Education in Front-Line and Essays by Hiroshi Hayashi (はやし浩司)

(Mr.) Hiroshi Hayashi, a professional writer who has written more than 30 his own books on Education, Chinese Medical science and Religion in Japan. My web-site is: http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/ Please don't hesitate to visit my web-site, which is always welcome!!

Friday, July 18, 2008

*EQ-Theory for Children

【子どもの人格論】(特集)

●欲望の根源

かつて、私もそうだった。あなたもそうだった。が、今、子どもの心の中では、猛烈な「性的エネルギー」(フロイト)が、わき起こっている。「生的エネルギー」(ユング)でもよい。
 最近の研究によれば、脳の中の視床下部というところが、どうやらそういった信号の発信源ということがわかってきた(サイエンス誌・08年)。その視床下部からの命令を受けて、ドーパミンという脳間伝達物質が放出される。
 このドーパミンが、脳の中の線条体(報酬と行動要求に関する中枢部)というところを刺激すると、猛烈な(欲望)となって、その子ども(もちろんおとなも)を支配する。ふつうの反応ではない。最終的には、そうした欲望をコントロールするのが、大脳の前頭前野(理性の中枢部)ということになる。が、「意志の力だけで、こうした衝動を克服するのはむずかしい」(N・D・ボルコフ)という。
 線条体が刺激を受けると、「あなたは、目的達成に向けた行動を起こせというメッセージを受けとる」(同誌)。
 もちろん欲望といっても、その内容はさまざま。食欲、性欲、生存欲、物欲、支配欲に始まって、もろもろの快楽追求もその中に含まれる。わかりやすく言えば、脳の中で、どのような受容体が形成されるかによって決まる。たとえばアルコール中毒患者やニコチン中毒患者は、それぞれ別の受容体が形成されることがわかっている。
 では、どうするか? そこでEQ論の登場ということになる。

●EQ論

 ピーター・サロヴェイ(アメリカ・イエール大学心理学部教授)の説く、「EQ(Emotional Intelligence Quotient)」、つまり、「情動の知能指数」では、主に、つぎの3点を重視する。
(1) 自己管理能力
(2) 良好な対人関係
(3) 他者との良好な共感性
 この中でとくに重要なのが、(1)の自己管理能力ということになる。その自己管理能力は、どこまで(1)自分で考え、(2)自分で行動し、(3)自分で責任を取るかによって決まる。
 アメリカでは、どこの小学校に行っても、ドアのところなどに、「Independent・・・」
という言葉が張ってある。「独立した……」という意味である。「Independent Thinker(自分で考える人)」というような使い方をする。
 では、あなたの子どもは、どうか?

●子どもの人格テスト(自己管理能力)

(A)小遣いを手にしたとき、将来の自分の夢を達成するために、それを貯金に回す。あるいはささいなことでも、ルールを守り、約束を守る。疲れていても、家事の手伝いなど、やるべきことは、きちんとやる。
(B)小遣いを手にしても、そのときどきに欲しいものがあると、使ってしまう。家庭の中でもルールなど、あってないようなもの。約束を守るということは、まずない。「疲れている」「やりたくない」という言葉をよく使い、家事を手伝わない。
 (A)のようであれば、あなたは自分の子どもを、「すばらしい子ども」と自信をもってよい。

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●最後に5つの提言

(1)「許して、忘れる」
 親の愛の深さは、どこまで子どもを許して忘れるかで、決まる。英語では、『for・give & for・get 』という。
 この単語をよく見ると、「与えるために、許し、得るために忘れる」とも訳せる。(forgive= 許す、 forget=忘れる。「フォ・ギブは、与えるため」、「フォ・ゲッは、得るため」とも訳せる。)
 子どもに愛を与えるために、親は許し、子どもから愛を得るために、親は忘れるということになる。
 子育てをしていて、袋小路に入り、行きづまりを覚えたら、この言葉を思い出してほしい。心が軽くなるはずである

