●乳幼児期のマターナルデプリベーション
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子育て最前線の育児論byはやし浩司 12月 8日号
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【1】(子育てのこと)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
休みます。
【2】(特集)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
【基本的信頼関係】(前回よりのつづきです)
+++++++++++++++++
以前書いた原稿を、1作、
添付します。
内容がダブりますが、お許しください。
+++++++++++++++++
【基本的信頼関係】
信頼関係は、母子の間で、はぐくまれる。
絶対的な(さらけ出し)と、絶対的な(受け入れ)。「絶対的」というのは、
「疑いをいだかない」という意味である。こうした相互の関係が、その子ども
(人)の、信頼関係の基本となる。
つまり子ども(人)は、母親との間でつくりあげた信頼関係を基本に、その
関係を、先生、友人、さらには夫(妻)、子どもへと応用していくことができ
る。だから母親との間で構築される信頼関係を、「基本的信頼関係」と呼ぶ。
が、母子との間で、信頼関係を結ぶことに失敗した子どもは、その反対に、
「基本的不信関係」に陥(おちい)る。いわゆる「不安」を基底とした、生き
ザマになる。そしてこうして生まれた不安を、「基底不安」という。
こういう状態になると、その子ども(人)は、何をしても不安だという状態
になる。遊んでいても、仕事をしていても、その不安感から逃れることができ
ない。その不安感は、生活のあらゆる部分に、およぶ。おとなになり、結婚し
てからも、消えることはない。夫婦関係はもちろんのこと、親子関係において
も、である。
こうして、たとえば母親について言うなら、いわゆる不安先行型、心配先行
型の子育てをしやすくなる。
●基底不安
親が子育てをしてい不安になるのは、親の勝手だが、ほとんどのばあい、親
は、その不安や心配を、そのまま子どもにぶつけてしまう。
しかし問題は、そのぶつけることというより、親にその自覚がないことであ
る。ほとんどの親は、不安であることや、心配していることを、「ふつうのこ
と」と思い、そして不安や心配になっても、「それは子どものため」と思いこ
む。
が、本当の問題は、そのつぎに起こる。
こうした母子との間で、基本的信頼関係の構築に失敗した子どももまた、不
安を基底とした生きザマをするようになるということ。
こうして親から子どもへと、生きザマが連鎖するが、こうした連鎖を、「世
代連鎖」、あるいは「世代伝播(でんぱ)」という。
ある中学生(女子)は、夏休み前に、夏休み後の、実力テストの心配をして
いた。私は、「そんな先のことは心配しなくていい」と言ったが、もちろんそ
う言ったところで、その中学生には、説得力はない。その中学生にしてみれば、
そうして心配するのは、ごく自然なことなのである。
(はやし浩司 基本的信頼関係 基底不安)
●人間関係を結べない子ども(人)
人間関係をうまく結ぶことができない子どもは、自分の孤独を解消し、自分に
とって居心地のよい世界をつくろうとする。その結果、大きく分けて、つぎの
四つのタイプに分かれる。
(1)攻撃型……威圧や暴力によって、相手を威嚇(いかく)したりして、自
分にとって、居心地のよい環境をつくろうとする。
(2)依存型……ベタベタと甘えることによって、自分にとって居心地のよい
環境をつくろうとする。
(3)服従型……だれかに徹底的に服従することによって、自分にとって居心
地のよい環境をつくろうとする。
(4)同情型……か弱い自分を演ずることにより、みなから「どうしたの?」
「だいじょうぶ?」と同情してもらうことにより、自分にとって、居心地のよ
い世界をつくろうとする。
それぞれに(プラス型)と、(マイナス型)がある。たとえば攻撃型の子ども
も、プラス型(他人に対して攻撃的になる)と、マイナス型(自虐的に勉強し
