*A Nervous Daughter
【子どもの心の奥にあるもの】
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よく誤解されるが、情緒不安というのは、
情緒が不安定になることではない。
(心の緊張感)がとれないことを、情緒
不安という。
心が緊張しているとき、不安や心配ごとがあると、
心は一気に不安定になる。
結果として情緒は不安定になる。
つまり情緒不安というのは、(心の緊張感)が
とれない、その結果として現れる症状をいう。
子どもの情緒不安を感じたら、まず、心の
緊張感が、いつ、どのように発生し、どのように
作用しているかを、観察する。
慢性化すれば、神経症(症状は千差万別)を
発症するようになる。
疑惑症、嫌悪症、潔癖症なども、そのひとつ。
対処法としては、(心の緊張感)をほぐすことを
第一に考える。
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【AKさんより、はやし浩司へ】
6歳の娘と、4歳の息子がいます。6歳の娘についての、相談です。
長女はいい子で優しく素直な子です。神経質で、きっちりしている(言いつけを守る)ところもあります。5歳くらいまで母子分離不安が強く近所で多数の子供たちと遊ぶと、うちの子はなかなか私から離れず、みんなの中に入って行くのを尻込みするタイプでした。何か心にストレスを感じるとすぐ身体症状が出る子で、幼稚園入園後半年で円形脱毛になり、年長に上がった時に神経因性頻尿になりました。いずれもたくさん構ってあげたりスキンシップや気分転換させると自然に治りました。
今困っている症状は、手を洗っても汚れがついている気がする・その手で蛇口を触れない(蛇口をずっと長いこと洗います)・手に触れるものや口に入れるもの全てにおいて清潔か、触っても大丈夫かの確認を何度もする・チック(目をぱちぱちする)です。手洗いに関しては、私が指摘したせいか本人も自覚してしまってつらがっています。手洗いの際私が手を包み込んで一緒に洗うと、ましなようです。
弟の方はマイペースで長女のようにきっちりせず、のびのびしています。母親に対する独占欲が強く長女といつも私を取り合う感じです。3歳頃まで泣きひきつけがひどく、あまり泣かせないようにしてきたからか、長女は我慢をすることも多かったと思います。次男出産後1年半は保育所に預けていました。
私自身にも問題があります。一度火がつくと自分でもコントロールできない程激しく叱ってしまうのです。私の母親が普段は優しく愛情深いのですが、怒るとすごくこわく、いわゆるヒステリータイプで、毎日夫婦喧嘩の声(母の怒った声)に子供の頃から心が休まらない家庭でした。母の顔色を伺いながら生きてきた自分を考え、自分は絶対そんな思いは子供にさせまいと思い続けて母親になりましたが、時々自分の中に母親の影をみることがあります。
特に生理前などはイライラが強く、子供にきつく怒ってしまいます。その度に自己嫌悪に陥り反省し、よし明日からはとがんばるのですが、1ヶ月くらいたったある日それまでの努力を自分で台無しにするような怒り方をして、また反省し繰り返しです。こんな自分も嫌です。どうにかして治したいのですが。夫に私がきつく怒りすぎて子供が萎縮していると指摘を受けました。
今回長女の強迫的な行動におろおろし、いろいろ調べたところ、はやし先生の相談者に対するアドバイスを読み、今まで長女は繊細であれこれ困ったことが起きるなと思っていたのは、すべて私が原因だったのでは?、と思いました。長女に対して今最大限のスキンシップをはかるようにしていますが、このまま続けて行けば良くなるでしょうか? ひどい時は10分おきくらいに、「足を触ったかもしれないけどその手を舐めたかもしれないけど大丈夫?」といった質問を繰り返したり、手洗い場で「洗っても洗っても汚れてるみたいな気がする」と泣いている娘をみると、早く治してあげたくて受診させたほうがいいのかと悩んでいます。
主人は自分の実家で気分転換させたら?、といいます。(主人の実家は長女びいきで行くといつも娘の表情が穏やかでわがまま言い放題、のびのびしています。)先生、どうか返答は遅くても構いません。是非アドバイスをお願いします。私自身はメールアドレスを持っていないので主人の名前で出しています。(相談者・AK)
【はやし浩司よりAKさんへ】
まずAKさん、あなた自身の心が、なぜいつも緊張状態にあるかを、静かに観察してみてください。いつもピリピリしているというようであれば、そのもとになっている、原因をさぐります。
私の印象では、AKさん自身が、心を開けない人のように思います。他人の前に出ると、緊張してしまうとか、(結果的に疲れやすい)、仮面をかぶってしまうとか、そういう状態ではないかと思います。
さらにその原因はといえば、AKさん自身の母子関係にあります。AKさんと、AKさんの母親との関係です。AKさん自身も、子どものころ、(いい子)ぶることで、いつも自分をごまかしていた。現在のあなたの長女のように、です。
で、相談の件ですが、年齢的に、つまり2歳下の弟がいるということですから、長女は、まだ人見知り、後追いのはげしかったころ、下の弟が生まれたことになります。下の弟が生まれたことによって、大きな愛情の変化を感じたと思われます。対処の仕方を誤ると、赤ちゃん返りという症状が生まれます。
長女は、現在も、その(赤ちゃん返り)の流れの中にあると思ってください。