(2)子どもの横を歩く
親には、三つの役目がある。ガイドとして、前を歩く。プロテクター(保護者)として、うしろを歩く。そして友として、子どもの横を歩く。
 いつも子どもの意思を確かめること。(したいこと)と、(していること)が一致している子どもは、どっしりと落ちついている。夢や希望もある。当然、目的があるから、誘惑にも強い

(3)ほどよい親である
 やりすぎない。子どもが求めてきたら、与えどきと考えて、そのときは、ていねいに答えてやる。昔から『肥料のやりすぎは、根を枯らす』という。
 いつも、「子どもがそれを求めているか」ということを、自分に問いかけながら、子どもに対処するとよい。手のかけすぎ、サービス過剰は、かえって、子ども自身が自ら伸びていく芽をつんでしまうことになる。

(4)暖かい無視
 親の過剰期待、過関心、過干渉ほど、子どもの負担になるものはない。「まあ、うちの子は、こんなもの。親が親だから……」という割りきりが、子どもを伸ばす。
 親は、いつも子どもから一歩退いた位置で、子どもを見守る。野生動物保護団体には、『暖かい無視』という言葉がある。その言葉は、そのまま、子育てにも当てはまる。
 ちょっと心配のしすぎかな? 手のかけすぎかな? と、感じたら、心のどこかで、暖かい無視を思い浮かべる。子どもを暖かい愛情で包みながら、無視する。

(5)使えば使うほど、よい子
使えば使うほど、子どもは、すばらしい子どもになる。家事、仕事、手伝いなど。身近なところから、どんどん、使う。
 使えば使うほど、子どもには忍耐力(いやなことをする力)が身につく。この力が、子どもを伸ばす。もちろん学習面でも、伸びる。もともと学習には、ある種の苦痛がともなう。その苦痛を乗りこえる力が、忍耐力ということになる。


Hiroshi Hayashi++++++++July.08++++++++++はやし浩司

【EQ論からみた、子どもの世界】

●社会適応性

 子どもの社会適応性は、つぎの5つをみて、判断する(サロベイほか)。

(1) 共感性
(2) 自己認知力
(3) 自己統制力
(4) 粘り強さ
(5) 楽観性
(6) 柔軟性

 これら6つの要素が、ほどよくそなわっていれば、その子どもは、人間的に、完成度の高い子どもとみる(「EQ論」)。

 順に考えてみよう。

(1) 共感性

 人格の完成度は、内面化、つまり精神の完成度をもってもる。その一つのバロメーターが、「共感性」ということになる。

 つまりは、どの程度、相手の立場で、相手の心の状態になって、その相手の苦しみ、悲しみ、悩みを、共感できるかどうかということ。

 その反対側に位置するのが、自己中心性である。

 乳幼児期は、子どもは、総じて自己中心的なものの考え方をする。しかし成長とともに、その自己中心性から脱却する。「利己から利他への転換」と私は呼んでいる。

 が、中には、その自己中心性から、脱却できないまま、おとなになる子どももいる。さらにこの自己中心性が、おとなになるにつれて、周囲の社会観と融合して、悪玉親意識、権威主義、世間体意識へと、変質することもある。

(2) 自己認知力

 ここでいう「自己認知能力」は、「私はどんな人間なのか」「何をすべき人間なのか」「私は何をしたいのか」ということを、客観的に認知する能力をいう。

 この自己認知能力が、弱い子どもは、おとなから見ると、いわゆる「何を考えているかわからない子ども」といった、印象を与えるようになる。どこかぐずぐずしていて、はっきりしない。優柔不断。

反対に、独善、独断、排他性、偏見などを、もつこともある。自分のしていること、言っていることを客観的に認知することができないため、子どもは、猪突猛進型の生き方を示すことが多い。わがままで、横柄になることも、珍しくない。

(3) 自己統制力

 すべきことと、してはいけないことを、冷静に判断し、その判断に従って行動する。子どものばあい、自己のコントロール力をみれば、それがわかる。

 たとえば自己統制力のある子どもは、お年玉を手にしても、それを貯金したり、さらにためて、もっと高価なものを買い求めようとしたりする。

 が、この自己統制力のない子どもは、手にしたお金を、その場で、その場の楽しみだけのために使ってしまったりする。あるいは親が、「食べてはだめ」と言っているにもかかわらず、お菓子をみな、食べてしまうなど。