たり、運動をしたりするなど、自分に対して攻撃的になる)に分けられる。
スポーツ選手の中にも、子どものころ、自虐的な練習をして、有名になった
人は多い。このタイプの人は、「スポーツを楽しむ」というより、メチャメチ
ャな練習をすることで、自分にとって、居心地のよい世界をつくろうとしたと
考えられる。
●子どもの仮面
人間関係をうまく結べない子ども(人)は、(孤立)と、(密着)を繰りか
えすようになる。
孤独だから、集団の中に入っていく。しかしその集団の中では、キズつきや
すく、また相手をキズつけるのではないかと、不安になる。自分をさらけ出す
ことが、できない。できないから、相手が、自分をさらけ出してくると、それ
を受入れることができない。
たとえば自分にとって、いやなことがあっても、はっきりと、「イヤ!」と
言うことができない。一方、だれかが冗談で、その子ども(人)に、「バカ!」
と言ったとする。しかしそういう言葉を、冗談と、割り切ることができない。
そこでこのタイプの子どもは、集団の中で、仮面をかぶるようになる。いわ
ゆる、いい子ぶるようになる。これを心理学では、「防衛機制」という。自分
の心がキズつくのを防衛するために、独特の心理状態になったり、独特の行動
を繰りかえすことをいう。
子ども(人)は、一度、こういう仮面をかぶるようになると、「何を考えて
いるかわからない子ども」という印象を与えるようになる。さらに進行すると、
心の状態と、表情が、遊離するようになる。うれしいはずなのに、むずかしい
顔をしてみせたり、悲しいはずなのに、ニンマリと笑ってみせるなど。
この状態になると、一人の子ども(人)の中に、二重人格性が見られるよう
になることもある。さらに何か、大きなショックが加わると、人格障害に進む
こともある。
●すなおな子ども論
従順で、おとなしく、親や先生の言うことを、ハイハイと聞く子どものこと
を、「すなおな子ども」とは、言わない。すなおな子どもというときには、二
つの意味がある。
一つは情意(心)と表情が一致しているということ。うれしいときには、うれ
しそうな顔をする。いやなときはいやな顔をする。
たとえば先生が、プリントを一枚渡したとする。そのとき、「またプリント!
いやだな」と言う子どもがいる。一見教えにくい子どもに見えるかもしれない
が、このタイプの子どものほうが「裏」がなく、実際には教えやすい。
いやなのに、ニッコリ笑って、黙って従う子どもは、その分、どこかで心をゆ
がめやすく、またその分、心がつかみにくい。つまり教えにくい。
もう一つの意味は、「ゆがみ」がないということ。ひがむ、いじける、ひね
くれる、すねる、すさむ、つっぱる、ふてくされる、こもる、ぐずるなど。
ゆがみというのは、その子どもであって、その子どもでない部分をいう。たと
えば分離不安の子どもがいる。親の姿が見えるときには、静かに落ちついてい
るが、親の姿が見えなくなったとたん、ギャーとものすごい声をはりあげて、
親のあとを追いかけたりする。その追いかけている様子を観察すると、その子
どもは子ども自身の意思というよりは、もっと別の作用によって動かされてい
るのがわかる。それがここでいう「その子どもであって、その子どもでない部
分」ということになる。
仮面をかぶる子どもは、ここでいうすなおな子どもの、反対側の位置にいる
子どもと考えるとわかりやすい。
●仮面をかぶる子どもたち
たとえばここでいう服従型の子どもは、相手に取り入ることで、自分にとっ
て、居心地のよい世界をつくろうとする。
先生が、「スリッパを並べてください」と声をかけると、静かにそれに従っ
たりする。あるいは、いつも、どうすれば、自分がいい子に見られるかを、気
にする。行動も、また先生との受け答えのしかたも、優等生的、あるいは模範
的であることが多い。
先生「道路に、サイフが落ちていました。どうしますか?」
子ども「警察に届けます」
先生「ブランコを取りあって、二人の子どもがけんかをしています。どうしま
すか?」
子ども「そういうことをしては、ダメと言ってあげます」と。
こうした仮面は、服従型のみならず、攻撃型の子どもにも見られる。
先生「君、今度のスポーツ大会に選手で、出てみないか?」
