Education in Front-Line and Essays by Hiroshi Hayashi (はやし浩司)

(Mr.) Hiroshi Hayashi, a professional writer who has written more than 30 his own books on Education, Chinese Medical science and Religion in Japan. My web-site is: http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/ Please don't hesitate to visit my web-site, which is always welcome!!

Tuesday, November 25, 2008

*ticks

子どものウソをつぶす法(過干渉を避けろ!)
子どもがウソをつくとき
●ウソにもいろいろ
 ウソをウソとして自覚しながら言うウソ「虚言」と、あたかも空想の世界にいるかのようにしてつくウソ「空想的虚言」は、区別して考える。
 虚言というのは、自己防衛(言い逃れ、言いわけ、自己正当化など)、あるいは自己顕示(誇示、吹聴、自慢、見栄など)のためにつくウソをいう。子ども自身にウソをついているという自覚がある。母「誰、ここにあったお菓子を食べたのは?」、子「ぼくじゃないよ」、母「手を見せなさい」、子「何もついてないよ。ちゃんと手を洗ったから……」と。
 同じようなウソだが、思い込みの強い子どもは、思い込んだことを本気で信じてウソをつく。「昨日、通りを歩いたら、幽霊を見た」とか、「屋上にUFOが着陸した」というのがそれ。その思い込みがさらに激しく、現実と空想の区別がつかなくなってしまった状態を、空想的虚言という。こんなことがあった。
●空想の世界に生きる子ども
 ある日突然、一人の母親から電話がかかってきた。そしてこう言った。「うちの子(年長男児)が手に大きなアザをつくってきました。子どもに話を聞くと、あなたにつねられたと言うではありませんか。どうしてそういうことをするのですか。あなたは体罰反対ではなかったのですか!」と。ものすごい剣幕だった。が、私には思い当たることがない。そこで「知りません」と言うと、その母親は、「どうしてそういうウソを言うのですか。相手が子どもだと思って、いいかげんなことを言ってもらっては困ります!」と。
 その翌日その子どもと会ったので、それとなく話を聞くと、「(幼稚園からの)帰りのバスの中で、A君につねられた」と。そのあと聞きもしないのに、ことこまかに話をつなげた。が、そのあとA君に聞くと、A君も「知らない……」と。結局その子どもは、何らかの理由で母親の注意をそらすために、自分でわざとアザをつくったらしい……、ということになった。こんなこともあった。
●「お前は自分の生徒を疑うのか!」
 ある日、一人の女の子(小四)が、私のところへきてこう言った。「集金のお金を、バスの中で落とした」と。そこでカバンの中をもう一度調べさせると、集金の袋と一緒に入っていたはずの明細書だけはカバンの中に残っていた。明細書だけ残して、お金だけを落とすということは、常識では考えられなかった。そこでその落としたときの様子をたずねると、その女の子は無表情のまま、やはりことこまかに話をつなげた。「バスが急にとまったとき体が前に倒れて、それでそのときカバンがほとんど逆さまになり、お金を落とした」と。しかし落としたときの様子を覚えているというのもおかしい。落としたなら落としたで、そのとき拾えばよかった……?
 で、この話はそれで終わったが、その数日後、その女の子の妹(小二)からこんな話を聞いた。何でもその女の子が、親に隠れて高価な人形を買ったというのだ。値段を聞くと、落としたという金額とほぼ一致していた。が、この事件だけではなかった。そのほかにもおかしなことがたびたび続いた。「宿題ができなかった」と言ったときも、「忘れ物をした」と言ったときも、そのつど、どこかつじつまが合わなかった。そこで私は意を決して、その女の子の家に行き、父親にその女の子の問題を伝えることにした。が、私の話を半分も聞かないうちに父親は激怒して、こう叫んだ。「君は、自分の生徒を疑うのか!」と。そのときはじめてその女の子が、奥の部屋に隠れて立っているのがわかった。「まずい」と思ったが、目と目があったその瞬間、その女の子はニヤリと笑った。
ほかに私の印象に残っているケースでは、「私はイタリアの女王!」と言い張って、一歩も引きさがらなかった、オーストラリア人の女の子(六歳)がいた。「イタリアには女王はいないよ」といくら話しても、その女の子は「私は女王!」と言いつづけていた。
●空中の楼閣に住まわすな
 イギリスの格言に、『子どもが空中の楼閣を想像するのはかまわないが、そこに住まわせてはならない』というのがある。子どもがあれこれ空想するのは自由だが、しかしその空想の世界にハマるようであれば、注意せよという意味である。このタイプの子どもは、現実と空想の間に垣根がなくなってしまい、現実の世界に空想をもちこんだり、反対に、空想の世界に限りないリアリティをもちこんだりする。そして一度、虚構の世界をつくりあげると、それがあたかも現実であるかのように、まさに「ああ言えばこう言う」式のウソを、シャーシャーとつく。ウソをウソと自覚しないのが、その特徴である。
●ウソは、静かに問いつめる
 子どものウソは、静かに問いつめてつぶす。「なぜ」「どうして」を繰り返しながら、最後は、「もうウソは言わないこと」ですます。必要以上に子どもを責めたり、はげしく叱れば叱るほど、子どもはますますウソがうまくなる。
 問題は空想的虚言だが、このタイプの子どもは、親の前や外の世界では、むしろ「できのいい子」という印象を与えることが多い。ただ子どもらしいハツラツとした表情が消え、教える側から見ると、心のどこかに膜がかかっているようになる。いわゆる「何を考えているかわからない子ども」といった感じになる。
 こうした空想的虚言を子どもの中に感じたら、子どもの心を開放させることを第一に考える。原因の第一は、強圧的な家庭環境にあると考えて、親子関係のあり方そのものを反省する。とくにこのタイプの子どものばあい、強く叱れば叱るほど、虚構の世界に子どもをやってしまうことになるから注意する。