 感情のコントロールも、この自己統制力に含まれる。平気で相手をキズつける言葉を口にしたり、感情のおもむくまま、好き勝手なことをするなど。もしそうであれば、自己統制力の弱い子どもとみる。

 ふつう自己統制力は、(1)行動面の統制力、(2)精神面の統制力、(3)感情面の統制力に分けて考える。

(4) 粘り強さ

 短気というのは、それ自体が、人格的な欠陥と考えてよい。このことは、子どもの世界を見ていると、よくわかる。見た目の能力に、まどわされてはいけない。

 能力的に優秀な子どもでも、短気な子どもはいくらでもいる一方、能力的にかなり問題のある子どもでも、短気な子どもは多い。

 集中力がつづかないというよりは、精神的な緊張感が持続できない。そのため、短気になる。中には、単純作業を反復的にさせたりすると、突然、狂乱状態になって、泣き叫ぶ子どももいる。A障害という障害をもった子どもに、ときどき見られる症状である。

 この粘り強さこそが、その子どもの、忍耐力ということになる。

(5) 楽観性

 まちがいをすなおに認める。失敗をすなおに認める。あとはそれをすぐ忘れて、前向きに、ものを考えていく。

 それができる子どもには、何でもないことだが、心にゆがみのある子どもは、おかしなところで、それにこだわったり、ひがんだり、いじけたりする。クヨクヨと気にしたり、悩んだりすることもある。

 簡単な例としては、何かのことでまちがえたようなときを、それを見れば、わかる。

 ハハハと笑ってすます子どもと、深刻に思い悩んでしまう子どもがいる。その場の雰囲気にもよるが、ふと見せる(こだわり)を観察して、それを判断する。

 たとえば私のワイフなどは、ほとんど、ものごとには、こだわらない性質である。楽観的と言えば、楽観的。超・楽観的。

 先日も、「お前、がんになったら、どうする?」と聞くと、「なおせばいいじゃなア~い」と。そこで「がんは、こわい病気だよ」と言うと、「今じゃ、めったに死なないわよ」と。さらに、「なおらなかったら?」と聞くと、「そのときは、そのときよ。ジタバタしても、しかたないでしょう」と。

 冗談を言っているのかと思うときもあるが、ワイフは、本気。つまり、そういうふうに、考える人もいる。

(6) 柔軟性

 子どもの世界でも、(がんこ)な面を見せたら、警戒する。

 この(がんこ)は、(意地)、さらに(わがまま)とは、区別して考える。(がんこ)を考える前に、それについて、書いたのが、つぎの原稿である。

+++++++++++++++++++

 一方、人格の完成度の高い子どもほど、柔軟なものの考え方ができる。その場に応じて、臨機応変に、ものごとに対処する。趣味や特技も豊富で、友人も多い。そのため、より柔軟な子どもは、それだけ社会適応性がすぐれているということになる。

 一つの目安としては、友人関係を見ると言う方法がある。(だから「社会適応性」というが……。)

 友人の数が多く、いろいろなタイプの友人と、広く交際できると言うのであれば、ここでいう人格の完成度が高い、つまり、社会適応性のすぐれた子どもということになる。

【子ども診断テスト】

(  )友だちのための仕事や労役を、好んで引き受ける(共感性)。
(  )してはいけないこと、すべきことを、いつもよくわきまえている(自己認知力)。
(  )小遣いを貯金する。ほしいものに対して、がまん強い(自己統制力)。
(  )がんばって、ものごとを仕上げることがよくある(粘り強さ)。
(  )まちがえても、あまり気にしない。平気といった感じ(楽観性)。
(  )友人が多い。誕生日パーティによく招待される(社会適応性)。
(  )趣味が豊富で、何でもござれという感じ(柔軟性)。

 ここにあげた項目について、「ほぼ、そうだ」というのであれば、社会適応性のすぐれた子どもとみる。
(はやし浩司 社会適応性 サロベイ サロヴェイ EQ EQ論 人格の完成度)

