Education in Front-Line and Essays by Hiroshi Hayashi (はやし浩司)

(Mr.) Hiroshi Hayashi, a professional writer who has written more than 30 his own books on Education, Chinese Medical science and Religion in Japan. My web-site is: http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/ Please don't hesitate to visit my web-site, which is always welcome!!

Tuesday, November 25, 2008

*Seperation Anxiety

こわがる子どもを考える法(恐怖症を軽く考えるな!)
子どもが恐怖症になるとき
●九死に一生
 先日私は、交通事故で、あやうく死にかけた。九死に一生とは、まさにあのこと。今、こうして文を書いているのが、不思議なくらいだ。が、それはそれとして、そのあと、妙な現象が現れた。夜、自転車に乗っていたのだが、すれ違う自動車が、すべて私に向かって走ってくるように感じた。私は少し走っては自転車からおり、少し走ってはまた、自転車からおりた。こわかった……。恐怖症である。子どもはふとしたきっかけで、この恐怖症になりやすい。
 たとえば以前、『学校の怪談』というドラマがはやったことがある。そのとき「小学校へ行きたくない」と言う園児が続出した。あるいは私の住む家の近くの湖で水死体があがったことがある。その直後から、その近くの小学校でも、「こわいから学校へ行きたくない」という子どもが続出した。これは単なる恐怖心だが、それが高じて、精神面、身体面に影響が出ることがある。それが恐怖症だが、この恐怖症は子どものばあい、何に対して恐怖心をいだくかによって、ふつう、次の三つに分けて考える。
①対人(集団)恐怖症……子ども、とくに幼児のばあい、新しい人の出会いや環境に、ある程度の警戒心をもつことは、むしろ正常な反応とみる。知恵の発達がおくれぎみの子どもや、注意力が欠如している子どもほど、周囲に対して、無警戒、無頓着で、はじめて行ったような場所でも、わがもの顔で騒いだりする。が、反対にその警戒心が、一定の限度を超えると、人前に出ると、声が出なくなる(失語症)、顔が赤くなる(赤面症)、冷や汗をかく、幼稚園や学校がこわくて行けなくなる(学校恐怖症)などの症状が表れる。さらに症状がこじれると、外出できない、人と会えない、人と話せないなどの症状が表れることもある。
②場面恐怖症……その場面になると、極度の緊張状態になることをいう。エレベーターに乗れない(閉所恐怖症)、鉄棒に登れない(高所恐怖症)などがある。これはある子ども(小一男児)のケースだが、毎朝学校へ行く時刻になると、いつもメソメソし始めるという。親から相談があったので調べてみると、原因はどうやら学校へ行くとちゅうにある、トンネルらしいということがわかった。その子どもは閉所恐怖症だった。実は私も子どものころ、暗いトイレでは用を足すことができなかった。それと関係があるかどうかは知らないが、今でも窮屈なトンネルなどに入ったりすると、ぞっとするような恐怖感を覚える。
③そのほかの恐怖症……動物や虫をこわがる(動物恐怖症)、死や幽霊、お化けをこわがる、先のとがったものをこわがる(先端恐怖症)などもある。何かのお面をかぶって見せただけで、ワーッと泣き出す「お面恐怖症」の子どもは、一五人に一人はいる(年中児)。ただ子どものばあい、恐怖症といってもばくぜんとしたものであり、問いただしてもなかなか原因がわからないことが多い。また症状も、そのとき出るというよりも、その前後に出ることが多い。これも私のことだが、私は三〇歳になる少し前、羽田空港で飛行機事故を経験した。そのためそれ以来、ひどい飛行機恐怖症になってしまった。何とか飛行機には乗ることはできるが、いつも現地ではひどい不眠症になってしまう。「生きて帰れるだろうか」という不安が不眠症の原因になる。また一度恐怖症になると、その恐怖症はそのつど姿を変えていろいろな症状となって表れる。高所恐怖症になったり、閉所恐怖症になったりする。脳の中にそういう回路(パターン)ができるためと考えるとわかりやすい。私のケースでは、幼いころの閉所恐怖症が飛行機恐怖症になり、そして今回の自動車恐怖症となったと考えられる。
●忘れるのが一番
 子ども自身の力でコントロールできないから、恐怖症という。そのため説教したり、叱っても意味がない。一般に「心」の問題は、一年単位、二年単位で考える。子どもの立場で、子どもの視点で、子どもの心を考える。無理な誘導や強引な押しつけは、タブー。無理をすればするほど、逆効果。ますます子どもはものごとをこわがるようになる。いわば心が熱を出したと思い、できるだけそのことを忘れさせるようにする。症状だけをみると、神経症と区別がつきにくい。私のときも、その事故から数日間は、車の速度が五〇キロ前後を超えると、目が回るような状態になってしまった。「気のせいだ」とはわかっていても、あとで見ると、手のひらがびっしょりと汗をかいていた。が、少しずつ自分をスピードに慣れさせ、何度も自分に、「こわくない」と言いきかせることで、克服することができた。いや、今でもときどき、あのときの模様を思い出すと、夜中でも興奮状態になってしまう。恐怖症というのはそういうもので、自分の理性や道理ではどうにもならない。そういう前提で、子どもの恐怖症には対処する。