子ども「うっセーナア。オレは、そんなのに、興味ネーヨ」
先生「しかし、君は、そのスポーツが得意なんだろ?」
子ども「やったこと、ネーヨ」と。
こうした仮面性は、依存型、同情型にも見られる。
●心の葛藤
基本的信頼関係の構築に失敗した子ども(人)は、集団の中で、(孤立)と
(密着)を繰りかえすようになる。
それをうまく説明したのが、「二匹のヤマアラシ」(ショーペンハウエル)
である。
「寒い夜だった。二匹のヤマアラシは、たがいに寄り添って、体を温めよう
とした。しかしくっつきすぎると、たがいのハリで相手の体を傷つけてしまう。
しかし離れすぎると、体が温まらない。そこで二匹のヤマアラシは、一晩中、
つかず離れずを繰りかえしながら、ほどよいところで、体を温めあった」と。
しかし孤立するにせよ、密着するにせよ、それから発生するストレス(生理
的ひずみ)は、相当なものである。それ自体が、子ども(人)の心を、ゆがめ
ることがある。
一時的には、多くは精神的、肉体的な緊張が引き金になることが多い。たとえ
ば急激に緊張すると、副腎髄質からアドレナリンの分泌が始まり、その結果心
臓がドキドキし、さらにその結果、脳や筋肉に大量の酸素が送り込まれ、脳や
筋肉の活動が活発になる。
が、そのストレスが慢性的につづくと、副腎機能が亢進するばかりではなく、
「食欲不振や性機能の低下、免疫機能の低下、低体温、胃潰瘍などの種々の反
応が引き起こされる」(新井康允氏)という。
こうしたストレスが日常的に重なると、脳の機能そのものが変調するというの
だ。たとえば子どものおねしょがある。このおねしょについても、最近では、
大脳生理学の分野で、脳の機能変調説が常識になっている。つまり子どもの意
思ではどうにもならない問題という前提で考える。
こうした一連の心理的、身体的反応を、神経症と呼ぶ。慢性的なストレス状
態は、さまざまな神経症による症状を、引き起こす。
●神経症から、心の問題
ここにも書いたように、心理的反応が、心身の状態に影響し、それが身体的な
反応として現れた状態を、「神経症」という。
子どもの神経症、つまり、心理的な要因が原因で、精神的、身体的な面で起こ
る機能的障害)は、まさに千差万別。「どこかおかしい」と感じたら、この神
経症を疑ってみる。
(1)精神面の神経症…恐怖症(ものごとを恐れる)、強迫症状(周囲の者に
は理解できないものに対して、おののく、こわがる)、不安症状(理由もなく
悩む)など。
(2)身体面の神経症……夜驚症(夜中に狂人的な声をはりあげて混乱状態に
なる)、夜尿症、頻尿症(頻繁にトイレへ行く)、睡眠障害(寝ない、早朝覚
醒、寝言)、嘔吐、下痢、便秘、発熱、喘息、頭痛、腹痛、チック、遺尿(そ
の意識がないまま漏らす)など。一般的には精神面での神経症に先立って、身
体面での神経症が起こることが多く、身体面での神経症を黄信号ととらえて警
戒する。
(3)行動面の神経症……神経症が慢性化したりすると、さまざまな不適応症
状となって行動面に現れてくる。不登校もその一つということになるが、その
前の段階として、無気力、怠学、無関心、無感動、食欲不振、引きこもり、拒
食などが断続的に起こるようになる。
●たとえば不登校
こうした子どもの心理的過反応の中で、とくに問題となっているのが、不登校
の問題である。
しかし同じ不登校(school refusal)といっても、症状や様子はさまざま(※)。
私の二男はひどい花粉症で、睡眠不足からか、毎年春先になると不登校を繰り
返した。
が、その中でも恐怖症の症状を見せるケースを、「学校恐怖症」、行為障害に
近い不登校を
「怠学(truancy)」といって区別している。これらの不登校は、症状と経過か
ら、三つの段階に分けて考える(A・M・ジョンソン)。心気的時期、登校時
パニック時期、それに自閉的時期。これに回復期を加え、もう少しわかりやす
くしたのが、つぎである。
(1)前兆期……登校時刻の前になると、頭痛、腹痛、脚痛、朝寝坊、寝ぼけ、
疲れ、倦怠感、吐き気、気分の悪さなどの身体的不調を訴える。症状は午前中
に重く、午後に軽快し、夜になると、「明日は学校へ行くよ」などと、明るい
声で答えたりする。これを症状の日内変動という。