++++++++++++++++++++++++++++++++はやし浩司※

最前線の子育て論byはやし浩司(246)

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【子どもの心の発達・診断テスト】

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【社会適応性・EQ検査】(P・サロヴェイ)

●社会適応性

 子どもの社会適応性は、つぎの5つをみて、判断する(サロベイほか)。

(1) 共感性
Q:友だちに、何か、手伝いを頼まれました。そのとき、あなたの子どもは……。

(1) いつも喜んでするようだ。
(2) ときとばあいによるようだ。
(3) いやがってしないことが多い。


(2) 自己認知力
Q:親どうしが会話を始めました。大切な話をしています。そのとき、あなたの子どもは……

(1) 雰囲気を察して、静かに待っている。(4点)
(2) しばらくすると、いつものように騒ぎだす。(2点)
(3) 聞き分けガなく、「帰ろう」とか言って、親を困らせる。(0点)


(3) 自己統制力
Q;冷蔵庫にあなたの子どものほしがりそうな食べ物があります。そのとき、あなたの子どもは……。

○親が「いい」と言うまで、食べない。安心していることができる。(4点)
○ときどき、親の目を盗んで、食べてしまうことがある。(2点)
○まったくアテにならない。親がいないと、好き勝手なことをする。(0点)


(4) 粘り強さ
Q:子どもが自ら進んで、何かを作り始めました。そのとき、あなたの子どもは……。

○最後まで、何だかんだと言いながらも、仕あげる。(4点)
○だいたいは、仕あげるが、途中で投げだすこともある。(2点)
○たいていいつも、途中で投げだす。あきっぽいところがある。(0点)

(5) 楽観性
Q:あなたの子どもが、何かのことで、大きな失敗をしました。そのとき、あなたの子どもは……。

○割と早く、ケロッとして、忘れてしまうようだ。クヨクヨしない。(4点)
○ときどき思い悩むことはあるようだが、つぎの行動に移ることができる。(2点)
○いつまでもそれを苦にして、前に進めないときが多い。(0点)
 

(6) 柔軟性
Q:あなたの子どもの日常生活を見たとき、あなたの子どもは……

○友だちも多く、多芸多才。いつも変わったことを楽しんでいる。(4点)
○友だちは少ないほう。趣味も、限られている。(2点)
○何かにこだわることがある。がんこ。融通がきかない。(0点)

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(  )友だちのための仕事や労役を、好んで引き受ける(共感性)。
(  )自分の立場を、いつもよくわきまえている(自己認知力)。
(  )小遣いを貯金する。ほしいものに対して、がまん強い(自己統制力)。
(  )がんばって、ものごとを仕上げることがよくある(粘り強さ)。
(  )まちがえても、あまり気にしない。平気といった感じ(楽観性)。
(  )友人が多い。誕生日パーティによく招待される(社会適応性)。
(  )趣味が豊富で、何でもござれという感じ(柔軟性)。


 これら6つの要素が、ほどよくそなわっていれば、その子どもは、人間的に、完成度の高い子どもとみる(「EQ論」)。

***************************

順に考えてみよう。

(1)共感性

 人格の完成度は、内面化、つまり精神の完成度をもってもる。その一つのバロメーターが、「共感性」ということになる。

 つまりは、どの程度、相手の立場で、相手の心の状態になって、その相手の苦しみ、悲しみ、悩みを、共感できるかどうかということ。

 その反対側に位置するのが、自己中心性である。

 乳幼児期は、子どもは、総じて自己中心的なものの考え方をする。しかし成長とともに、その自己中心性から脱却する。「利己から利他への転換」と私は呼んでいる。

 が、中には、その自己中心性から、脱却できないまま、おとなになる子どももいる。さらにこの自己中心性が、おとなになるにつれて、周囲の社会観と融合して、悪玉親意識、権威主義、世間体意識へと、変質することもある。

(2)自己認知力

 ここでいう「自己認知能力」は、「私はどんな人間なのか」「何をすべき人間なのか」「私は何をしたいのか」ということを、客観的に認知する能力をいう。

 この自己認知能力が、弱い子どもは、おとなから見ると、いわゆる「何を考えているかわからない子ども」といった、印象を与えるようになる。どこかぐずぐずしていて、はっきりしない。優柔不断。

