈。
それを証明するのが、シータ波という脳波である。
女性のばあいも、オルガスムスを感じたときシータ波が出現するが、その強さは、
男性のそれの10倍前後と言われている。
(10倍だぞ!)
しかも時間が長い。

 よけいなことを書いてしまったが、先に書いた「ワクの範囲」というのは、それをいう。
つまり私たちが正常、異常と言っているものは、その「ワクの範囲」の中の反応でしか
ないということ。
もっと言えば、私やあなたを超えたところにある、「脳みその問題」ということ。

●午前4時40分

 長男がトイレに起きたのをきっかけに、目が覚めてしまった。
時計を見ると、午前4時40分。
昨夜は冷房がききすぎていたせいか、よく眠られなかった。
朝、起きたら、ワイフにしがみついて寝ていた。
私は血圧が低い。
それもあって、寒さには弱い。
とくに足の先が冷えると、目を覚ましてしまう。

 窓の外は、ぼんやりと明るかった。
ぼんやりと橙色の雲も見える。
昨夜、仲居さんが、朝日は山に隠れて見えませんと言った。
しかし……?
何とか、期待できそう。

●キラカン
 
 この部屋は12畳もある。
303号室。
玄関をあがると、1間半くらいの廊下がつづき、その先に部屋がある。
廊下の材木は、無垢(むく)のケヤキ。
老舗の旅館ということが、そういうところからもわかる。
空調の音も、ほとんど聞こえない。

 こうした旅行では、私たちはいつも早朝に食事をすませ、そのまま帰宅する。
早く帰れば、朝の日課に間に合う。
……といっても、私の仕事は、いつも午後から。
原稿を書いたり、ネットにそれをUPLOADするのが、私の日課。
お金にはならないが、だからこそ、楽しい。
お金に追われて仕事をするのは、それだけでストレスがたまる。

●雨雲

 雨は降っていない。
が、雨雲が低く、遠くの山々すれすれのところにまでおりている。
トンビの鳴く声。
カラスの鳴く声。
耳を澄ませば、波の音も聞こえる。

 そう言えば、数日前、知人の1人が狭心痛の発作(?)で、市内の病院に入院した。
一度、同じような症状が出て、そのときは簡単な手術で退院した。
「夜中に、自分で車で連れていきました」と、息子氏は言っていた。
年齢は78歳。
大柄の太った人だった。
「……だった」と書くと、もう亡くなってしまったかのように思う人がいるかもしれない。
ここ10~15年ほど、会っていない。
それで「……だった」と書いた。

 心筋梗塞と脳梗塞は、ペアで襲ってくる。
ともに血栓性の病気。
無事であればよいが……。

●童心

 外はかなり明るくなってきた。
鉛色の空、鉛色の海、その間にあって白くかすんだ島々。
近くには小さな島も見える。
深い緑に包まれ、じっとそこにたたずんでいる。
その右端には、船の航路灯があって、時折赤い光を点滅している。

 6時になったら、もう一度、露天風呂に入ってみるつもり。
あのケーブルカーが気に入った。
ケーブルカーに乗って、山の上の露天風呂に行く。
「キラカン」だけの特別サービスである。
乗ったとたん、私は童心に返った。

 そのあとの食事は、7時半からとか。
窓の外を見ると、さらにいっそう、景色が明るくなっていた。
その景色を、黒いカラスが、鳴きながら真一文字に横切っていった。

●デジャブ

 思考力が低下した?
ほんの少し前までは、こうしてものを書いていると、つぎからつぎへと、
いろいろなことが頭の中に浮かんでは消えた。
が、今は、それはない。
ぼんやりとカーテンがゆらめくのを見たり、ベランダに散った私物をながめたりする。

 ……子どものころ、町内の遠足で、この蒲郡(がまごおり)には、ときどき来た。
海水浴のためである。
だからというわけでもないが、この景色には、どこか見覚えがある。
来たことはないはずなのに、どこか見覚えがある。
こういうのを「デジャブ」、つまり「既視感」と言う。
わかりやすく言えば、「偽記憶」。

 「デジャブ」というのは、はじめて来た場所なのに、以前に一度来たような錯覚に
とらわれることをいう。
どこか霊的なパワーのなせるワザのように思う人もいるが、偽記憶は偽記憶。
記憶というのは、底なしに広い。
その中の一部が、目の前の景色とダブる。
改めて「吉良吉田へは、今日、はじめて来た」と、自分に言って聞かせる。

●記憶

 デジャブと逆の現象は、夢の中で経験する。
来たことがある場所なのに、それがどこかを思い出せない。
私のばあい、まったく見たこともない家なのに、自分の家と思い込むこともある。
記憶というのは、いいかげんなもの。

一説によると、たとえばどこかの旅館に泊まったとする。
そのとき、旅館の名前、場所、雰囲気、料理、風呂などの記憶は、脳の別々のところに
格納されるそうだ。
どこかにまとまって格納されれば、もう少し記憶を取り出しやすくなるかもしれない。
バラバラの格納されるから、思い出すときに苦労する。
コンピューターでいうような、「最適化」はできないものか。
 
