Education in Front-Line and Essays by Hiroshi Hayashi (はやし浩司)

(Mr.) Hiroshi Hayashi, a professional writer who has written more than 30 his own books on Education, Chinese Medical science and Religion in Japan. My web-site is: http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/ Please don't hesitate to visit my web-site, which is always welcome!!

Monday, June 30, 2008

*Why Children have strong Desire to get

●物欲のメカニズム

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子どもの物欲を満たすのは、慎重に。
それに慣れた子どもは、さらに強い
刺激を求めて、やがて物欲の奴隷に
なる。

子どもの心をモノで釣るようなことは
してはいけない。

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孫の誠司を、あちこちに連れていってみて、驚いた。
ショッピングセンターにも連れて行った。
みやげもの屋にも連れて行った。
コンビニにも連れて行った。
もちろんおもちゃ屋にも、連れて行った。
しかしどこへ連れて行っても、モノをほしがらない。

ただその場で、手に取ってみるだけ。
「ほしい」とか、「買って」とか、言わない。
で、私のほうが、「買ってあげようか?」と声をかけるのだが、
だまっているだけ。
つまり、そういう習慣そのものが、ない。
まったく、ない!
日本の子どもなら、「あれ、買って!」「これ、買って!」と言いそうな
場面でも、そういうことは、いっさい、口にしない。

これは息子の影響というより、嫁のデニーズの影響と思われる。
何回か、デニーズと誠司の買い物に、同行したことがある。
そういうときでも、デニーズと誠司は、そういう会話をいっさい、しない。
「必要なものは買う。しかしそれ以外のものは、いっさい買わない」。
そういう姿勢が徹底している。
つまり先にも書いたように、そういう習慣そのものが、ない。

そういう一例だけをみて、こう判断するのも危険なことかもしれない。
しかし『物欲というのは、習慣によって作られる』。

が、この日本では、モノで子どもの心を買うという習慣が、日常化している。
子どものほしがるものを先に予想して、それを買い与える親は少なくない。
またそれをすることによって、親子の絆(きずな)は太くなると考える。

しかし実際には、逆効果。
感謝されるとしても、一時的。
つぎに今度は、子どものほうから、それを請求してくるようになる。
が、それですまない。

物欲というのは、それを満たせば満たすほど、エスカレートする。
脳の中では、つぎのようなメカニズムが働くためと考えてよい。

何か目新しいものを見たとき、脳の中で、「ほしい」という欲求が生まれる。
(このときすでに条件反射行動(=条件づけ反応)が起きているとみる。)
視床下部あたりから脳に向かって、強力なシグナルが送られる。
それに応じて、ドーパミン(ホルモン)が放出される。
そのドーパミンが、線条体を刺激する。

「この刺激は強烈で、このとき線条体は、『目的達成に向けた行動を起こせ』
というメッセージを受けとる。この刺激は強力で、意志の力だけでこの
衝動を克服するのは、非常に難しい」(K・ローットワイラー・オゼッリほか、
「サイエンス」)という。

喫煙者がタバコの煙をかいだり、アルコール依存症の人が、酒の臭いを
かいだときと同じような現象が、脳の中で起こる。

とたん、子どもは(おとなも)、そのモノを強烈にほしがるようになる。
それはふつうの反応ではない。
ふつうでないことは、たとえばタバコをやめられない人や、酒をやめられない
人のことを考えてみればよい。

しかしこのとき、ドーパミンの働きを打ち消そうという働きも、同時に発生する。
これを大脳生理学の世界では、「フィードバック」と呼んでいる。
つまり、感覚がマヒしてくる。
マヒしてくるから、つぎのときは、さらに強い刺激を求めるようになる。

(実際には、「薬物依存患者などは、線条体に見られる(D2ドーパミン受容体)
の数が少ないのがふつう。……これはおそらく、麻薬などを何度も摂取するたびに
繰りかえされるドーパミンの急増を、脳が何らかの形で相殺しようとしている
のだろう」(同、K・ローットワイラー・オゼッリほか)とのこと。)

こうして物欲は、かぎりなくエスカレートしていく。

だから、子どもにモノを買い与えるのは、最小限にしたほうがよい。
できれば、そういう習慣は、やめたほうがよい。

わかりやすく言えば、一度、物欲にとらわれた子ども(人)は、
それを断ち切るのは容易なことではない。
ばあいによっては、物欲の奴隷となる。
ちょうど喫煙者がタバコの奴隷になり、アルコール依存症の人が、アルコール
の奴隷になるように、だ。

だから、先にも書いたように、モノを買い与えても、感謝するのは
そのときだけ、ということになる。

が、さらに恐ろしいことは、つぎのステップで起こる。

こうした欲望の奴隷になった子ども(人)は、それが満たされないとわかると、
パニック状態になる。
狂乱状態になることもある。

ときどきショッピングセンターなどで、「あれ、買ってエ!」と、泣き叫ぶ
子どもを見かけるが、それもその一例ということになる。

「実際には逆効果」というのは、そういう意味である。

で、だからといって誠司が理想的というわけではない。
現代という社会は、物欲を中心になりたっている。
その物欲が、経済活動の原動力にもなっている。

もし現代という社会で、物欲を否定してしまったら、
社会そのものが、崩壊してしまう。
子ども(人)の立場でいうなら、社会そのものに同化できなく
なってしまう。

「欲しい」という意欲があるからこそ、そこから勤労意欲が生まれる。
だから「ある程度は・・・」ということになる。
ある程度の物欲は必要だし、そのための教育(?)も必要ということになる。
が、あくまでも「ある程度」。
その「程度」を超えたとき、その子どもは、かぎりなくドラ息子化する。

結果として、結局は苦労するのは、その子ども自身ということになる。

それだけは、注意したほうがよい。

(補記)

ドーパミン……快楽追求行動を調整している神経伝達物質
条件づけ反応……報酬と喜びに関連する脳の刺激に対する反応。これによって
       条件づけ反応が生じ、その環境に身を置いただけで、反応が起こる
       ようになる(以上、日経「サイエンス」07-12、p54) 

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