子どもというのは、環境の変化にはたいへんタフですが、愛情の変化には、敏感に反応します。親は「平等にかわいがっている」と言いますが、子どもには、そういった論理は通用しません。あなたの夫が、ある日突然、愛人を家に連れ込んできたようなばあいを、想像してみてください。
もうおわかりかと思いますが、長女は、慢性的な愛情飢餓状態にあると考えて対処します。濃密なスキンシップ、添い寝、手つなぎなど、こまめに実行してみてください。ポイントは、『求めてきたときが、与えどき』です。
長女のほうから、スキンシップを求めてきたようなときは、すかさず、(すかさず、です)、それに応じてあげます。「あとでね……」「忙しいから……」は、禁句です。ほんの数分、応じてあげるだけで、子どもは、落ちつくはずです。
ほかに食生活にこころがけてみてください。CA、MG、Kの多い食生活(=海産物中心の献立)にするだけでも、かなり効果があります。(薬物に頼るのは、この時期、勧めません。)とくにCAの多い食生活を大切にしてみてください。市販の子ども用錠剤なども、効果的です。
(薬局へ行くと、高価な錠剤を勧めますが、安いものもあります。安いのでも効果は同じです。服用量を注意して、与えます。)
私自身も、心の緊張感がほぐれないときは、CAの錠剤をバリバリと口の中で割ってのんだりしています。ほかにハーブ系の錠剤をのむこともあります。
偏食、とくに白砂糖の多い食品は、避けます。(家庭では、精製してない黒砂糖を料理に使うとよいでしょう。)
家庭生活の要(かなめ)は、子どもの側からみて、(心の休まる)環境です。
長女は、おそらく外の世界(幼稚園など)では、いい子ぶることで、自分の立場を保持しているはずです。つまりそれだけ神経疲れを起こしやすいということです。ですからその反動として、家の中で、ぞんざいな態度、横柄な態度を見せるかもしれませんが、そこは許してやってください。
「うちの子は、外でがんばっているから、家の中ではこうなのだ」と、です。
6歳ともなると、(家)は、(しつけの場)ではなく、(憩いの場)とならなくてはいけません。疲れた心を休める場所です。
手洗いグセについては、『暖かい無視』に心がけます。心の緊張感(わだかまり、こだわり)がほぐれてくれば、自然になおります。親がカリカリすればするほど、逆効果です。なお子どもの神経症については、私のHP→(ここが子育て最前線)→(子ども診断)→(神経症)に収録してありますから、参考にしてください。
http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/page080.html
で、問題は、AKさん、あなた自身です。
遠くは、あなたとあなたの母親との関係にまで、原因がさかのぼります。あなた自身が、全幅に、あなたの母親に受け入れてもらえなかった……。それが今、あなたの対人関係(もちろん子どもに対しても)に、影響を与えています。さみしがり屋で孤独なくせに、しかし集団の中に入っていくと、すぐ神経づかれを起こしてしまう、と。他人を信ずることができない……つまり、他人に心を開くことができない。自分をつくってしまう。ありのままをさらけ出すことができない、など。
(あるいは何かの原因で、長女を愛することができないのかもしれませんね。「長女を愛しなければならない」「しかしどうも好きになれない」と、AKさん自身が、心の中で葛藤しているということも考えられます。あなた自身も、親に愛されていなかった……。その世代連鎖が、今もつづいている可能性も否定できません。)
ともかくも、こうした緊張感が、ちょっとしたきっかけで、爆発してしまう。長女に対して、です。
症状としては、AKさん自身が、(うつ病質)であると考えられますが、専門的な判断は、ドクターにしてもらってください。同時にAKさん自身も、CAの多い食生活に心がけてみてください。
ほとんどの親は、子どもに、ふつうでない症状が現れると、子どもに原因を求め、子どもを治そうとか、直そうとか考えます。しかし子どもは、(家族の代表)でしかありません。
幸いなことに、AKさんは、今、それに気づきつつあります。つまりすでに問題は、半分以上、解決したということです。
あとは、長女のよいところだけを見て、長女といっしょに、もう一度人生を楽しむつもりで、子育てをすればよいでしょう。あるいはもうそろそろ長女から離れ、あなた自身が自分でしたいことをすべき時期に来ているかもしれません。夫の実家でめんどうをみてくれるというのですから、そういう場をうまく利用して、あなたはあなたで、好き勝手なことをすればよいのです。
また、子どもを愛せないなら愛せないで、気負うことはありません。実際そうした母親は、7~10%はいます。まず、あるがままの、自然体で、子どもに接することを大切にします。「親だから……」と気負ってはいけないということです。(メールによれば、AKさんは、かなり親意識の強い方のようですから……。)子どもの「友」になることだけを考えて対処します。
どうであるにせよ、症状としては、この時期、たいへん多いですから、あまり深刻に考えないこと。ただし環境を改善したとしても、すぐには症状は消えません。あせらないこと。チックにしても、家庭環境が改善されても、ばあいによっては、そのあと、数年つづくこともあります。(手洗いグセは、比較的早く、症状は消えます。)
詳しくは、「はやし浩司 神経症」「はやし浩司 手洗いグセ」で、検索してみてください。
またAKさん自身の問題は、「はやし浩司 基本的信頼関係」が、参考になると思います。
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