(付記)
●不登校と怠学
不登校は広い意味で、恐怖症(対人恐怖症など)の一つと考えられているが、恐怖症とは区別する。この不登校のうち、行為障害に近い不登校を怠学という。うつ病の一つと考える学者もいる。不安障害(不安神経症)が、その根底にあって、不登校の原因となると考えるとわかりやすい。


子どもの分離不安を考える法(症状に注意せよ!)
子どもが分離不安になるとき
●親子のきずなに感動した!?     
 ある女性週刊誌の子育てコラム欄に、こんな手記が載っていた。日本でもよく知られたコラムニストの書いたものだが、いわく、「うちの娘(三歳)をはじめて幼稚園へ連れていったときのこと。娘ははげしく泣きじゃくり、私との別れに抵抗した。私はそれを見て、親子の絆の深さに感動した」と。そのコラムニストは、ワーワーと泣き叫ぶ子どもを見て、「親子の絆の深さ」に感動したと言うのだ。とんでもない! ほかにもあれこれ症状が書かれていたが、それはまさしく分離不安の症状。「別れをつらがって泣く子どもの姿」では、ない。
●分離不安は不安発作
 分離不安。親の姿が見えなくなると、発作的に混乱して、泣き叫んだり暴れたりする。大声をあげて泣き叫ぶタイプ(プラス型)と、思考そのものが混乱状態になり、オドオドするタイプ(マイナス型)に分けて考える。似たようなタイプの子どもに、単独では行動ができない子ども(孤立恐怖)もいるが、それはともかくも、分離不安の子どもは多い。四~六歳児についていうなら、一五~二〇人に一人くらいの割合で経験する。親が子どもの見える範囲内にいるうちは、静かに落ちついている。が、親の姿が見えなくなったとたん、ギャーッと、ものすごい声をはりあげて、そのあとを追いかけたりする。
●過去に何らかの事件
 原因は……、というより、分離不安の子どもをみていくと、必ずといってよいほど、そのきっかけとなった事件が、過去にあるのがわかる。はげしい家庭内騒動、離婚騒動など。母親が病気で入院したことや、置き去り、迷子を経験して、分離不安になった子どももいる。さらには育児拒否、冷淡、無視、親の暴力、下の子どもが生まれたことが引き金となった例もある。子どもの側からみて、「捨てられるのでは……」という被害妄想が、分離不安の原因と考えるとわかりやすい。無意識下で起こる現象であるため、叱ったりしても意味がない。表面的な症状だけを見て、「集団生活になれていないため」とか、「わがまま」とか考える人もいるが、無理をすればかえって症状をこじらせてしまう。いや、実際には無理に引き離せば混乱状態になるものの、しばらくするとやがて静かに収まることが多い。しかしそれで分離不安がなおるのではない。「もぐる」のである。一度キズついた心は、そんなに簡単になおらない。この分離不安についても、そのつど繰り返し症状が表れる。
●鉄則は無理をしない
 こうした症状が出てきたら、鉄則はただ一つ。無理をしない。その場ではやさしくていねいに説得を繰り返す。まさに根気との勝負ということになるが、これが難しい。現場で、そういう親子を観察すると、たいてい親のほうが短気で、顔をしかめて子どもを叱ったり、怒ったりしているのがわかる。「いいかげんにしなさい」「私はもう行きますからね!」と。こういう親子のリズムの乱れが、症状を悪化させる。子どもはますます強く被害妄想をもつようになる。分離不安を神経症の一つに分類している学者も多い(牧田清志氏ほか)。
 分離不安は四~五歳をピークとして、症状は急速に収まっていく。しかしここに書いたように、一度キズついた心は、簡単にはなおらない。ある母親はこう言った。「今でも、夫の帰宅が予定より遅くなっただけで、言いようのない不安発作に襲われます」と。姿や形を変えて、おとなになってからも症状が表れることがある。

(付記)
●分離不安は小児うつ病?
子どもは離乳期に入ると、母親から身体的に分離し始め、父親や周囲の者との心理的つながりを求めるようになる。自我の芽生え、自立心、道徳的善悪の意識などがこの時期に始まる。そしてさらに三歳前後になると、母親から心理的にも分離しようとするが、この時期に、母子の間に問題があると、この心理的分離がスムーズにいかず、分離不安を起こすと考えられている(クラウスほか)。小児うつ病の一形態と考える学者も多い。症状がこじれると、慢性的な発熱、情緒不安症状、さらには神経症による諸症状を示すこともある。