Education in Front-Line and Essays by Hiroshi Hayashi (はやし浩司)

(Mr.) Hiroshi Hayashi, a professional writer who has written more than 30 his own books on Education, Chinese Medical science and Religion in Japan. My web-site is: http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/ Please don't hesitate to visit my web-site, which is always welcome!!

Tuesday, November 25, 2008

*Juvenile delinquency

子どもの欲求不満を防ぐ法(スキンシップでなおせ!)
子どもが欲求不満になるとき
●欲求不満の三タイプ
 子どもは自分の欲求が満たされないと、欲求不満を起こす。この欲求不満に対する反応は、ふつう、次の三つに分けて考える。
①攻撃・暴力タイプ
 欲求不満やストレスが、日常的にたまると、子どもは攻撃的になる。心はいつも緊張状態にあり、ささいなことでカッとなって、暴れたり叫んだりする。私が「このグラフは正確でないから、かきなおしてほしい」と話しかけただけで、ギャーと叫んで私に飛びかかってきた小学生(小四男児)がいた。あるいは私が、「今日は元気?」と声をかけて肩をたたいた瞬間、「このヘンタイ野郎!」と私を足げりにした女の子(小五)もいた。こうした攻撃性は、表に出るタイプ(喧嘩する、暴力を振るう、暴言を吐く)と、裏に隠れてするタイプ(弱い者をいじめる、動物を虐待する)に分けて考える。
②退行・依存タイプ
 ぐずったり、赤ちゃんぽくなったり(退行性)、あるいは誰かに依存しようとする(依存性)。このタイプの子どもは、理由もなくグズグズしたり、甘えたりする。母親がそれを叱れば叱るほど、症状が悪化するのが特徴で、そのため親が子どもをもてあますケースが多い。
③固着・執着タイプ
 ある特定の「物」にこだわったり(固着性)、あるいはささいなことを気にして、悶々と悩んだりする(執着性)。ある男の子(年長児)は、毛布の切れ端をいつも大切に持ち歩いていた。最近多く見られるのが、おとなになりたがらない子どもたち。赤ちゃんがえりならぬ、幼児がえりを起こす。ある男の子(小五)は、幼児期に読んでいたマンガの本をボロボロになっても、まだ大切そうにカバンの中に入れていた。そこで私が、「これは何?」と声をかけると、その子どもはこう言った。「どうチェ、読んでは、ダメだというんでチョ。読んでは、ダメだというんでチョ」と。子どもの未来を日常的におどしたり、上の兄や姉のはげしい受験勉強を見て育ったりすると、子どもは幼児がえりを起こしやすくなる。
 またある特定のものに依存するのは、心にたまった欲求不満をまぎらわすためにする行為と考えるとわかりやすい。これを代償行為というが、よく知られている代償行為に、指しゃぶり、爪かみ、髪いじりなどがある。別のところで何らかの快感を覚えることで、自分の欲求不満を解消しようとする。
●欲求不満は愛情不足
 子どもがこうした欲求不満症状を示したら、まず親子の愛情問題を疑ってみる。子どもというのは、親や家族の絶対的な愛情の中で、心をはぐくむ。ここでいう「絶対的」というのは、「疑いをいだかない」という意味。その愛情に「ゆらぎ」を感じたとき、子どもの心は不安定になる。ある子ども(小一男児)はそれまでは両親の間で、川の字になって寝ていた。が、小学校に入ったということで、別の部屋で寝るようになった。とたん、ここでいう欲求不満症状を示した。その子どものケースでは、目つきが鋭くなるなどの、いわゆるツッパリ症状が出てきた。子どもなりに、親の愛がどこかでゆらいだのを感じたのかもしれない。母親は「そんなことで……」と言ったが、再び川の字になって寝るようになったら、症状はウソのように消えた。
●濃厚なスキンシップが有効
 一般的には、子どもの欲求不満には、スキンシップが、たいへん効果的である。ぐずったり、わけのわからないことをネチネチと言いだしたら、思いきって子どもを抱いてみる。最初は抵抗するような様子を見せるかもしれないが、やがて静かに落ちつく。あとはカルシウム分、マグネシウム分の多い食生活に心がける。
 なおスキンシップについてだが、日本人は、国際的な基準からしても、そのスキンシップそのものの量が、たいへん少ない。欧米人のばあいは、親子でも日常的にベタベタしている。よく「子どもを抱くと、子どもに抱きグセがつかないか?」と心配する人がいるが、日本人のばあい、その心配はまずない。そのスキンシップには、不思議な力がある。魔法の力といってもよい。子どもの欲求不満症状が見られたら、スキンシップを濃厚にしてみる。それでたいていの問題は解決する。


