Education in Front-Line and Essays by Hiroshi Hayashi (はやし浩司)

(Mr.) Hiroshi Hayashi, a professional writer who has written more than 30 his own books on Education, Chinese Medical science and Religion in Japan. My web-site is: http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/ Please don't hesitate to visit my web-site, which is always welcome!!

Monday, March 24, 2008

*Maternal Infant Bond

●スキンシップ

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とんでもない育児論が、
堂々とまかり通っている!

赤ちゃんを抱くと、抱き癖がつくから、
抱いてはダメだ、と!

さらに「抱き癖がつくと、子どもに
依存性がつく」と教える育児書もある。

「抱き癖」と「依存性」は、まったく
別のもの。

そんな区別もつかない人が、
空想だけでモノを書いている?

????

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 母子間のスキンシップが、いかに重要なものであるかは、今さら、言うまでもない。このスキンシップが、子どもの豊かな心を育てる基礎になる。

 が、中に、「抱き癖がつくから、ダメ」「依存性がつくから、ダメ」というような、「?」な理由により、子どもを抱かない親がいる。とんでもない誤解である。

 スキンシップには、未解明の不思議な力がある。魔法のパワーと言ってもよい。「未解明」というのは、経験的にはわかっているが、科学的には、まだ証明されていないという意味である。そのことは、反対に、そのスキンシップが不足している子どもを見れば、わかる。

 もう20年ほど前になるだろうか。大阪に住む小児科医の柳沢医師が、「サイレント・ベイビー」という言葉を使った。

 (1)笑わない、(2)泣かない、(3)目を合わせない、(4)赤ちゃんらしさがない子どものことを、サイレント・ベイビーという(「心理学用語辞典」かんき出版)。

 幼児教育の世界にも、表情のない子どもが、目立ち始めている。喜怒哀楽という「情」の表現ができない子どもである。特徴としては、顔に膜がかかったようになる。中には能面のように無表情な子どもさえいる。

 軽重もあるが、私の印象では、約20%前後の子どもが、そうではないか。

 印象に残っている女児に、Sさん(年長児)がいた。Sさんは、いつも、ここでいう能面のように無表情な子どもだった。うれしいときも、悲しいときも、表情は、そのまま。そのままというより、こわばったまま。涙がスーッと流れているのを見てはじめて、私はSさんが、泣いていることがわかったこともある。

 Sさんの両親に会って話を聞くと、こう教えてくれた。

 「うちは、水商売(市内でバーを経営)でしょ。だから、生まれたときからすぐ、保育園へ預けました。夜も相手をしてやることができませんでした」と。

 わかりやすく言えば、スキンシップらしいスキンシップなしで、Sさんは、育てられたということになる。

 子ども、とくに乳児は、泣くことによって、自分の意思を表現する。その泣くことすらしないとしたら、乳児は、どうやって、自分の意思を表現することができるというのか。それだけではない。

 母子間の濃密なスキンシップが、乳児の免疫機能を高めることも、最近の研究でわかってきた。これを「免疫応答」というが、それによって、乳児の血中の、TおよびBリンパ球、大食細胞を活性化させるという。 

さらに乳児のみならず、母親にも大きな影響を与えることがわかってきた。たとえば乳児が、母親に甘えたり、泣いたりすることによって、母親の乳を出すホルモン(プロラクチンなど)が刺激され、より乳が出るようになるという。

 こうした一連の相互作用を、「母子相互作用(Maternal infant bond)」という。

 まだ、ある。

 私も経験しているが、子どもを抱いているとき、しばらくすると、子どもの呼吸と心拍数が、自分のそれと同調(シンクロナイズ)することがある。呼吸のほうは無意識に親のほうが、子どもに合わせているのかもしれないが、心拍数となると、そうはいかない。何か別の作用が働いていると考えるのが、妥当である。

が、そこまで極端ではなくても、母子の間では、体や心の動きが、同調するという現象が、よく見られる。母子が、同じように体を動かしたり、同じように思ったりする。たとえば母親が体を丸めて、右を向いて眠っていたりすると、乳児のほうも、体を丸めて、右を向いて眠っていたりする。こうした現象を、「体動同期現象」という言葉を使って説明する学者もいる。

 こうした人間が、生物としてもっている性質というのは、あるべき関係の中で、あるべきように育てたとき、子どもの中から、引き出される。たとえば赤ちゃんが泣いたとする。するとそのとき、そのかわいさに心を動かされ、母親は、赤ちゃんを抱いたりする。それがスキンシップである。

 もちろん抱き癖の問題もある。しかしそういうときは、こう覚えておくとよい。『求めてきたときが、与えどき』『求めてきたら、すかさず応ずる』と。親のほうからベタベタとするのはよくないが(※)、しかし子どものほうから求めてきたら、すかさず、それに応じてやる。間を置かない。そしてぐいと力を入れて抱く。

 しばらくすると、子どものほうから体を離すしぐさを見せる。そうしたら、水の中に小魚を放す要領で、そっと体を離す。

 なお母乳を与えるという行為は、そのスキンシップの第一と考えてよい。いろいろと事情がある母親もいるだろうが、できるだけ母乳で、子どもは育てる。それが子どもの豊かな心をはぐくむ。
(はやし浩司 抱き癖 抱きグセ サイレント・ベイビー 子どもの表情 無表情な子供 母子相互作用 免疫応答 プロラクチン はやし浩司 体動同調 子供の抱き方 スキンシップ)

【補記※】

 母親のほうが、自分の情緒不安を解消する手だてとして、子どもにベタベタするケースもある。でき愛ママと言われる母親が、よく、そうする。そういうのは、ここでいうスキンシップとは、分けて考える。