Whaling
●調査捕鯨?(Research Whaling?)
The Japanese government explains that whales eat too much fish and mollusk and it is damaging Japanese fishing in the oceans. But is this true?
日本政府というより、日本側の言い分は、こうだ。
「クジラは、食物連鎖の頂点にいる。そのクジラがふえすぎると、海洋生物全般に影響を与える。日本は、その調査のために、捕鯨をしている」と。おおまかに言えば、そういうことらしい。
しかしクジラが食物連鎖の頂点にいるというのは、まっかなウソ。クジラが食用としているのは、マグロでもカジキでもない。クジラにもいろいろな種類がいるが、南極に住むクジラが主食としているのは、ナンキョクオキアミ。マッコウクジラは肉食もするが、深海の軟体動物。まず、内閣広報室の言い分をそのまま紹介する。
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●クジラの餌の生態についての周知度
クジラの餌の生態について、知っているものを聞いたところ、「クジラはオキアミなどのプランクトンだけでなく、サンマやイカ、タラ、サケなどを主要な餌として食べている」を挙げた者の割合が、52%と最も高く、以下、「漁業者が漁獲する前に、はえ縄にかかったマグロをクジラが食べてしまうなど、クジラにより漁業が妨げられる事例がある」(12・9%)、「イルカやクジラが餌として食べている魚介類の量は、世界の海面漁業生産量の3倍から5倍にのぼる量であると推定されている」(10・4%)などの順となっている。なお、「わからない」と答えた者の割合が41・4%となっている。
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つまり内閣府の言い分は、こうだ。イルカやクジラが食べる魚の量には、たいへんなものがある。推定で、2・8~5億トン。これは「世界中の人間が食べる、魚の消費量の9000万トンの、3~5倍の量」(日本鯨類研究所)。だから捕鯨することによって、クジラの数を制限する必要がある、と。
(イルカやクジラと、「イルカ」も、含めていることに注意してほしい。)
しかしこれは、ウソ。南極でエサをとるクジラは、ナンキョクオキアミを主食としている。マッコウクジラは、肉食もしているが、深海の軟体動物を主に食用としている。財団法人「日本鯨類研究所」ですら、「人間の漁業と直接は競合していない部分の方が、遙かに大きい」(同、HP)と述べている。
なおナンキョクオキアミにしても、年間数千万トンもの余剰資源があるとされる(同、HP)。
もちろんイカなどを食べる、「歯クジラ」もいる。しかし数は少ない。こうしたクジラ、さらにはイルカまで、いっしょくたにして、「クジラは……」と論ずるところが、恐ろしい。
さらに言えば、内閣府は日本の漁業を心配しているようにも見えるが、実際には、日本の港に入ってくる魚の大半は、外国の漁業船団がもちこんでくる魚である。海上で、外国の漁業船団と交渉して、日本の漁船が魚を買い受けるというケースも少なくない。人件費という面からも、日本の漁業船団は、少なくとも現在は、外国の漁業船団には、太刀打ちできない。開店休業状態にある。
本音の本音を言えば、捕鯨をすることで利益を得る、ほんの一部の漁業関係者を保護するために、調査捕鯨をしている。
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(参考資料)(内閣広報室の資料より転載)
都市規模別に見ると、「イルカやクジラが餌として食べている魚介類の量は、世界の海面漁業生産量の3倍から5倍にのぼる量であると推定されている」を挙げた者の割合は大都市で高くなっている。
性別に見ると、「クジラはオキアミなどのプランクトンだけでなく、サンマやイカ、タラ、サケなどを主要な餌として食べている」、「漁業者が漁獲する前に,はえ縄にかかったマグロをクジラが食べてしまうなどクジラにより漁業が妨げられる事例がある」、「イルカやクジラが餌として食べている魚介類の量は,世界の海面漁業生産量の3倍から5倍にのぼる量であると推定されている」を挙げた者の割合は男性で高くなっている。
性・年齢別に見ると、「クジラはオキアミなどのプランクトンだけでなく、サンマやイカ、タラ、サケなどを主要な餌として食べている」を挙げた者の割合は、男性の40歳代から70歳以上で、「漁業者が漁獲する前に,はえ縄にかかったマグロをクジラが食べてしまうなど、クジラにより漁業が妨げられる事例がある」を挙げた者の割合は、男性の30歳代、40歳代で、「イルカやクジラが餌として食べている魚介類の量は、世界の海面漁業生産量の3倍から5倍にのぼる量であると推定されている」を挙げた者の割合は、男性の40歳代から60歳代で,それぞれ高くなっている。
職業別に見ると,「クジラはオキアミなどのプランクトンだけでなく、サンマやイカ、タラ、サケなどを主要な餌として食べている」を挙げた者の割合は自営業主、管理・専門技術・事務職で、「イルカやクジラが餌として食べている魚介類の量は、世界の海面漁業生産量の3倍から5倍にのぼる量であると推定されている」を挙げた者の割合は、管理・専門技術・事務職で、それぞれ高くなっている。
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絶滅の危機に瀕している生物は、多い。もちろんその原因は、私たち人間にある。そういう巨大な問題をさておいて、「クジラがふえすぎている」は、ない。食料としての魚も必要かもしれないが、海の生物くらい、そっとしておいてやってもよいのではないか?
クジラにしても、ふえすぎれば自然淘汰されるだろう。大切なことは、自然との共存である。人間があえて、その自然に手を入れる必要はない。日本人がもつ(自然観)は、けっして、世界の常識ではない。
それについて、以前、こんな原稿を書いたことがある。
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●ゆがんだ自然観
もう30年以上も前のことだが、こんな詩を書いた女の子がいた(大阪市在住)。
「夜空の星は気持ち悪い。ジンマシンのよう。小石の見える川は気持ち悪い。ジンマシンのよう」と。
この詩はあちこちで話題になったが、基本的には、この「状態」は今も続いている。小さな虫を見ただけで、ほとんどの子どもは逃げ回る。落ち葉をゴミと考えている子どもも多い。自然教育が声高に叫ばれてはいるが、どうもそれが子どもたちの世界までそれが入ってこない。
「自然征服論」を説いたのは、フランシスコ・ベーコンである。それまでのイギリスや世界は、人間世界と自然を分離して考えることはなかった。人間もあくまでも自然の一部に過ぎなかった。
が、ベーコン以来、人間は自らを自然と分離した。分離して、「自然は征服されるもの」(ベーコン)と考えるようになった。それがイギリスの海洋冒険主義、植民地政策、さらには1740年に始まった産業革命の原動力となっていった。
日本も戦前までは、人間と自然を分離して考える人は少なかった。あの長岡半太郎ですら、「(自然に)抗するものは、容赦なく蹴飛ばされる」(随筆)と書いている。
が、戦後、アメリカ型社会の到来とともに、アメリカに伝わったベーコン流のものの考え方が、日本を支配した。その顕著な例が、田中角栄氏の「列島改造論」である。日本の自然はどんどん破壊された。埼玉県では、この40年間だけでも、30%弱の森林や農地が失われている。
自然教育を口にすることは簡単だが、その前に私たちがすべきことは、人間と自然を分けて考えるベーコン流のものの考え方の放棄である。もっと言えば、人間も自然の一部でしかないという事実の再認識である。さらにもっと言えば、山の中に道路を一本通すにしても、そこに住む動物や植物の了解を求めてからする……というのは無理としても、そういう謙虚さをもつことである。
少なくとも森の中の高速道路を走りながら、「ああ、緑は気持ちいいわね。自然を大切にしましょうね」は、ない。そういう人間の身勝手さは、もう許されない。
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