学校へ行きたがらない理由を聞くと、「A君がいじめる」などと言ったりする。
そこでA君を排除すると、今度は「B君がいじめる」と言いだしたりする。理
由となる原因(ターゲット)が、そのつど移動するのが特徴。
(3)パニック期……攻撃的に登校を拒否する。親が無理に車に乗せようとし
たりすると、狂ったように暴れ、それに抵抗する。が、親があきらめ、「もう
今日は休んでもいい」などと言うと、一転、症状が消滅する。
ある母親は、こう言った。「学校から帰ってくる車の中では、鼻歌まで歌って
いました」と。たいていの親はそのあまりの変わりように驚いて、「これが同
じ子どもか」と思うことが多い。
(4)自閉期……自分のカラにこもる。特定の仲間とは遊んだりする。暴力、
暴言などの攻撃的態度は減り、見た目には穏やかな状態になり、落ちつく。た
だ心の緊張感は残り、どこかピリピリした感じは続く。そのため親の不用意な
言葉などで、突発的に激怒したり、暴れたりすることはある(感情障害)。
この段階で回避性障害(人と会うことを避ける)、不安障害(非現実的な不安
感をもつ。おののく)の症状を示すこともある。が、ふだんの生活を見る限り、
ごくふつうの子どもといった感じがするため、たいていの親は、自分の子ども
をどうとらえたらよいのか、わからなくなってしまうことが多い。こうした状
態が、数か月から数年続く。
(4)回復期(この回復期は、筆者が加筆した)……外の世界と接触をもつよ
うになり、少しずつ友人との交際を始めたり、外へ遊びに行くようになる。数
日学校行っては休むというようなことを、断続的に繰り返したあと、やがて登
校できるようになる。日に一~二時間、週に一日~二日、月に一週~二週登校
できるようになり、序々にその期間が長くなる。
●前兆をいかにとらえるか
この不登校について言えば、要はいかに(1)の前兆期をとらえ、この段階
で適切な措置をとるかということ。たいていの親はひととおり病院通いをした
あと、「気のせい」と片づけて、無理をする。この無理が症状を悪化させ、(2)
のパニック期を招く。
この段階でも、もし親が無理をせず、「そうね、誰だって学校へ行きたくない
ときもあるわよ」と言えば、その後の症状は軽くすむ。一般にこの恐怖症も含
めて、子どもの心の問題は、今の状態をより悪くしないことだけを考える。な
おそうと無理をすればするほど、症状はこじれる。悪化する。
Hiroshi Hayashi++++++March.2010+++++++++はやし浩司
(※4)ホスピタリズム
子どもの依存と、愛着は分けて考える。中には、この2つを混同している人
がいる。つまりベタベタと親に甘えることを、依存。全幅に親を信頼し、心を
開くのを、愛着という。子どもが依存をもつのは問題だが、愛着をもつのは、
大切なこと。
今、親にさえ心を開かない、あるいは開けない子どもがふえている。簡単な
診断方法としては、抱いてみればよい。心を開いている子どもは、親に抱かれ
たとき、完全に力を抜いて、体そのものをべったりと、すりよせてくる。心を
開いていない子どもや、開けない子どもは、親に抱かれたとき、体をこわばら
せてしまう。抱く側の印象としては、何かしら丸太を抱いているような感じに
なる。
その抱かれない子どもが、『臨床育児・保育研究会』(代表・汐見稔幸氏)
の実態調査によると、4分の1もいるという。原因はいろいろ考えられるが、
報告によれば、「抱っこバンドだ」という。
「全国各地の保育士が、預かった〇歳児を抱っこする際、以前はほとんど感じ
なかった『拒否、抵抗する』などの違和感のある赤ちゃんが、4分の1に及ぶ
ことが、『臨床育児・保育研究会』(代表・汐見稔幸氏)の実態調査で判明し
た」(中日新聞)と。
報告によれば、抱っこした赤ちゃんの「様態」について、「手や足を先生の体
に回さない」が33%いたのをはじめ、「拒否、抵抗する」「体を動かし、落
ちつかない」などの反応が2割前後見られ、調査した六項目の平均で25%に
達したという。また保育士らの実感として、「体が固い」「抱いてもフィット
しない」などの違和感も、平均で20%の赤ちゃんから報告されたという。さ
らにこうした傾向の強い赤ちゃんをもつ母親から聞き取り調査をしたところ、
