Education in Front-Line and Essays by Hiroshi Hayashi (はやし浩司)

(Mr.) Hiroshi Hayashi, a professional writer who has written more than 30 his own books on Education, Chinese Medical science and Religion in Japan. My web-site is: http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/ Please don't hesitate to visit my web-site, which is always welcome!!

Friday, February 29, 2008

*Child-care neurosis

●育児ノイローゼ
When mother suffers from child-care neurosis.

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育児ノイローゼについては、たびたび
書いてきました。

原稿のほうは、ヤフー、グーグルの
ほうで、「はやし浩司 育児ノイローゼ」を
検索してくだされば、読んでいただけます。

以前、中日新聞で発表した原稿を、そのまま
紹介します。

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( 夫よ、妻を理解せよ!)

母親が育児ノイローゼになるとき

●頭の中で数字が乱舞した    

 それはささいな事故で始まった。まず、バスを乗り過ごしてしまった。保育園へ上の子ども(四歳児)を連れていくとちゅうのできごとだった。次に風呂にお湯を入れていたときのことだった。気がついてみると、バスタブから湯がザーザーとあふれていた。しかも熱湯。すんでのところで、下の子ども(2歳児)が、大やけどを負うところだった。

次に店にやってきた客へのつり銭をまちがえた。何度レジをたたいても、指がうまく動かなかった。あせればあせるほど、頭の中で数字が勝手に乱舞し、わけがわからなくなってしまった。

●「どうしたらいいでしょうか」

 Aさん(母親、36歳)は、育児ノイローゼになっていた。もし病院で診察を受けたら、うつ病と診断されたかもしれない。しかしAさんは病院へは行かなかった。子どもを保育園へ預けたあと、昼間は一番奥の部屋で、カーテンをしめたまま、引きこもるようになった。食事の用意は何とかしたが、そういう状態では、満足な料理はできなかった。

そういうAさんを、夫は「だらしない」とか、「お前は、なまけ病だ」とか言って責めた。昔からの米屋だったが、店の経営はAさんに任せ、夫は、宅配便会社で夜勤の仕事をしていた。

 そのAさん。私に会うと、いきなり快活な声で話しかけてきた。「先生、先日は通りで会ったのに、あいさつもしなくてごめんなさい」と。私には思い当たることがなかったので、「ハア……、別に気にしませんでした」と言ったが、今度は態度を一変させて、さめざめと泣き始めた。そしてこう言った。「先生、私、疲れました。子育てを続ける自信がありません。どうしたらいいでしょうか」と。冒頭に書いた話は、そのときAさんが話してくれたことである。

●育児ノイローゼ

 育児ノイローゼの特徴としては、次のようなものがある。

(1)生気感情(ハツラツとした感情)の沈滞、
(2)思考障害(頭が働かない、思考がまとまらない、迷う、堂々巡りばかりする、記憶力の低下)、
(3)精神障害(感情の鈍化、楽しみや喜びなどの欠如、悲観的になる、趣味や興味の喪失、日常活動への興味の喪失)、
(4)睡眠障害(早朝覚醒に不眠)など。さらにその状態が進むと、Aさんのように、
(5)風呂に熱湯を入れても、それに気づかなかったり(注意力欠陥障害)、
(6)「ムダ買いや目的のない外出を繰り返す(行為障害)、
(7)ささいなことで極度の不安状態になる(不安障害)、
(8)同じようにささいなことで激怒したり、子どもを虐待するなど感情のコントロールができなくなる(感情障害)、
(9)他人との接触を嫌う(回避性障害)、
(10)過食や拒食(摂食障害)を起こしたりするようになる。
(11)また必要以上に自分を責めたり、罪悪感をもつこともある(妄想性)。

こうした兆候が見られたら、黄信号ととらえる。育児ノイローゼが、悲惨な事件につながることも珍しくない。子どもが間にからんでいるため、子どもが犠牲になることも多い。

●夫の理解と協力が不可欠

 ただこうした症状が母親に表れても、母親本人がそれに気づくということは、ほとんどない。脳の中枢部分が変調をきたすため、本人はそういう状態になりながらも、「私はふつう」と思い込む。あるいは症状を指摘したりすると、かえってそのことを苦にして、症状が重くなってしまったり、さらにひどくなると、冷静な会話そのものができなくなってしまうこともある。Aさんのケースでも、私は慰め役に回るだけで、それ以上、何も話すことができなかった。