反対に、独善、独断、排他性、偏見などを、もつこともある。自分のしていること、言っていることを客観的に認知することができないため、子どもは、猪突猛進型の生き方を示すことが多い。わがままで、横柄になることも、珍しくない。

(3)自己統制力

 すべきことと、してはいけないことを、冷静に判断し、その判断に従って行動する。子どものばあい、自己のコントロール力をみれば、それがわかる。

 たとえば自己統制力のある子どもは、お年玉を手にしても、それを貯金したり、さらにためて、もっと高価なものを買い求めようとしたりする。

 が、この自己統制力のない子どもは、手にしたお金を、その場で、その場の楽しみだけのために使ってしまったりする。あるいは親が、「食べてはだめ」と言っているにもかかわらず、お菓子をみな、食べてしまうなど。

 感情のコントロールも、この自己統制力に含まれる。平気で相手をキズつける言葉を口にしたり、感情のおもむくまま、好き勝手なことをするなど。もしそうであれば、自己統制力の弱い子どもとみる。

 ふつう自己統制力は、(1)行動面の統制力、(2)精神面の統制力、(3)感情面の統制力に分けて考える。

(4)粘り強さ

 短気というのは、それ自体が、人格的な欠陥と考えてよい。このことは、子どもの世界を見ていると、よくわかる。見た目の能力に、まどわされてはいけない。

 能力的に優秀な子どもでも、短気な子どもはいくらでもいる一方、能力的にかなり問題のある子どもでも、短気な子どもは多い。

 集中力がつづかないというよりは、精神的な緊張感が持続できない。そのため、短気になる。中には、単純作業を反復的にさせたりすると、突然、狂乱状態になって、泣き叫ぶ子どももいる。A障害という障害をもった子どもに、ときどき見られる症状である。

 この粘り強さこそが、その子どもの、忍耐力ということになる。

(1) 楽観性

 まちがいをすなおに認める。失敗をすなおに認める。あとはそれをすぐ忘れて、前向きに、ものを考えていく。

 それができる子どもには、何でもないことだが、心にゆがみのある子どもは、おかしなところで、それにこだわったり、ひがんだり、いじけたりする。クヨクヨと気にしたり、悩んだりすることもある。

 簡単な例としては、何かのことでまちがえたようなときを、それを見れば、わかる。

 ハハハと笑ってすます子どもと、深刻に思い悩んでしまう子どもがいる。その場の雰囲気にもよるが、ふと見せる(こだわり)を観察して、それを判断する。

 たとえば私のワイフなどは、ほとんど、ものごとには、こだわらない性質である。楽観的と言えば、楽観的。超・楽観的。

 先日も、「お前、がんになったら、どうする?」と聞くと、「なおせばいいじゃなア~い」と。そこで「がんは、こわい病気だよ」と言うと、「今じゃ、めったに死なないわよ」と。さらに、「なおらなかったら?」と聞くと、「そのときは、そのときよ。ジタバタしても、しかたないでしょう」と。

 冗談を言っているのかと思うときもあるが、ワイフは、本気。つまり、そういうふうに、考える人もいる。

(2) 柔軟性

 子どもの世界でも、(がんこ)な面を見せたら、警戒する。

 この(がんこ)は、(意地)、さらに(わがまま)とは、区別して考える。

 一般論として、(がんこ)は、子どもの心の発達には、好ましいことではない。かたくなになる、かたまる、がんこになる。こうした行動を、固執行動という。広く、情緒に何らかの問題がある子どもは、何らかの固執行動を見せることが多い。