「育児から解放されたい」「抱っこがつらい」「どうして泣くのか不安」など
の意識が強いことがわかったという。また抱かれない子どもを調べたところ、
その母親が、この数年、流行している「抱っこバンド」を使っているケースが、
東京都内ではとくに目立ったという。
報告した同研究会の松永静子氏(東京中野区)は、「仕事を通じ、(抱かれ
ない子どもが)2~3割はいると実感してきたが、(抱かれない子どもがふえ
たのは)、新生児のスキンシップ不足や、首も座らない赤ちゃんに抱っこバン
ドを使うことに原因があるのでは」と話している。
子どもは、生後7、8か月ころから、人見知りする時期に入る。一種の恐怖
反応といわれているが、この時期を通して、親への愛着を深める。が、この時
期、親から子への愛着が不足すると、以後、子どもの情緒はきわめて不安定に
なる。ホスピタリズムという現象を指摘する学者もいる。いわゆる親の愛情が
不足していることが原因で、独得の症状を示すことをいう。だれにも愛想がよ
くなる、表情が乏しくなる、知恵の発達が遅れ気味になる、など。貧乏ゆすり
などの、独得の症状を示すこともあるという。
一方、冒頭にも書いたように、依存は、この愛着とは区別して考える。依存
性があるから、愛着性があるということにはならない。愛着性があるから、依
存性があるということにはならない。が、この二つは、よく混同される。そし
て混同したまま、「子どもが親に依存するのは、大切なことだ」と言う人がい
る。
しかし子どもが親に依存性をもつことは、好ましいことではない。依存性が
強ければ強いほど、自我の発達が遅れる。人格の「核」形成も遅れる。幼児性
(年齢に比して、幼い感じがする)、退行性(目標や規則、約束が守れない)
などの症状が出てくる。もともと日本人は、親子でも、たがいの依存性がきわ
めて強い民族である。依存しあうことが、理想の親子と考えている人もいる。
たとえば昔から、日本では、親にベタベタ甘える子どもイコール、かわいい子
イコール、よい子と考える。そして独立心が旺盛で、何でも自立して行動する
子どもを、かわいげのない「鬼ッ子」として嫌う。
こうしたどこかゆがんだ子育て観が、日本独特の子育ての柱になっている。
言いかえると、よく「日本人は依存型民族だ」と言われるが、そういう民族性
の原因は、こうした独特の子育て観にあるとみてよい。もちろんそれがすべて
悪いと言うのではない。依存型社会は、ある意味で温もりのある社会である。
「もちつもたれつの社会」であり、「互いになれあいの社会」でもある。しか
しそれは同時に、世界の常識ではないことも事実で、この日本を一歩外へ出る
と。こうした依存性は、まったく通用しない。それこそ生き馬の目を抜くよう
な世界が待っている。そういうことも心のどこかで考えながら、日本人も自分
たちの子育てを組み立てる必要があるのではないか。あくまでも一つの意見に
すぎないが……。
(はやし浩司 愛着 依存 抱かれない子供 抱かれない子ども ホスピタリ
ズム 抱っこバンド 子どもの依存性 子供の依存性 はやし浩司
Hiroshi Hayashi++++Nov. 2010++++++はやし浩司・林浩司
(※5)子どもを愛せない母親
●マターナル・デプリベイション(Maternal Deprivation)(母性愛欠乏)
+++++++++++++++++++
乳幼児期の母子関係の不全。
それが後々、さまざまな症状の遠因となることがある。
とくに母子関係の欠如を、「マターナル・デプリベイション」
という。
子どもというのは、心豊かな家庭環境、とくに心豊かな母子関係の
中で、心をはぐくむ。
が、母親側に何かの問題があり、本来あるべき母子関係が
築けなくなることがある。
育児拒否、ネグレクト、育児放棄、母性愛の欠落、虐待、暴行など。
また自分の子どもであっても、子どもを愛せない母親は、
8~10%いる。
こうした母親側の育児姿勢が日常化すると、子どもには独特の
症状が現れるようになる。
ホスピタリズム(施設病)に似た症状を示すと説く学者もいる(後述)。
その第一が、他者との共鳴性の欠落。
わかりやすく言えば、心の温もりを失い、心の冷たい子どもになる。
他人の心の痛みが理解できない。
