Education in Front-Line and Essays by Hiroshi Hayashi (はやし浩司)

(Mr.) Hiroshi Hayashi, a professional writer who has written more than 30 his own books on Education, Chinese Medical science and Religion in Japan. My web-site is: http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/ Please don't hesitate to visit my web-site, which is always welcome!!

Tuesday, November 25, 2008

*Hyper-Active Children

子どもの多動性を考える法(バイタリティを信じろ!)
子どもの多動性を考えるとき
●抑えがきかない子ども 
 集中力欠如型多動性児(ADHD児)と言われるタイプの子どもがいる。無遠慮(隣の家へあがりこんで、勝手に冷蔵庫の中の物を食べる)、無警戒(塀の中にいる飼い犬に手を出して、かまれる)、無頓着(一階の屋根の上から下へ飛びおりる)などの特徴がある。ふつう意味のないことをペラペラとしゃべり続ける、多弁性をともなう。が、何といっても最大の特徴は、抑えがきかないということ。強く制止しても、その場だけの効果しかない。一分もしないうちに、また騒ぎだす。たいていは乳幼児期からきびしいしつけを受けているため、叱られるということに対して免疫性ができている。それがますます指導を難しくする。
 このタイプの子どもの指導でたいへんなのは、「秩序」そのものを破壊してしまうこと。勝手に騒いで、授業をメチャメチャにしてしまう。それだけではない。その子どもだけを集中的に指導していると、ほかの子どもたちが神経質になってしまう。私もこんな失敗をしたことがある。その子ども(年長男児)を何とか抑えようと四苦八苦していたのだが、ふと横を見ると、隣の女の子が涙ぐんでいた。「どうしたの?」と聞くと、小さい声で、「先生がこわい……」と。
●DSM・Ⅳのマニュアルより
 出現率は、小学校の低学年児では、二〇人に一人ぐらいだが、症状にも軽重があり、その傾向のある子どもまで含めると、一〇人に一人ぐらいの割合で経験する。学習面での特徴としては、①ここにあげた多動性(めまぐるしく動き回る)のほか、②注意力持続困難(注意力が散漫で、先生の話が聞けない。集中できない。根気が続かない)、③衝動性(衝動的行為が多く、突発的に叫んだり暴れたりする)があげられている(アメリカ、障害児診断マニュアル、DSM・Ⅳより)。
●「ママのパンティね、花柄パンティよ!」
 能力的には、遅れが目立つ子どもが約七割、ある特定の分野に、ふつう程度以上の能力を見せる子どもが約三割と私はみている。が、問題はそのことではなく、親自身にその自覚がほとんどないということ。このタイプの子どもは、乳幼児期には、何ごとにつけ天衣無縫。言うことなすこと活発で、そのためほとんどの親は、自分の子どもをむしろ優秀な子どもと誤解する。これがまた指導を難しくする。Mさん(年中児)もそうだった。赤ちゃんのときから、柱にヒモでつながれて育った。そのMさん、参観日のとき、突然、「今日のママのパンティね、花柄パンティよ!」と叫んだ。言ってよいことと悪いことの区別がつかない。が、Mさんの母親は、遊戯会の日まで、天才児と信じていた。その遊戯会でのこと。Mさんは、一人だけ皆から離れて、舞台の前で、ほかの子どもたちに向かって、アッカンベーを繰り返した。そこで私に相談があったので、私は、Mさんが、活発型遅進児の疑いがあると告げた。もう二五年近くも前のことで、当時は多動児という言葉すら、まだ一般的ではなかった。その説明をすると、母親はその場で泣き崩れてしまった。
●教師の経験や技量は関係ない
 脳の機能変調説が有力で、アメリカでは別の施設に移した上で、薬物治療までしている。しかし効果は一時的。たとえば「リタリン」という薬を与えて治療しているそうだが、その薬にしても、三~四時間しか効果がないといわれている。この日本でも薬物療法をするところがふえてはいるが、現場指導が中心。たとえばこの静岡県では、現場の教師に指導が任されている。補助教員や学校ボランティアの付き添いを制度化している市町村もあるが、しかしこの方法では、おのずと限界がある。仮にこのタイプの子どもが、一クラス(三五名)に二~三名もいると、先にも書いたように、クラスそのものがメチャメチャになってしまう。これには教師の経験や技量は、あまり関係ない。
●もちまえのバイタリティが、よい作用に!
 ……こう書くと、このタイプの子どもには未来はない、ということになるが、そうではない。小学三、四年生を過ぎると、それ以後は、自分で自分をコントロールするようになる。騒々しさは残ることは多いが、見た目にはわかりにくくなる。持ち前のバイタリティが、よい方向に作用することもある。集団教育になじまないというだけで、それを除けば子どもとしては、まったく問題はない。つまりそういう視点に立って、仮にここでいうような症状があっても、乳幼児期は、それ以上に、症状をこじらせないことに心がける。こじらせればこじらせるほど、その分、立ちなおりが遅れる。