 朝、幼稚園の先生が、自宅まで迎えにくるのだが、3年間、ただの一度もあいさつをしなかった子どもがいた。

 いつも青いズボンでないと、幼稚園へ行かなかった子どもがいた。その子どもは、幼稚園でも、決まった席でないと、絶対にすわろうとしなかった。

 何かの問題を解いて、先生が、「やりなおしてみよう」と声をかけただけで、かたまってしまう子どもがいた。

 先生が、「今日はいい天気だね」と声をかけたとき、「雲があるから、いい天気ではない」と、最後までがんばった子どもがいた。

 症状は千差万別だが、子どもの柔軟性は、柔軟でない子どもと比較して知ることができる。柔軟な子どもは、ごく自然な形で、集団の中で、行動できる。

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 EQ(Emotional Intelligence Quotient)は、アメリカのイエール大学心理学部教授。ピーター・サロヴェイ博士と、ニューハンプシャー大学心理学部教授ジョン・メイヤー博士によって理論化された概念で、日本では「情動(こころ)の知能指数」と訳されている(Emotional Education、by JESDA Websiteより転写。)

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【EQ】

 ピーター・サロヴェイ(アメリカ・イエール大学心理学部教授)の説く、「EQ(Emotional Intelligence Quotient)」、つまり、「情動の知能指数」では、主に、つぎの3点を重視する。

(4) 自己管理能力
(5) 良好な対人関係
(6) 他者との良好な共感性

 ここではP・サロヴェイのEQ論を、少し発展させて考えてみたい。

 自己管理能力には、行動面の管理能力、精神面の管理能力、そして感情面の管理能力が含まれる。

○行動面の管理能力

 行動も、精神によって左右されるというのであれば、行動面の管理能力は、精神面の管理能力ということになる。が、精神面だけの管理能力だけでは、行動面の管理能力は、果たせない。

 たとえば、「銀行強盗でもして、大金を手に入れてみたい」と思うことと、実際、それを行動に移すことの間には、大きな距離がある。実際、仲間と組んで、強盗をする段階になっても、その時点で、これまた迷うかもしれない。

 精神的な決断イコール、行動というわけではない。たとえば行動面の管理能力が崩壊した例としては、自傷行為がある。突然、高いところから、発作的に飛びおりるなど。その人の生死にかかわる問題でありながら、そのコントロールができなくなってしまう。広く、自殺行為も、それに含まれるかもしれない。

 もう少し日常的な例として、寒い夜、ジョッギングに出かけるという場面を考えてみよう。

そういうときというのは、「寒いからいやだ」という抵抗感と、「健康のためにはしたほうがよい」という、二つの思いが、心の中で、真正面から対立する。ジョッギングに行くにしても、「いやだ」という思いと戦わねばならない。

 さらに反対に、悪の道から、自分を遠ざけるというのも、これに含まれる。タバコをすすめられて、そのままタバコを吸い始める子どもと、そうでない子どもがいる。悪の道に染まりやすい子どもは、それだけ行動の管理能力の弱い子どもとみる。

 こうして考えてみると、私たちの行動は、いつも(すべきこと・してはいけないこと)という、行動面の管理能力によって、管理されているのがわかる。それがしっかりとできるかどうかで、その人の人格の完成度を知ることができる。

 この点について、フロイトも着目し、行動面の管理能力の高い人を、「超自我の人」、「自我の人」、そうでない人を、「エスの人」と呼んでいる。

○精神面の管理能力

 私には、いくつかの恐怖症がある。閉所恐怖症、高所恐怖症にはじまって、スピード恐怖症、飛行機恐怖症など。

 精神的な欠陥もある。

 私のばあい、いくつか問題が重なって起きたりすると、その大小、軽重が、正確に判断できなくなってしまう。それは書庫で、同時に、いくつかのものをさがすときの心理状態に似ている。(私は、子どものころから、さがじものが苦手。かんしゃく発作のある子どもだったかもしれない。)

 具体的には、パニック状態になってしまう。

 こうした精神作用が、いつも私を取り巻いていて、そのつど、私の精神状態に影響を与える。

 そこで大切なことは、いつもそういう自分の精神状態を客観的に把握して、自分自身をコントロールしていくということ。

 たとえば乱暴な運転をするタクシーに乗ったとする。私は、スピード恐怖症だから、そういうとき、座席に深く頭を沈め、深呼吸を繰りかえす。スピードがこわいというより、そんなわけで、そういうタクシーに乗ると、神経をすり減らす。ときには、タクシーをおりたとたん、ヘナヘナと地面にすわりこんでしまうこともある。

