Just Formal Relationship between Wife and Husband
●形だけの人間関係(Formal relationship between people)
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形だけの人間関係がどういうものか、それを知りたかったら、
老人ホーム(=特別養護老人ホーム)をのぞいてみるとよい。
そこにあるのは、すべて「形」だけ。
形だけの言葉。
形だけの世話。
形だけの心配。
形だけのやさしさ。
形だけの人間関係。
老人ホームのスタッフの人たちを責めているのではない。
むしろ、その逆。
老人ホームにいる老人たちと、心を交わすのは、不可能。
とくに要介護度4とか5の老人については、そうである。
まともな会話すら、できない。
そういう老人たちと、(形だけではない人間関係)を
築くのは、もとから、不可能。
それにそこにいる老人たちは、先が短い。
「もうすぐ死ぬ」という前提で、スタッフの人たちは、世話をする。
心の準備をする。
そうでもしなければ、つまりへたに心を入れてしまえば、
みな、ズタズタにされてしまう。
ひとりの老人が亡くなるたびに、みなが大泣きをするという
わけにはいかない。
教育の世界には、「10%のニヒリズム」という言葉がある。
どんなに教育に没頭しても、最後の10%は、自分のために
とっておく。
それがないと、教師たるもの、やはり身も心も、ズタズタに
されてしまう。
しかし老人ホームでは、「99%のニヒリズム」ということになる。
またそれがないと、あの仕事は、できない。
で、私は、この数日、ふと気がついた。
実は、この私自身が、形だけの人間関係にあるのではないか、と。
数日前、風邪で(?)、少し、寝込んだ。
そのときのこと。
ワイフがときどきやってきて、「どう?」と聞く。
そのとき、ふと、こう思った。思ったというよりは、知った。
「形だけだな……」と。
本気で心配しているというよりは、うるさい旦那だから、
適当に様子を見にくるといった感じ。
それが私にも、よくわかった。
私は、そういう夫である。
それを認めるのはつらいことだが、事実は、事実。
つまり恐らくワイフは、私との夫婦生活をつづけながらも、
30~60%のニヒリズムをすでに用意しているのかもしれない。
ワイフの口癖は、ただひとつ。
「結婚は、こりごり」
「来世では、別の男性と結婚する」と。
そういう視点で、ワイフを観察してみると、老人ホームで働く
女性たちと、様子がよく似ているのがわかる。
やるべきことはやります。しかしその範囲。
ひょっとしたら、私はともかくも、ワイフのほうは、私への
愛情は、とっくの昔に冷え切っているのかもしれない。
たとえばワイフは、毎週、2つのクラブに通っている。
定期的に、みなと、食事会などを楽しんでいる。
しかしそういうところへ、私を誘ってくれたことは、一度もない。
メンバーの中には、夫婦で来ている人も多い。
そんなわけで、話をしても、うわべの話だけ。
あるいは、あまり話をしたがらない。
私は、それに気がつかなかっただけ。
おめでたいといえば、これほど、おめでたい話はない。
しかしこれも夫婦。
いろいろな夫婦を見てきたが、夫婦に定型はない。
だから私たち夫婦は、だめだとか、そういうことではない。
要するに夫婦といっても、共同体なのだから、共同できる部分では共同し、
それ以外の部分では、おたがいに割り切って生活する。
「私たちは私たち」と、納得することこそ、重要。
もちろん離婚の可能性もないわけではない。
しかしどうせどちらか一方が先に死ねば、結果的に
離婚したのと同じ状況になる。
ここは逆に、60%のニヒリズムを利用して、淡々と生きるしかない。
80%でも、90%でもよい。
まあ、私も、そのうち、離婚の話がワイフのほうから、
切り出されるかもしれない。
その覚悟だけは、いつでもしている。ホント!
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