子どもの非行を防ぐ法(無理、強制は避けろ!)
子どもが非行に走るとき  
●日々の生活の積み重ねで決まる
 よい子(?)も、そうでない子(?)も、大きな違いがあるようで、それほど違いはない。日々の生活の積み重ねで、よい子はよい子になり、そうでない子はそうでなくなる。たとえば非行。盗み、いじめ、暴力、喫煙、性犯罪、集団非行など。親が「うちの子に限って……」「まさか……」と思っているうちに、子どもは非行に走るようになる。しかもある日、突然に、だ。それはちょうど、ものが臨界点を超えて、突然、爆発するのに似ている。
●こぼれた水は戻らない
 子どもは、なだらかな坂をのぼるように成長するのではない。ちょうど階段をトントンとのぼるように成長する。子どもが悪くなるときも、そうだ。(悪くなる)→(何とかしようと親があせる)→(さらに悪くなる)の悪循環の中で、子どもは、トントンと悪くなる。その一つが、非行。暴力、暴行、窃盗、万引き、性行為、飲酒、喫煙、集団非行、夜遊び、外泊、家出など。最初は、遠慮がちに、しかも隠れて悪いことをしていた子どもでも、(叱られる)→(居なおる)→(さらに叱られる)の悪循環を繰り返すうちに、ますます非行に走るようになる。この段階で親がすべきことは、「それ以上、症状を悪化させないこと」だが、親にはそれがわからない。「なおそう」とか、「元に戻そう」とする。しかし一度、盆からこぼれた水は、簡単には戻らない。が、親は、無理に無理を重ねる……。
●症状は一挙に悪化する
 子どもが非行に走るようになると、独特の症状を見せるようになる。脳の機能そのものが、変調すると考えるとわかりやすい。「心の病気」ととらえる人もいる。実際アメリカでは、非行少年に対して薬物療法をしているところもある。それはともかくも前兆がないわけではない。その一つ、生活習慣がだらしなくなる。たとえば目標や規則が守れない(貯金を使ってしまう。時間にルーズになる)、自己中心的(ゲームに負けると怒る。わがままで自分勝手)になり、無礼、無作法な態度(おとなをなめるような言動、暴言)が目立つようになる。この段階で家庭騒動、家庭崩壊など、子どもを取り巻く環境が不安定になると、症状は一挙に悪化する。
●特徴
 その特徴としては、①拒否的態度(「ジュースを飲むか?」と声をかけても、即座に、「イラネエ~」と拒否する。意識的に拒否するというよりは、条件反射的に拒否する)、②破滅的態度(ものの考え方が、投げやりになり、他人に対するやさしさや思いやりが消える。無感動、無関心になる。他人への迷惑に無頓着になる。バイクの騒音を注意しても、それが理解できない)、③自閉的態度(自分のカラに閉じこもり、独自の価値観を先鋭化する。「死」「命」「殺」などという、どこか悪魔的な言葉に鋭い反応を示すようになる。「家族が迷惑すれば、結局はあなたも損なのだ」と話しても、このタイプの子どもにはそれが理解できない。親のサイフからお金を抜き取って、それを使い込むなど)、④野獣的態度(行動が動物的になり、動作も、目つきが鋭くなり、肩をいからせて歩くようになる。考え方も、直感的、直情的になり、「文句のあるヤツは、ぶっ殺せ」式の、短絡したものの考え方をするようになる)など。心の中はいつも緊張状態にあって、ささいなことで激怒したり、キレやすくなる。また一度激怒したり、キレたりすると、感情をコントロールできなくなることが多い。
●プラス型とマイナス型
 もっともこうした症状が「表」に出る子どもは、まだよいほうだ。中には「内」にこもる子どもがいる。前者をプラス型というなら、後者はマイナス型ということになる。威圧的な家庭環境、親の過干渉、過関心が日常的に続くと、子どもの心は閉塞的になり、マイナス型になる。家の中に引きこもったり、陰湿ないじめや、動物への虐待などを日常的に繰り返したりする。妄想をもちやすく、ものの考え方が極端になりやすい。私がA君(小一)に、「ブランコを横取りされました。そういうときあなたはどうしますか」と聞いたときのこと。A君はこうつぶやいた。「そういうヤツは、ぶん殴ってやればいい。どうせ口で言ってもわかんねえ」と。
●家庭生活の猛省を!
 こうした症状が見られたら、できるだけ初期の段階で、親は家庭のあり方を猛省しなければならない。しかしこれが難しい。たいていの親は原因を外へ求めようとする。「友だちが悪い」「うちの子は、そそのかされているだけ」と。しかし反省すべきは、まず家庭のあり方である。で、このタイプの親は、大きく次の二つのタイプに分けることができる。
①エリートタイプ……一つは、エリート意識が強く、他人の話に耳を傾けないタイプ。独断意識が強い(※)。このタイプの親は、私のような立場の者がアドバイスしても、ムダ。「子どものことは私が一番よく知っている」という確信のもと、その返す刀で、相手に向かっては、「あなたには本当のことがわかっていない」と、はねのけてしまう。本来そうならないためにも、ほかの父母との交流を多くして、風通しをよくしなければならない。が、その交流もしない。あるいはしても形式的。見栄、メンツ、世間体を優先させてしまう。
②無責任タイプ……もう一つは、無責任で無教養なタイプ。その自覚がないだけではなく、さらに強制的に子どもをなおそうとする。暴力を加えることも多い。家庭の秩序そのものが、崩壊している。ある中学校の校長は私にこう言った。「本当はこのタイプの親ほど、懇談会などにも出席してほしいのですが、このタイプの親ほど来てくれません」と。子育てそのものから逃げてしまう。あるいは子どもの言いなりになってしまう。あとはこの悪循環。盲目的な溺愛が、子どもの変化を見落としてしまうこともある。私が「どうもよくない遊びをしているようですよ」と話したとき、「私では何も言えません。先生のほうから言ってください」と頼んできた母親もいた。
●最後の「糸」を切らない
 家族でも先生でも、誰かと一本の「糸」で結ばれている子どもは、非行に走る一歩手前で、自分をコントロールすることができる。が、その糸が切れたとき、あるいは子どもが「切れた(捨てられた)」と感じたとき、子どもの非行は一挙に加速する。だから子どもの心がゆがみ始めたら(そう感じたら)、なおさら、その糸を大切にする。「どんなことがあっても、私はあなたを愛していますからね」「どんなことがあっても、私はあなたのそばにいますからね」という姿勢を、徹底的に貫く。
子どもというのは、自分を信じてくれる人の前では、自分のよい面を見せようとする。そういう性質をうまく使って、子どもを非行から立ちなおらせる。そのためにも最後の「糸」は切ってはいけない。切れば切ったで、ちょうど糸の切れた凧のように、子どもは心のより所をなくしてしまう。そしてここが重要だが、このタイプの子どもは、「なおそう」とは思わないこと。現在の症状を今より悪化させないことだけを考えて、時間をかけて様子をみる。
 一般に、この非行も含めて、「心の問題」は、一年単位(一年でも短いほうだが……)で、その推移を見守る。無理をすれば、「以前のほうが症状が軽かった」ということを繰り返しながら、症状はさらにドロ沼化する。そしてその分、子どもの立ちなおりは遅れる。

