●天皇の敬称問題
●天皇の敬称問題
産経新聞は、天皇の敬称問題について、以下のように報じている。(2011年1月12日)。
教育の世界では、たいへんデリケートな問題だから、全文、そのまま掲載させてもらう。
++++++++以下、産経新聞、2011年1月12日++++++++++
天皇陛下に敬称を付けず“呼び捨て”の記述が文部科学省の教科書検定をパスし、今年4月から小学校6年生の教科書として供給・使用されることが10日わかった。巻末の用語の索引に「天皇」を盛り込まなかった教科書もあった。天皇、皇后両陛下はじめ「皇室軽視」の傾向はこれまでも教科書でみられたが、学習指導要領では「天皇への理解と敬愛の念を深める」よう求めている。専門家からは「指導要領の趣旨が教科書に十分浸透していない」との批判の声が上がる。
敬称がない表記があったのは、小6社会の教科書。文科省の検定を通過した4出版社のうち教育出版と日本文教出版、光村図書の教科書が、陛下ご自身が写った写真を説明する際に「文化勲章を授与する天皇」「インドの首相をむかえた天皇」と表記していた。
2つの教科書を出す日本文教出版は、別の教科書でも天皇、皇后両陛下の写真説明を「福祉施設を訪問される天皇と皇后」と表記。「される」と敬語はあるが敬称はなかった。
「天皇」という地位自体の説明は、憲法や法律、指導要領でも敬称を付けずにただ「天皇」と記述し、新聞や出版物も同様。しかし、陛下ご自身の行動や表情などを伝える際には必ず敬称をつけるのが一般的。
しかし、教科書は陛下に敬称がなく、一方で一般国民や外国人らの名前には「被爆体験を持つ○○さん」「緒方貞子さん」(元国連難民高等弁務官)などと敬称があった。
東京書籍は“呼び捨て”はないが、教科書の重要語を並べた巻末索引に「天皇」はなし。一方で「内閣総理大臣」「ユニバーサルデザイン」などはあった。
過去の小中高の教科書でも「仁徳天皇陵」の記載が括弧書きや「大仙陵古墳」「大山古墳」「仁徳陵」として検定をパス。「皇太子明仁」の記載が「明仁皇太子」となったり、皇后陛下を「正田美智子」とした記載がパスしたことがあった。
皇室や教科書問題に詳しい高崎経済大学の八木秀次教授は「憲法上の『天皇の地位』は、重い。国民の敬愛を受ける存在で、教科書では敬称を付けるべきだ」と話すが、文科省は「教科書記述の内容に誤りがあるわけではない」とする。
++++++++以下、産経新聞、2011年1月12日++++++++++
●私も……
私も子どものころ、「天皇」と言っただけで、父に殴られた経験がある。
父はそのとき、こう言った。「陛下と言え!」と。
私が小学3年生のときのことだった。
で、父はそのあと学校へ出向き、担任の教師たちに、「貴様らは学校で、何を教えているか」と怒鳴り散らしたという。
天皇のために命を捧げた父にしてみれば、当然の行為だった。
しかし天皇は、「天皇」でよいのではないか。
私も、天皇にかぎらず、客観的に事実を書くときは、いっさい敬語を使わないようにしている。
また「天皇」と書いたことによって、呼び捨てにしているという意識はない。
いわんや軽んじている意識はない。
もちろん産経新聞にもあるように、『陛下ご自身の行動や表情などを伝える際には必ず敬称をつけるのが一般的』というのには、異論はない。
当然のことである。
それがわからないときは、たとえば日本の国政を論ずるとき、「内閣総理大臣」と書くべきなのか、それとも「内閣総理大臣閣下」と書くべきなのか、それを考えてみればよい。
こういうとき「閣下」という敬称をつける人は、いないはず。
もっと卑近な例では、「浜松市長」と書くことはあっても、「浜松市長様」と書く人はいない。
また敬称をつけたからといって、「敬愛の念」を示したことにはならない。
今では、学校の先生に対して、「先生」という敬称をつけて、先生を呼ぶ生徒はいない。
呼び捨てが一般化している。
私も幼児に、「はやし!」「はやし!」と呼ばれている。
親たちの中には気にする人もいるようだが、私は気にしない。
私も、子どもたちを特別なばあいを除き、呼び捨てにしている。
で、この問題は、どこかのだれかが決めるようなことではない。
その向こうに、(大きな流れ)がある。
いくら教科書にそう書いてあるからといって、子どもたちのもつ(流れ)を変えることはできない。
つぎの世代が、時間をかけて、ゆっくりと解決していけばよい。
ただ私の印象としては、つまり現在の(流れ)を見る限り、それがよいことなのか、悪いことなのかという判断はさておき、こうした敬称は消える運命にあると思う。
八木秀次教授は「憲法上の『天皇の地位』は、重い。国民の敬愛を受ける存在で、教科書では敬称を付けるべきだ」と話している(同紙)。
そういう意見もあるだろう。
が、文科省は「教科書記述の内容に誤りがあるわけではない」としている。
文科省の立場を支持したい。
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Hiroshi Hayashi+++++++JAN. 2011++++++はやし浩司・林浩司
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