相手の立場に立って、ものを考えることができない、など。
そのため年齢を重ねるについれて、自分より弱い者をいじめたり、
自分より弱い立場にある動物を、虐待したりするようになる。
さらに成人してから、心の病気となって発現することもある。
ネットを使って、そうではないかと思われる症状をもった人を、
参考までに拾ってみた(2チャンネルより)。
もちろんここにあげた人たちの症例が、マターナル・デプリベイション
が原因というわけではない。
その疑いがあると、私が思うだけの話である。
++++++++++++++++++
●心の葛藤
母子関係に悩み、葛藤している人は多い。
「親子だから……」「母親だから……」という『ダカラ論』ほど、あてになら
ないものはない。
またそういう前提で、この問題を考えてはいけない。
現在、人知れず、母親との関係に苦しんでいる人は多い。
++++++以下、2チャンネル投稿記事より転載+++++++
●症状(1)
【主訴、症状】自分が無価値、無意味だと思う。
漠然と怖い。
超泣く。所構わず突発的に。
睡眠障害(眠剤入れても3時間で目覚める)
母親が死ぬほど怖いし憎い(毒親で現在距離置き中)
【その他質問、追加事項】
抑うつ(っぽいと言われましたが病名はまだ)、過食嘔吐です。
大学に入るまでずっと抑圧された優等生でいざるをえなくて、それでも母親に否定され続
けた。
反抗期も持てなく、完璧でないと思っている。
結婚したいヒトがいると言ったら、「これ以上親を不幸にするな」と言われ、
そこらへんくらいから将来を考えると不安になる(ネガティブな未来ばかりを想像して)
ようになり 年末に仕事を失敗してから、仕事を拠り所にしていたことだろうことから(カ
ウンセラーの言葉)自分の存在が0になったと思い全く身動きが取れなくなりました。
●症状(2)
【主訴、症状】引き篭もり。対人恐怖症。大声や物音に敏感で、緊張・恐怖・混乱・不安等を感じます。電話に出たり一人で外出できません。
母親からのモラハラと肉体的暴力、学校での虐め、母親の再婚先での連れ子虐待等から立
ち直れません。フラッシュバックがよく起きます。
常に焦燥感があります。落ち着きや集中力や記憶力がなく頻繁に苛々しやすい。無心で喋
り続ける妙な癖のようなものがある。
「死にたい」というよりも、寧ろ母親が憎くて殺したいと思っています。母親が死ねば解
放されると信じていたりして自分でもマズイと思ってます。
普通の悪夢もありますが、憎い人間を殺す夢を見ることが多いです。
中学生の頃より酷くはないですが、フラッシュバックで気持ちが悪くなり、泣き喚いたり
ヒスっぽい奇声を発することもあります。これはごく稀です。
++++++以上、2チャンネル投稿記事より転載(原文のまま)+++++
●母子関係の重要性
乳幼児期における母子関係の重要性については、何度も書いてきた。
その子どもの基本は、この時期に構築される。
基本的信頼関係もそのひとつ。
基本的信頼関係は、その後の、その人の人間関係に大きな影響を与える。
わかりやすく言えば、基本的信頼関係がしっかりと構築できた子ども(人)は、他人に対
して、心が開くことができる。
そうでない子ども(人)は、心が開けなくなる。
(詳しくは、「はやし浩司 基本的信頼関係」で検索。)
が、それだけではない。この時期をのがすと、人間性そのものが欠落した子どもになる。
インドで見つかった、タマラ、アマラの2人のオオカミ少女を、例にあげるまでもない。
これについても、何度も書いてきた。
(詳しくは、「はやし浩司 野生児」で検索。)
さらに最近の研究によれば、人間にも鳥類に似た、刷り込みがあることがわかってきた。
卵からふ化したあと、すぐ二足歩行する鳥類は、最初に見たもの、耳にしたものを、親と
思いこむ習性がある。
それを刷り込み(インプリンティング)という。
人間にも、同じような刷り込みがあるという。
0歳から生後7か月くらいまでの間の期間をいう。
この期間を、発達心理学の世界では、「敏感期」と呼んでいる。
が、不幸にして不幸な家庭に育った子どもは、こうした一連の母子関係の構築に失敗す
る。
●ホスピタリズム(施設病)
生後直後から、何らかの理由で母親の手元を離れ、施設などで育てられた子どもには、
