Self Achievement of Children
●自己効力感(Self Achievement)
「自分でできた」「自分でやった」という達成感が、子どもを伸ばす。これを自己効力感という。
子どもを伸ばすコツは、この自己効力感をうまく利用すること。
反対に、この自己効力感を、阻害(じゃま)するようなことがあると、子どもは(1)それに大きく反発するようになり、(2)ついで、心が極度の緊張状態におかれるようになることが知られている。
それを阻害するものに対して、反抗するようになる。
が、それだけではない。子どもは、ますます、そのものに固執するようになる。こんなことがある。
A君(小4)は、サッカークラブで、やっとレギュラー選手になることができた。A君はA君なりに、努力をした。
が、小5になるとき、母親は、A君を、進学塾へ入れた。そしてそれまで週3回だったサッカーの練習を、週2回に減らすように言った。当然、そうなると、A君は、レギュラー選手からはずされる。
A君は、猛烈にそれに反発した。が、やがてその反発は、母親への反抗となって現れた。すさんだ目つき、母親への突発的な暴力行為など。
もうそうなると、進学塾どころではなくなってしまう。あわてた母親は、進学塾をやめ、再び、サッカークラブにA君をもどした。が、今度は、A君は、そのサッカーにすら、興味を示さなくなってしまった。母親はこう言う。
「あれほど、毎晩、サッカーをさせろと暴れていたのに、サッカークラブへ再び入ったとたん、サッカーへの興味をなくすなんて……」と。
子どもの心理というのは、そういうもの。A君の母親は、それを知らなかっただけである。A君が母親に反抗したのは、サッカーをしたいからではなかった。自分の自己効力感(達成感)を、阻害されたからである。そのことに対して、A君は、反抗したのである。
少し話がちがうかもしれないが、こんな例もある。
若い男女が、恋愛をした。しかし周囲のものが、猛反対。そこでその男女は、お決まりの駆けおち。そして子どもをもうけた。
やがて周囲のものが、あきらめ、それを受け入れた。とたん、たがいの恋愛感情が消えてしまった。
この例でも、若い男女が駆けおちしたのは、それだけたがいの恋愛感情が強かったからではない。周囲のものに反対されることによって、より結婚に固執したからである。だから、結婚を認められたとたん、恋愛感情が消えてしまった。
【教訓】
子どもの得意芸、生きがいは、聖域と考えて、決して、土足で踏み荒らすようなことはしてはいけない。へたに阻害したりすると、かえって子どもは、それに固執するようになる。最悪のばあいには、親子関係も、それで破壊される。
(はやし浩司 自己効力感 自己達成感 一芸論)
●高度な欲求不満
欲求不満といっても、決して一様ではない。心理学の世界には、欲求不満段階説(マズローほか)さえある。このことは、子どもの発達過程を観察していると、わかる。
【原始的欲求不満】
愛情飢餓、愛情不足など。飢餓感や不足感が、欲求不満につながる。この欲求不満感が、子どもの心をゆがめる。よく知られているのは、赤ちゃんがえり。下の子どもが生まれたことなどにより、飢餓感をもち、それが上の子どもの心をゆがめる。
生命におよぶ危機感、安心感の欠如から生まれる欲求不満も、これに含まれる。
【人間的欲求不満】
人に認められたい、人より優位に立ちたい、目立ちたいという欲求が、満たされないとき、それがそのまま欲求不満へとつながる。「自尊の欲求」(マズロー)ともいう。この人間的欲求は、自分がよりすぐれた人間であろうとする欲求であると同時に、それ自体が、社会全体を、前向きに引っ張っていく原動力になることがある。
が、子どもの世界では、こうした人間的欲求は、変質しやすい。
ある子ども(中2男子)は、私にある日、こう言った。「ぼくは、スーパーマンになれるなら、30歳で死んでもいい。世の中の悪人をすべて退治してから死ぬ」と。
こうした人間的欲求は、幼児にも見られる。みなの前でその子どもをほめたりすると、その子どもは、さも誇らしそうな顔をして、母親のほうを見たりする。
子どもの中に、そうした人間的欲求を感じたら、静かにそれをはぐくむようにする。これは子育ての大鉄則の一つと考えてよい。
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