 だから前回泊まったような旅館のようなばあい、とくに関連性のあることについては、
覚えている。
旅館とその風呂とか、旅館とその料理とか……。
しかしそれ以外の付随したことについては、どこの旅館のことだったのか、それがよく
思い出せない。
「あのみやげを買ったのは、どの旅館だったかな?」と。

●同窓会

 話がバラバラになってきた。
昨夜は、性欲について書いた。
今朝は、記憶について書いている。
が、これでは旅行記にならない。

 そう言えば、今度金沢で大学の同窓会がある。
数日前、連絡の手紙が届いた。
どこかの旅館を借りて、するという。
一泊、1名、2万5000円。
夫婦2名で、5万円。
かなりの大名旅行ということになる。
というのも、往復の旅費を入れると、10万円を超える。
この2月に同窓会があったばかりだから、今回は失礼するつもり。
……というより、同窓会に出てこられる人は、健康的にも恵まれた人たちばかり。
金沢周辺に住んでいる人も多いが、半数以上は石川県外に住んでいる。
今、ふと「脳梗塞にでもなったら、どうするんだろう?」と思った。
「車椅子に乗っていくしかないな」とも思った。

 やはり健康が許すなら、同窓会には出るべきなのか。
出られるうちは、出るべきなのか。
そのうち出たくても、出られなくなるかもしれない。
「失礼するつもり」と書いたが、迷いが生じてきた。
健康であることを喜びあう同窓会なら、10万円など、安いもの。
金額で考えるほうが、おかしい。

●再び……

 水平線はさらに明るくなったが、視界はかえって悪くなった。
見えるはずの対岸の渥美半島の島々が見えない。
空はすっかり雨模様。
で、時刻はもうすぐ6時。

 これから露天風呂へ。
楽しみ!

●やる気と性欲

 やる気と性欲は密接に関連しあっている。
やる気を司る中枢も、性欲中枢も、視床下部にある。
視床下部からの信号を得て、やる気(生的エネルギー)が生まれる。
性欲中枢、それに食欲中枢も、その視床下部にある。
一説によると、男性の性欲中枢を司る中枢部は、女性のそれの2倍ほどの大きさが
あるという。
(だから男性は、その分だけ、攻撃的ということになるのだそうだ。)
また女性の性欲中枢は、食欲中枢と隣接しているという。
そのため女性のばあい、食欲が満たされると、性欲が増大するという説もある。
(反対に男性のばあいは、飢餓状態になると、かえって性欲が増大するという。)

 ともあれ、やる気と性欲は、密接に関連しあっている。
あれほどやる気に苦しんでいた私が、こうして旅行に来て、温泉につかっただけで、
気分が変わった。
ただの肉塊にしか思っていなかった(ごめん!)ワイフが、色っぽく見えた。
性欲を感じた。
とたん、やる気が出てきた。
頭の中もすっきりしてきた。

 ……何度も、「これは私の思い過ごしか?」と自問してみたが、どうも、そうではない
らしい。
たしかに浜松を出るときと今とでは、気分がちがう。
やはり転地療法というのは、してみるものだ。

●記憶

 もうひとつのテーマ。
記憶。
 
 こうしてときどき旅行する。
しかし1、2か月もすると、旅行の記憶は、たいはんが消えてなくなる。
そこで私のばあい、できるだけ写真を撮ったり、ビデオに動画を収めたりするようにして
いる。
だれのためでもない。
私のため。

 若いときは未来に向かって、思い出を残した。
今はちがう。
今を忘れないために、思い出を残す。
さらに言えば、それは私自身との闘いでもある。
すでに私の脳みその底には、穴があいている。
その穴から、知識や経験、それに思い出がどんどんと流れ落ちていく。
そういう自分との闘いでもある。

 ……少し大げさかな?
旅行なんだから、もう少し気楽に考えればよい。
忘れたら忘れたとき。
そのときはまた別の旅行を楽しめばよい。

●帰りの電車の中で……

 今、この文章を、帰りの電車の中で書いている。
窓の外には、三河湾が断続的に見える。
たった今停まった駅が「子どもの国」。
駅の名前が「子どもの国」。
あたりを見回してみたが、それらしい建物は見えない。
深々とした緑のヤブと、古い寺。
しばらく行くと砂浜が見え、その向こうに小さな半島が見える。
あとは日本なら、どこにでも見られるような、雑然とした民家。

 「子どもの国」というくらいなら、ディズニーランドのような入り口でもあれば
よい。
つぎの駅に着いたときには、そう考えていた。

 ……こうして私の旅行記は終わる。
2010年7月15日。
愛知県、蒲郡にて。
楽しかった!

来月は、ちょっとリッチに、藤枝にある超有名な旅館に泊まる。
お楽しみに!

(はやし浩司 家庭教育 育児 教育評論 幼児教育 子育て Hiroshi Hayashi 林浩司
 BW はやし浩司 きらかん 吉良観光ホテル 吉良温泉 愛知県吉良温泉)


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