*June 22nd
●鋤(すき)と鍬(くわ)
中学2年のMさんが、こう聞いた。
「センセイ、『スキ』という漢字を書ける?」
「『クワ』という漢字を書ける?」と。
私は、「書けない」と答えた。
「読むことはできるけど、書けないよ」と。
するとMさんが、すかさず、こう言った。
「そんな漢字が書けないんじゃあ、ただのオジサン
だよ」と。
口の悪い子どもだが、憎めない。
サバサバしていて、イヤミがない。
サラサラと書けないようであれば、こういうばあい、
すなおに「書けない」と答えたほうがよい。
と、同時に、学生のとき、大学の教授がして
くれた話を思い出していた。
昔、憲法学の世界に、Mという教授がいた。
憲法学の第一人者である。
東大の教授だった。
その教授が、どこかの小学校で講演をしたらしい。
憲法の話をしたのだろう。
で、そのあと、1人の小学生が、その教授に、こう質問
したという。
「憲法は、いくつ(何条)あるのですか?」と。
Mという教授はその質問に答えられず、側近の
人に、六法全書をもってこさせて、その場で調べて
答えたという。
大学の教授は、「憲法学の第一人者でも、ときとして、
そういうこともある」と言った。
あのアイン・シュタインにも、似たようなエピソードがある。
……が、だからといって、私の漢字能力の不足を弁解する
つもりはない。
私「あのね、そんな漢字は、辞書を調べればすぐわかるよ」
M「じゃあ、センセイは、ただのオジサンだ」
私「あのね、センセイというのは、辞書の調べ方を教える
のが仕事なんだよ。漢字を教えるのは、仕事ではない」
M「そんなのおかしいわよ」
私「おかしくないよ」と。
多分、学校のテストか何かで、そんな問題が出たのだろう。
私はMさんの目を盗んで、電子辞書で漢字を調べた。
「鋤」と「鍬」という漢字であることがわかった。
が、すかさずMさんが、こう言った。
「センセイ、今、辞書で調べたでしょ?」と。
私「そうだよ。ぼくが思っていたとおりの漢字だった」
M「だったら、はじめっから、そう書けばいいのに……」
私「そうだね。ところで、鋤と鍬は、どこがどうちがうか
知っている?」
M「知らないわよ、そんなの……」
私「それはおかしいよ。ちがいもわからないで、漢字だけ
知っているなんて!」と。
鋤(すき)と鍬(くわ)は、形がちがう。
使う目的もちがう。
私も家庭菜園で、鋤と鍬の両方を使っている。
漢字はあいまいだが、使い方は知っている。
私は簡単な図を描いて、どこがどうちがうかを示してやった。
私「畑を自分でたがやしたことはあるの?」
M「ないわよ、そんなの!」
私「一度、たがやしてみるといいよ。楽しいよ」と。
そのあと、いつものような静けさが教室を包んだ。
鋤と鍬……。
鋤を「鋤」と書くのは、よくわかる。
「畑をたがやすの助ける、鉄」という意味らしい。
が、なぜ鍬を「鍬」と、書くのか?
きっと、秋に使うことが多いから、鍬と書くのではないか。
勝手にそう想像してみたが、それは言わなかった。
ひょっとしたら、当て字かもしれない。
私の住む世界には、こんな大鉄則がある。
「あやふやなことは教えない」。
Hiroshi Hayashi++++++++++++++++++++++はやし浩司
●『奇跡のシンフォニー』
+++++++++++++++++
今日の午後、何もすることがなかったので、
ワイフと映画を見に行ってきた。
日曜日。
それに雨。
いつもとちがい、劇場は、『インディ・ジョーンズ』を
見る人たちで、ごったがえしていた。
で、私たちは、『奇跡のシンフォニー』を
見ることにした。
よかった!
泣いた!
部分的には、「?」と思うところもなかったわけでは
ない。
しかし星は5つの、★★★★★。
見終わってから、「もう一度、見たいね」と言うと、
ワイフもすなおに同意してくれた。
音楽がすばらしかった!
+++++++++++++++++
いろいろ言いたいことはある。
あるが、映画は、こうでなくては……
というような内容の映画だった。
ハッピーエンドで終わる映画は、よい。
見終わったあと、ほっとする。
娯楽映画としては、すばらしい。
あまりむずかしく考えない。
すなおに感動すれば、それでよい。
帰りに、ワイフとレストランで食事をした。
その料理を食べながら、ワイフがまた言った。
「いい映画だったわ」と。
主演のカーステン・シェリダンが、
どことなく孫の誠司に似ていたので、
ついつい感情移入してしまった。
これはジジバカのなせるワザか?
<< Home