※……特に最近の傾向として、「①外からとくに指摘される外形的問題は見られない、②親は高学歴で経済的に安定している、③教育熱心で学校にも協力的である、④親の過保護、過度の期待が潜在している」(日本教育新聞社・教育ファイル)ということも指摘されている。

(参考)
●ふえる「いきなり型」の非行
 二〇〇一年度版『青少年白書』によれば、「最近の少年非行の特徴として、凶悪犯で検挙された少年のうち、過去に非行歴のない少年が全体の約半数を占めている」という。白書はそれについて、「一見おとなしくて目立たない『ふつうの子』が、内面に不満やストレスを抱え、それが爆発して起きる『いきなり型』の非行が新たに生じてきている」と分析している。
 そして最近の非行少年の共通点として、①自己中心的な価値観をもち、規範意識や被害者に対する贖罪感(罪をあがなう意識)が低い、②コミュニケーション能力が低いことをあげている。その要因としては、「少年の内面的な特徴について、対人関係がうまく結べないことをあげ、パソコンや携帯電話の普及で、性や暴力に関する有害情報に接しやすい環境になっている」と、パソコンや携帯電話の弊害を指摘している。ちなみに浜松市の西隣に湖西市という人口が四万人の町がある。その町の高校三年生に聞いてみたところ、二クラス計七二人のうち、携帯電話を持っていないのは、五人のみだそうだ(二〇〇一年一一月)。普及率は、九四%ということになる。「携帯電話を持っていない人はどういう人か」と質問すると、「友だちがいないヤツ」「変わり者」「つきあいの悪いヤツ」という答が返ってきた。