 そういうとき、私は、精神のコントロールのむずかしさを、あらためて、思い知らされる。「わかっているけど、どうにもならない」という状態か。つまりこの点については、私の人格の完成度は、低いということになる。

○感情面の管理能力

 「つい、カーッとなってしまって……」と言う人は、それだけ感情面の管理能力の低い人ということになる。

 この感情面の管理能力で問題になるのは、その管理能力というよりは、その能力がないことにより、良好な人間関係が結べなくなってしまうということ。私の知りあいの中にも、ふだんは、快活で明るいのだが、ちょっとしたことで、激怒して、怒鳴り散らす人がいる。

 つきあう側としては、そういう人は、不安でならない。だから結果として、遠ざかる。その人はいつも、私に電話をかけてきて、「遊びにこい」と言う。しかし、私としては、どうしても足が遠のいてしまう。

 しかし人間は、まさに感情の動物。そのつど、喜怒哀楽の情を表現しながら、無数のドラマをつくっていく。感情を否定してはいけない。問題は、その感情を、どう管理するかである。

 私のばあい、私のワイフと比較しても、そのつど、感情に流されやすい人間である。(ワイフは、感情的には、きわめて完成度の高い女性である。結婚してから30年近くになるが、感情的に混乱状態になって、ワーワーと泣きわめく姿を見たことがない。大声を出して、相手を罵倒したのを、見たことがない。)

 一方、私は、いつも、大声を出して、何やら騒いでいる。「つい、カーッとなってしまって……」ということが、よくある。つまり感情の管理能力が、低い。

 が、こうした欠陥は、簡単には、なおらない。自分でもなおそうと思ったことはあるが、結局は、だめだった。

 で、つぎに私がしたことは、そういう欠陥が私にはあると認めたこと。認めた上で、そのつど、自分の感情と戦うようにしたこと。そういう点では、ものをこうして書くというのは。とてもよいことだと思う。書きながら、自分を冷静に見つめることができる。

 また感情的になったときは、その場では、判断するのを、ひかえる。たいていは黙って、その場をやり過ごす。「今のぼくは、本当のぼくではないぞ」と、である。

(2)の「良好な対人関係」と、(3)の「他者との良好な共感性」については、また別の機会に考えてみたい。
(はやし浩司 管理能力 人格の完成度 サロヴェイ 行動の管理能力 EQ EQ論 人格の完成)


Hiroshi Hayashi++++++++July.08++++++++++はやし浩司

●欲望の根源

かつて、私もそうだった。あなたもそうだった。が、今、子どもの心の中では、猛烈な「性的エネルギー」(フロイト)が、わき起こっている。「生的エネルギー」(ユング)でもよい。
 最近の研究によれば、脳の中の視床下部というところが、どうやらそういった信号の発信源ということがわかってきた(サイエンス誌・08年)。その視床下部からの命令を受けて、ドーパミンという脳間伝達物質が放出される。
 このドーパミンが、脳の中の線条体(報酬と行動要求に関する中枢部)というところを刺激すると、猛烈な(欲望)となって、その子ども(もちろんおとなも)を支配する。ふつうの反応ではない。最終的には、そうした欲望をコントロールするのが、大脳の前頭前野(理性の中枢部)ということになる。が、「意志の力だけで、こうした衝動を克服するのはむずかしい」(N・D・ボルコフ)という。
 線条体が刺激を受けると、「あなたは、目的達成に向けた行動を起こせというメッセージを受けとる」(同誌)。
 もちろん欲望といっても、その内容はさまざま。食欲、性欲、生存欲、物欲、支配欲に始まって、もろもろの快楽追求もその中に含まれる。わかりやすく言えば、脳の中で、どのような受容体が形成されるかによって決まる。たとえばアルコール中毒患者やニコチン中毒患者は、それぞれ別の受容体が形成されることがわかっている。
 では、どうするか? そこでEQ論の登場ということになる。