子どものチックを考える法(クセと誤解するな!)
子どもがチックになるとき
●チックの子ども 
 チックと呼ばれる、よく知られた症状がある。幼児の一〇人に一人ぐらいの割合で経験する。「筋肉の習慣性れん縮」とも呼ばれ、筋肉の無目的な運動のことをいう。子どもの意思とは無関係に起こる。時と場所を選ばないのが特徴で、これをチックの不随意性という。たいていは首から上に症状が出る。首をギクギクと動かす、目をまばたきさせる、眼球をクルクル動かす、咳払いをする、のどをウッウッとうならせるなど。つばを吐く、つばをそでにこすりつけるというのもある。上体をグイグイと動かしたり、さらにひどくなると全身がけいれん状態になり、呼吸困難におちいることもある。稀に数種類のチックを、同時に発症することもある。七~八歳をピークとして発症するが、おかしな行為をするなと感じたら、このチックを疑ってみる。症状は千差万別で、そのためたいていの親は、それを「変なクセ」と誤解する。しかしチックはクセではない。だから注意をしたり、叱っても意味がない。ないだけではなく、親が神経質になればなるほど、症状はひどくなる。
●回り道をして賢くなる?
 ……というようなことは、私たちの世界では常識中の常識なのだが、どんな親も、親になったときから、すべてを一から始める。チックを知らないからといって、恥じることはない。ただ子育てには謙虚であってほしい。あなたは何でも知っているつもりかもしれないが、知らないことのほうが多い。こんな子ども(年長女児)がいた。その子どもは、母親が何度注意をしても、つばを服のそでにこすりつけていた。そのため、服のそでは、唾液でベタベタ。そこで私はその母親に、「チックです」と告げたが、母親は私の言うことなど信じなかった。病院へ連れていき、脳波検査をした上、脳のCTスキャンまでとって調べた。異常など見つかるはずはない。そのあともう一度、私に相談があった。親というのはそういうもので、それぞれが回り道をしながら、一つずつ賢くなっていく。
●原因は神経質な子育て
 原因は神経質な子育て。親の拘束的(子どもをしばりつける)かつ権威主義的な過干渉(「親の言うことを聞きなさい」式に、親の価値観を一方的に押しつける)、あるいは親の完ぺき主義(こまかいことまできちんとさせる)などがある。子どもの側からみて息が抜けない環境が、子どもの心をふさぐ。一般的には一人っ子に多いとされるのは、それだけ親の関心が子どもに集中するため。しかもその原因のほとんどは、親自身にある。が、それも親にはわからない。完ぺきであることを、理想的な親の姿であると誤解している。あるいは「自分はふつうだ」と思い込んでいる。その誤解や思い込みが強ければ強いほど、人の話に耳を傾けない。それがますます子育てを独善的なものにする。が、それで悲劇は終わらない。
チックはいわば、黄信号。その症状が進むと、神経症、さらには情緒障害、さらにひどくなると、精神障害にすらなりかねない。が、子どもの心の問題は、より悪くなってから、前の症状が軽かったことに気づく。親はそのときの症状だけをみて、子どもをなおそうとするが、そういう近視眼的なものの見方が、かえって症状を悪化させる。そしてあとは底無しの悪循環。
●症状はすぐには消えない
 チックについて言うなら、仮に親が猛省したとしても、症状だけはそれ以後もしばらく残る。子どもによっては数年、あるいはもっと長く続く。クセとして定着してしまうこともある。おとなでもチック症状をみせる人は、いくらでもいる。日本を代表するような有名人でも、ときどき眼球をクルクルさせたり、首を不自然に回したりする人はいくらでもいる。心というのはそういうもので、一度キズがつくと、なかなかなおらない。

(参考)
●チックの症状
 チックの症状は、千差万別だが、たいていは首から上の頭部に症状が表れる。ふつうでないと思われるようなクセが続いたら、このチックを疑ってみる。