Education in Front-Line and Essays by Hiroshi Hayashi (はやし浩司)

(Mr.) Hiroshi Hayashi, a professional writer who has written more than 30 his own books on Education, Chinese Medical science and Religion in Japan. My web-site is: http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/ Please don't hesitate to visit my web-site, which is always welcome!!

Sunday, February 03, 2008

*Smart Kids

●頭のよい子(A Smart Kid)

 五〇人に一人とか、それ以上の中に一人という、頭のよい子どもが、いる。よく「能力は平等だ」という人がいるが、こと知的能力についていえば、平等ではない。専門的に言えば、「脳の神経シナプスは、非同時的に発達する」※という。この「非同時性」が、子どもの「差」となって表れる。

 で、その頭のよい子どもの特徴としては、(1)目つきが鋭く、静かに落ち着いている、(2)集中力があって、いったん集中し始めると、他人を寄せつけない気迫を見せる、(3)言葉を頭の中で反すうする(何度もかみくだく)ため、それだけ言葉が重くなる傾向を示す、など。動作もどこか鈍くなることが多い。

 ここでいう(3)「言葉を反すうする」というのは、同時進行の形でいろいろなことを考えることをいう。たとえば「地球が暖かくなることをどう思うか」と問いかけると、知的能力の「深さ」によって、子どもの反応は大きく変化する。

レベル0……「暖かくなる」という意味そのものが理解できない。
レベル1……「暖かくなっていい」などと言って、そのレベルで思考を停止する。
レベル2……「暖かくなって、冬なども過ごしやすくなる」などと言って、自分にとってつごうのよいことだけを考える。
レベル3……「暖かくなると、困ることもある」などと言って、問題点をあれこれさぐる。
レベル4……「どうして暖かくなるのか」とか、「どうして困るのか」などと言って、いろいろな情報を集めて、それを分析しようとする。
レベル5……問題の深刻さが理解でき、「どうすればいいのか」「どんな問題が起きるのか」「どう対処したらいいのか」というレベルまで考えを切りこんでいく。

 こうしたレベルは、作文を書かせてみればわかる。考えの「深い」子どもは、その片りんを文のはしばしで、それを示す。

 中学生について言うなら、ほとんどの子どもが、レベル0~2の範囲に入る。「五〇〇字程度の作文を書いてください」と指示しても、すぐ書き始める子どもは少ない。これは日ごろから、「考える」という習慣そのものがないためと思われる。

※ シナプスの過剰生産と選択は、脳の異なった部分で異なった速度で進む。(Huttenlocher and Dabholkar, 1997) 本来の視覚皮質ではシナプスの密度は比較的速やかにピークに達する。中間の正面の外皮では、明らかにより高度な認識の働きをするところであるが、その過程は更にゆっくりと進み、シナプス生成は誕生より前に始まり、シナプスの密度は五、六歳の年齢まで増え続く。

※  選択過程は、概念的にはパターンの主な組織に相当するものであるが、更にそれに続く四、五年続き、初期の青年期で終わる。このように脳の部分で異なった速度で進むことは、それぞれの皮質のニューロンでも異なったインプットを受けて、異なった速度で進む可能性が高い。(Juraska, 1982, on animal studies 参照)


Hiroshi Hayashi++++++++FEB.08++++++++++はやし浩司

頭のよい子(2)(A Smart Kid -2-)

 実際に中学生(一~三年生、一〇人)に、「地球温暖化について」というテーマで作文を書かせてみた。

 最初の一〇分間で、作文を書き始めた子どもは、ゼロ。一〇分ぐらいたってから、何となく鉛筆を動かし始めた子どもは、二人だけ。あとは黙ったまま。そこで強く促すと、残りの六人が、何かを書き始めた。しかし残った二人は、体をぶらぶらさせるだけ。私が「思っていることを書けばいい」と言うと、「だって、何を書いたらいいのか、わかんないもん」(女子二人)と。

 二〇分後、まだ書いている途中だったが、そこで中断。以下、子どもたちの書いた作文を紹介する。(句読点を含めて、原文のまま)

(M女、中一)「いままで夏は暑いのに地球温暖化がすすんでいったらどうなってしまうのだろう。まだ6月なのにこんなに暑くて、7時ごろまでひがのぼっていて、明るい。今年は桜がさくのもきょ年より何日もはやかったから、何年かたったら、冬ごろでも暑いかもしれない」

(T女、中一)「今、学校でも、総合の時間に地球環境や、温暖化についてやっています。私は地球温暖化の一番いけない理由は、地球が汚れてしまったことだと思います。車や工場から出た有害ガスが、地球の森林をなくしてしまったりしたことだと思います。外国では日本よりもっと早くから行動をおこしている国もあると聞いたので、日本もいろいろなことをして、温暖化が少しでもなくなるようにしたらいいのにと思いました。私も身近な事から環境が悪く……」

(J君、中二)「南極や北極の氷がとけて大洪水になり人間などが住むばしょがなくなる……」

(G君、中三)「ここら5、6年だけでもかなり変化があったので危機感を感じている。『あと、どのぐらいで人間は住めなくなるのだろうか?』『なぜこのようなことになる前に気がつかなかったのだろう?』こんなことを考えると恐ろしくなる」

 上から順に、M女は、温暖化の事例を集めているにすぎない。レベル2~3。
 T女は、温暖化の理由を懸命にさぐろうとしている。レベル3。
 J君は、具体的に原因をとらえ、結果について考えようとしている。レベル3。
 G君は、危機を感覚的にとらえているが、分析性がない。レベル2。

 何も書かなかった子どもが、レベル0ということにはならないが、外から観察すると、思考がループ状態に入っているのがわかる。言いかえると、思考力のない子どもというのは、きわめて浅いレベルで、思考がループ状態に入る子どもということになる。