 そこで重要なのが、まわりにいる人、なかんずく夫の理解と協力ということになる。Aさんも、子育てはすべてAさんに任され、夫は育児にはまったくと言ってよいほど、無関心であった。それではいけない。子育ては重労働だ。私は、Aさんの夫に手紙を書くことにした。この原稿は、そのときの手紙をまとめたものである。

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ここでは、さらにつぎの段階に
ついて考えてみます。

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 当然のことながら、育児ノイローゼ、つまり、心がうつ状態になると、ものごとへの(こだわり)が、強くなる。ささいなことを気にして、それについて悶々と悩んだりする。悩むだけならまだしも、ときに、人との接触を避けたり、反対に、周囲の人たちに、当たり散らしたりする。

 ある日、突然、Cさんという女性から、電話がかかってきた。見知らぬ女性である。私の電話番号は、近くの交番までやってきて、そこで知ったらしい。

 その声からして、ふつうではなかった。オドオドというか、サメザメというか、息子(21歳)のことについて、あれこれ言った。

 「よくない女性とつきあっている」
 「コンビニで万引きをした」
 「タバコを吸っている」
 「酒もよく飲む」
 「仕事は、高校を出てから、4回も変わった」などなど。

私「タバコを吸っている人は多いですよ」
C「でも、うちの子は、17歳くらいから吸っています」
私「みんなそれくらいからですよ」
C「20歳未満からタバコを吸うようになると、肺ガンになるといいます」
私「そういう説もあります」
C「私たちが生きているうちなら、何とかなりますが、私も、もうすぐ50歳です」
私「……」と。

 こういう押し問答が、延々とつづく。まさにああ言えば、こう言う式の相談がつづく。

私「で、よくない女性というのは、どういう女性ですか?」
C「夜は、スナックで働いています」
私「はあ~。いまどき、そういうことを言ってはいけません」
C「水商売です」
私「だからね、それが偏見だということです。どうしてスナックで働くことが悪いことなのですか」
C「……今は、そういう時代ですか? 私が古いのですか?」
私「そうですね。古いですね。戦前の考え方ですね。あるいは封建時代の身分制度の名残かな? 職業によって、相手の価値まで判断してしまう」と。

 私は何度も電話を切ろうとしたが、こちらの都合など、まるで意に介さない。自分のことだけを、ペラペラといつまでも話しつづけた。

 電話は、その翌日もかかってきた。そのまた数日後もかかってきた。朝、夜の区別もなかった。

 こういう相談のときは、とにかく聞き役に徹するしかない。Cさんは、私に話すことで、自分を整理する。心の中にたまったうっぷんを晴らそうとする。しかし私にも、(時間)というものがある。

 いつだったか、どこかの小児科のドクターがこう言っていたのを思い出した。私が、「カウンセリングはどこまでしていますか?」と聞いたときのこと、そのドクターは、こう言った。

 「うちではしていません。看護婦も、10人いますから、そういう人たちの給料も稼がねばなりませんから」と。

 つまりカウンセリングといっても、1人あたり、最低でも30分ほどかかる。しかもお金にならない。そのドクターは、それを言った。「現実には、不可能です」と。

 では、どうするか?

 育児ノイローゼといっても、たまたま対象が、「育児」、つまり「子ども」というだけで、中身は、うつ病と考えてよい。心の病気。そういう前提で、子どもの問題というよりは、母親自身の心の問題と考える。

 私は、Cさんの夫に電話をかわってもらった。幸い、おだやかで、静かな口調の人だった。私は、「一度、心療内科かどこかへ、相談したらよいのでは……」と話した。夫も、すなおにそれに同意してくれた。

(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 Hiroshi Hayashi education essayist writer Japanese essayist はやし浩司 育児ノイローゼ うつ うつ病)