●EQ論

 ピーター・サロヴェイ(アメリカ・イエール大学心理学部教授)の説く、「EQ(Emotional Intelligence Quotient)」、つまり、「情動の知能指数」では、主に、つぎの3点を重視する。
(1)自己管理能力
(2)良好な対人関係
(3)他者との良好な共感性
 この中でとくに重要なのが、(1)の自己管理能力ということになる。その自己管理能力は、どこまで(1)自分で考え、(2)自分で行動し、(3)自分で責任を取るかによって決まる。
 アメリカでは、どこの小学校に行っても、ドアのところなどに、「Independent・・・」
という言葉が張ってある。「独立した……」という意味である。「Independent Thinker(自分で考える人)」というような使い方をする。
 では、あなたの子どもは、どうか?

●子どもの人格テスト(自己管理能力)

(A)小遣いを手にしたとき、将来の自分の夢を達成するために、それを貯金に回す。あるいはささいなことでも、ルールを守り、約束を守る。疲れていても、家事の手伝いなど、やるべきことは、きちんとやる。
(B)小遣いを手にしても、そのときどきに欲しいものがあると、使ってしまう。家庭の中でもルールなど、あってないようなもの。約束を守るということは、まずない。「疲れている」「やりたくない」という言葉をよく使い、家事を手伝わない。
 (A)のようであれば、あなたは自分の子どもを、「すばらしい子ども」と自信をもってよい。(つづく)

●常識を大切に

魚は陸にあがらないよね。
鳥は水の中に入らないよね。
そんなことをすれば死んでしまうこと、
みんな、知っているからね。
そういうのを常識って、言うんだよね。

みんなもね、自分の心に
静かに耳を傾けてみてごらん。
きっとその常識の声が、聞こえてくるよ。
してはいけないこと、
しなければならないこと、
それを教えてくれるよ。

ほかの人へのやさしさや思いやりは、
ここちよい響きがするだろ。
ほかの人を裏切ったり、
いじめたりすることは、
いやな響きがするだろ。
みんなの心は、もうそれを知っているんだよ。
 
あとはその常識に従えばいい。
だってね、人間はね、
その常識のおかげで、
何十万年もの間、生きてきたんだもの。
これからもその常識に従えばね、
みんな仲よく、生きられるよ。
わかったかな。

そういう自分自身の常識を、
もっともっとみがいて、
そしてそれを、大切にしようね。

●それから10年
 この詩を書いてから、もう10年になる。と、同時に、この10年の間の脳科学の進歩には、めざましいものがある。ポジトロンCTや、ファンクショナルMRIなどという装置を使うと、脳の活動がリアルタイムでわかるという。
 で、最近では、善悪の価値判断すらも、脳の一部が分担していることがわかってきた。
 たとえば 大脳半球の中心部に、間脳や脳梁という部分がある。それらを包み込んでいるのが、大脳辺縁系といわれるところだが、ただの「包み」ではない。認知記憶をつかさどる海馬もこの中にあるが、ほかに動機づけを決める帯状回という組織、価値判断をする扁桃核などがあるという(伊藤正男・日本実業出版社「脳のしくみ」)。
つまり「善悪の価値判断」も、大脳生理学の分野では、大脳の活動のひとつとして説明されるようになってきている。
 たとえば人に親切にしたり、やさしくしたりすると、そのシグナルは、扁桃核に伝えられ、そこで扁桃核は、モルヒネ様の物質(エンドロフィン、エンケファリン)を放出する。脳の中を、甘い陶酔感で満たす。
 そして子どもは、(おとなもそうだが…)、「人に親切にしたり、やさしくしたりすることは、気持のよいことだ」と知る。
 そしてさらに言えば、こうした一連の反応は、「条件づけ反応」によって、条件づけされやすいということまでわかってきている(ND・ボルコフ・「サイエンス・07・12」)。
 つまりそれを習慣化することによって、やさしい子どもは、ますますやさしくなり、親切な子どもは、ますます親切になる。
 詩の中に書いた、「ほかの人へのやさしさや思いやりは、ここちよい響きがするだろ」の意味がわかってもらえば、うれしい。
(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司 Hiroshi Hayashi education essayist writer Japanese essayist 常識 常識論 扁桃核 扁桃体)