Education in Front-Line and Essays by Hiroshi Hayashi (はやし浩司)

(Mr.) Hiroshi Hayashi, a professional writer who has written more than 30 his own books on Education, Chinese Medical science and Religion in Japan. My web-site is: http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/ Please don't hesitate to visit my web-site, which is always welcome!!

Monday, December 24, 2007

*And I love her from the Beatles number

●原稿と音楽

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最近では、私の書いた原稿と、
音楽を、直接シンクロナイズさせることが
できるようになった。

今までに書いた原稿の中から、いくつかを
選んで、音楽とシンクロナイズさせてみる。

音楽を聴きながら、原稿を読んでもらえれば、
うれしい。

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●And I love her

(音楽↓、クリック)
http://www.youtube.com/watch?v=x8fNDfdjXd8

【ビートルズの歌で終わった青春時代(白血病だったジル)】

(世にも不思議な留学記より)

●行くも最後という時代だった

 行くのも最後、帰るのも最後という時代だった。往復の旅費だけで、40万円以上。まだまだ日本は貧しかった。メルボルンを飛び立つときは、本当にさびしかった。そしてそのさびしさは、フィリッピンのマニラに到着してからも消えなかった。

夜、リザ-ル公園を歩いていると、6、7人の学生がギタ-を弾いていた。私がぼんやりと見ていると、「何か、曲を弾いてあげようか」と声をかけてくれた。私は「ビ-トルズのアンド・アイ・ラブ・ハ-を」と頼んだ。私はその曲を聞きながら、あふれる涙をどうすることもできなかった。

 私には一人のガ-ルフレンドがいた。ジリアン・マックグレゴーという名前の女の子だったが、「嘘つきジル」というあだ名で呼ばれていた。が、私にはいつも誠実だった。映画「トラトラトラ」を二人で見に行ったときも、彼女だけが日本の味方をしてくれた。映画館の中で、アメリカの飛行機が落ちるたびに、拍手喝采をしてくれた。

あの国では、静かに映画を見ている観客などいない。そのジルに私が帰国を告げたとき、彼女はこう言った。「ヒロシ! 私は白血病よ。その私を置いていくの!」と。私はそれが嘘だと思った。……思ってしまった。だから私は天井に、飲みかけていたコ-ヒ-のカップを投げつけ、「嘘つき! どうして君は、ぼくにまで嘘をつくんだ!」と叫んだ。

 夜、ハウスの友だちの部屋にいると、デニスという、今でも無二の親友だが、その彼が私を迎えにきてくれた。そのデニス君とジルは幼なじみで、互いの両親も懇意にしていた。デニスに、ジルの病気の話をすると、彼はこう言った。「それは本当だよ。だからぼくは君に言っただろ。ジルとはつきあってはダメだ。後悔することになる、と。しかしね、ジルが君にその話をしたということは、ジルは君を愛しているんだよ」と。

彼女の病気は、彼女と彼らの両親だけが知っている秘密だった。私はジ-ロンという、メルボルンの南にある町まで行く途中、星空を見ながら泣いた。オーストラリアの星空は、日本のそれよりも何倍も広い。地平線からすぐ星が輝いている。私はただただ、それに圧倒されて泣いた。

●こうして私の青春時代は終った……

 こうして私の留学時代は終わった。同時に、私の青春時代も終わった。そしてその時代を駆け抜けたとき、私の人生観も一八〇度変わっていた。私はあの国で、「自由」を見たし、それが今でも私の生活の基本になっている。私がその後、M物産という会社をやめて、幼稚園教師になったとき、どの人も私を笑った。気が狂ったとうわさする人もいた。

母に相談すると、母まで「あんたは道を誤った」と、電話口のむこうで泣き崩れてしまった。ただデニス君だけは、「すばらしい選択だ」と喜んでくれた。以後、幼児教育をして、二八年になる。はたしてその選択が正しかったのかどうか……?

 そうそう、ジルについて一言。私が帰国してから数カ月後。ジルは、西ドイツにいる兄をたよってドイツへ渡り、そこでギリシャ人と結婚し、アテネ近郊の町で消息を断った。

また同じハウスにいた、あの皇太子や王族の息子たちは、今はその国の元首級の人物となって活躍している。テレビにも時々顔を出す。デニスは、小学校の教員をしたあと、国防省に入り、今はモナーシュ大学の図書館で司書をしている。本が好きな男で、いつも「ぼくは本に囲まれて幸せだ」と言っている。私だけは相変わらず、あの「自転車屋の息子」のままだが……。