(付記)
●読者からの抗議
 この原稿を新聞で発表した直後、一人の母親から、猛烈な抗議の電話をもらった。長い電話だった。内容は次のようなものだった。「私の子ども(小四男児)は多動児だ」、「多動児を一方的に悪いと決めつけないでほしい」、「先生がたの熱心な指導で、改善している」、「そういう先生の熱意と努力を、あなたは無視している」、「だから文中の『教師の技量や経験は、あまり関係ない』という個所を訂正してほしい」と。
 誤解があるといけないので、申し添えるが、私は三〇歳のときから四〇歳になるまで、毎年二~四人のこのタイプの子どもを預かって指導したことがある。私のほうから頼んで教室に来てもらったこともあり、費用は一円も受け取っていない。そういう経験の上で、この文を書いた。確かに新聞紙上では、あちこちを切りつめて発表したので、こまかい点では配慮が足りなかった。それについては、その母親に謝った。
●誰がそう診断したか?
 しかしここで一つの大きな疑問にぶつかる。その母親は、「私の子どもは多動児だ」と言ったが、誰がそのような診断をしたかという疑問である。学校の教師でないことは確かだ。どこかの医療機関が診断したとしても、まだADHD児の診断基準すら確立されていないこの日本で、どうやって診断したというのだろうか。多動性があるからといって、多動児ということにはならない。風邪をひけば熱が出るが、熱があるからといって風邪とは限らない。それと同じ理屈だ。私も親や子どもの前で、多動児という言葉を使ったことは一度もない。
●知らぬフリをして教えるのが教育
 教育にははっきりわからなくてもよいことは山ほどある。またわかっていても、知らぬフリをして教えるということもある。病気の世界では、まず診断名をくだし、つづいてその診断名にもとづいて治療を開始する。しかし教育の世界では、診断名をくだすこと自体、ありえない。治療法もないのに、診断名だけをくだすことは許されないのだ。それにそもそも教育は治療ではない。また治療であってはならない。仮に一つのクラスが多動性児によって混乱したとしても、教育者が考えるべきことは、クラスの立てなおしであって、その子どもの治療ではない。ただ親が、こうした資料をもとに、それとなく自分の子どもがそうではないかと知ることは必要である。そしてそういう知識をもとに、それぞれの専門機関に相談してみることは必要である。ここに書いたことは、そういう目的で使ってほしい。

(参考)
●多動児の診断基準
 多動児(集中力欠如型多動性児、ADHD児)の診断基準は、二〇〇一年の春、厚生労働省の研究班が国立精神神経センター上林靖子氏ら委託して、そのひな型が作成されたばかりで、先にも書いたように、いまだこの日本には、多動児の診断基準はないというのが正しい。つまり正確には、この日本には多動児という子どもは存在しないということになる。一般に多動児というときは、落ちつきなく動き回るという多動性のある子どもをいうことになる。そういう意味では、活発型の自閉症児なども多動児ということになるが、ここでは区別して考える。
(チェック項目)










10
11 行動が幼い
注意が続かない
落ちつきがない
混乱する
考えにふける
衝動的
神経質
体がひきつる
成績が悪い
不器用
一点をみつめる
 ちなみに厚生労働省がまとめた診断基準(親と教師向けの「子どもの行動チェックリスト」)は、次のようになっている。









たいへんまたはよくあてはまる……2点、
ややまたは時々あてはまる  ……1点、
当てはまらない       ……0点として、
男子で4~15歳児のばあい、
12点以上は障害があることを意味する「臨床域」、
9~11点が「境界域」、
8点以下なら「正常」
●私の診断基準
この診断基準で一番気になるところは、「抑え」について触れられていない点である。多動児が多動児であるのは、抑え、つまり指導による制止がきかない点である。教師による抑えがきけば、多動児は多動児でないということになる。一方、過剰行動性のある子どもは行動が突発的に過剰になるというだけで、抑えがきく。その抑えがきくという点で、多動児と区別される。また活発型の自閉症児について言えば、多動性はあくまでも随伴的な症状でしかない。
私は次のようなチェックリストを考えた。







(チェック項目)










10
11 抑えがきかない
言動に秩序感がない
他人に無遠慮、無頓着
雑然とした騒々しさがある
注意力が散漫
行動が突発的で衝動的
視線が定まらない
情報の吸収性がない(注)
鋭いひらめきと愚鈍性
論理的な思考ができない
1思考力が弱い










(注)情報を常に自分から他人に向けてのみ発信する。他人の情報を吸収しない。