独特の症状が現れることは、よく知られている。
こうした一連の症候群をまとめて、「ホスピタリズム(施設病)」という。
(ただしこの言葉は、私が幼児教育の世界に入った、40年前にはすでにあった。
施設、たとえば保育園などに入ったからといって、みながみな、施設病になるわけではな
い。
当時と現在とでは、保育に対する考え方も大きく変わり、また乳児への接し方も、変わっ
てきた。
ホスピタリズムについても、そういうことがないよう、細心の注意が払われるようになっ
ている。)
ホスピタリズムの具体的な症状としては、「感情の動きが平坦になる、心が冷たい、知
育の発達が遅れがちになる、貧乏ゆすりなどのクセがつきやすい」(長畑正道氏)など。
ほかにも、動作がのろい(緩慢行動)、感情表出が不安定、表情が乏しいなどの症状を示
す。
これについては、以前、どこかの学校でもたれたシンポジウム用に書いた原稿があるので、
それを末尾に添付しておく。
マターナル・デプリベイションでも、似たような症状を示す。
が、もっとも警戒すべき症状としては、人間性の喪失。
冒頭にも書いたように、他者との共鳴性の欠落が第一にあげられる。
わかりやすく言えば、心の温もりを失い、心の冷たい子どもになる。
他人の心の痛みが理解できない。
相手の立場に立って、ものを考えることができない、など。
そのため年齢を重ねるについれて、他人をいじめたり、自分より弱い立場にある人や動物
を、虐待したりするようになる。
さらに最近の研究によれば、こうした人間性の獲得にも、「臨界期」があることがわか
ってきた。
先のオオカミ少女にしても、その後インド政府によって、手厚く保護され、教育をほどこ
されたが、最後まで、人間らしい心を取り戻すことはなかったという。
つまり臨界期を過ぎてしまうと、それ以後、(取り返し)が、たいへん難しいということ。
このことからも乳幼児期における母子関係が、いかに重要なものであるかがわかる。
●いじめの問題
このマターナル・デプリベイションとは、直接関係ないかもしれないが、(いじめ)に
ついて、少し書いてみる。
先に、「年齢を重ねるについれて、他人をいじめたり、自分より弱い立場にある人や動
物を、虐待したりするようになる」と書いた。
このことは、たとえば年中児~年長児(4~6歳児)に、ぬいぐるみを見せてみるとわか
る。
心の温もりがじゅうぶん育っている子どもは、そうしたぬいぐるみを見せると、どこかうっとりとした表情を示す。
全体の7~8割が、そうである。
が、その一方で、ぬいぐるみを見せても反応しないか、反対にキックを入れたりする子ど
ももいる。
(キックするからといって、心の冷たい子どもということには、ならない。誤解のないよ
うに!)
しかしこの時期までに、基本的な母性愛、父性愛の基本形は決まると考えてよい。
この時期に、おだやかでやさしい心をもった子どもは、その後も、そうした温もりを維持
することができる。
もちろんこれだけで、(いじめの問題)がすべて説明できるわけではない。
またこの問題を解決すれば、(いじめの問題)がなくなるわけではない。
しかし(いじめの問題)を考えるときには、こうした問題もあるということを、頭に入れ
ておく必要がある。
その子どもにすべての責任をかぶせるのは、かえって危険なことでもある。
反対に、たとえば極端なケースかもしれないが、溺愛児とか過保護児と呼ばれている子
どもがいる。
このタイプの子どもは、よい意味において、母親の愛情をたっぷりと受けているから、い
つも満足げでおっとりした様子を示す。
人格の核(コア)形成が遅れるというマイナス面はあるが、こと(いじめ)ということに
関していえば、いじめの対象になることはあっても、いじめる側に回ることはまず、ない。
【次回へつづきます】
【3】(近ごろ、あれこれ)□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
休みます。
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.みなさん、次号で、またお会いしましょう!
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