Education in Front-Line and Essays by Hiroshi Hayashi (はやし浩司)

(Mr.) Hiroshi Hayashi, a professional writer who has written more than 30 his own books on Education, Chinese Medical science and Religion in Japan. My web-site is: http://www2.wbs.ne.jp/~hhayashi/ Please don't hesitate to visit my web-site, which is always welcome!!

Tuesday, March 04, 2008

Independence of Children

●子どもの自立

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Yさん(女性、母親)からのメール
が届いた。

夫のカードローンが、家計を圧迫している。
子どもが、タオルを一日中、吸っている。
夫に、おかしな性癖(?)があるなどなど。

そのため離婚を考えているが、どうしたら
よいか、と。

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 子育ての究極の目標は、子どもを自立させること。それは常識だが、その自立のカギをにぎるのは、そんなわけで、母親ということになる。わかりやすく言えば、母親が、自分自身のもつ(限界)に気づき、その(限界)と、戦うこと。

 さらに言えば、子どもがその年齢に達したら、母親自身が、子どもの自立をうながしながら、子ども自身が、親離れできるように仕向ける。たとえて言うなら、親鳥が、ヒナを、巣から追い出すような行為をいう。これはただ単なる子離れとは、異質のものである。

 親が子離れするのは、子どもが親離れしたあと、必然的な結果として起こるもの。

 当然、父親の強力も必要となる。先にも書いたように、父親の役割は、ともすれば濃密になりやすい母子関係に、クサビを打ちこむこと。そして、子どもを外の世界に連れ出し、(狩りのし方)を教えること。

 もっと言えば、母親が、その母性本能に溺れ、母親だけの子育てをするのは、危険なことですら、ある。その危険さに、母親自身が気づく。それがここでいう(限界)ということになる。

●Yさんのケース

 Yさんのメールを読むと、Yさんの周辺には、さまざまな問題が、くもの巣のようにからんでいるのがわかる。(メールは、掲載許可がいただけなかったので、ここでは紹介できません。)

 Yさんには、つらい話かもしれないが、順に、Yさんの問題点を整理してみよう。

(1) 恵まれなかった、幼少時代。貧弱な愛情問題。
(2) 父親不在の家庭環境。父親像の薄い、家庭環境。
(3) 濃密な親子関係。個人化の遅れ。自我群の束縛。
(4) 心を開けない、家庭環境。母子関係の不全。
(5) 母親への強度な依存性。マザーコンプレックス。
(6) 両親の離婚。それにともなう、心の葛藤。
(7) Yさん自身の信頼関係の不足。そして仮面。
(8) 不安神経症と、基底不安。基本的不信関係。
(9) 夫の単身赴任。どこか心さみしい結婚生活。
(10)夫や子どもにさえ、心を開けない心の閉鎖性。

 Yさんには、心の状態を正確に知ってほしかったから、あえて書き出してみた。Yさんに与える衝撃には、はかり知れないものがある。それはわかっている。しかしこの問題だけは、自分が何であるか、それをまず知る必要がある。「私」を超えた、「私」を、である。それがわからないと、いつまでも、私であって私でない部分に、振りまわされるだけということになる。

●時は心の癒(いや)し人

 「私」がわかれば、あとは、時間が解決してくれる。『時は、心の癒(いや)し人』という言葉は、私が考えた。すぐには、解決しない。しかし「私」が何であるかがわかれば、あとは、はやい。

 あるいは「私」が何であるかわれば、別の「私」が、それをコントロールするようになる。「これは本当の私だ」「これは本当の私ではないぞ」と。Yさんも、心に大きなキズをもっている。そのキズが、今のYさんをつくりあげた。

 「勉強が好きだった」と言うYさん。しかし本当のところは、勉強が好きだったというよりは、勉強を通して、自分にとって、居心地のよい世界をつくっていただけなのかもしれない。どこか自虐的な勉強をしながら、母の関心をひき、母の期待に答えようとした。

 しかし本当にYさんは、もっと、安心して、つまりは不安なく暮らせる、安定した家庭を求めていたのかもしれない。が、その希望は、うまく、かなわなかった。

 ……と、いろいろ考えられる。が、ここで重要なことは、「過去は、過去」として、明確に割り切ること。実のところ、Yさんは、もう一つの問題をかかえている。「世代連鎖」という問題である。

●世代連鎖

 こうした問題は、世代連鎖しやすい。事実、Yさんの母親は、Yさんに離婚をすすめている。周囲に離婚の経験のない人は、こういうケースでも、「離婚」という言葉を、安易に口にしない。そういう発想そのものがない。一方、身近で離婚を見聞きした人ほど「離婚」という言葉を、口にしやすくなる。

 そのYさんの両親は、Yさんが、子どものときに離婚している。離婚することが悪いというのではない。離婚する人には、離婚するだけの理由がある。「結婚」という形にこだわる必要はない。しかし問題は、その離婚にまつわる心の葛藤、家庭内の騒動、そして「心」の崩壊である。

 Yさんの子どもは、今、まさに、Yさんが少女時代に体験したのと同じ体験を、繰りかえそうとしている。そのことにYさんは、まだ気づいていない。実のところ、Yさんが、心を開けないなら開けないで、それは構わない。

 しかしそういうYさんを母親にもち、人知れず、一番悲しみ、苦しんでいるのは、子ども自身である。それを忘れてはいけない。もっと言えば、Yさんの子どももまた、人に対して心の開けない人になってしまっている可能性がある。しかも悲劇的なことに、そのことに、Yさん自身が気がついていない可能性がある。

 言うまでもなく、心の開いている人からは、心の開いていない人がよくわかる。しかし心を開けない人からは、心の開いていない人がわからない。他人も、自分と同じようだと考えてしまう。

 こうして、親から子へと、心が伝わっていく心が、心として、世代を超えて伝わってしまう。これを世代連鎖という。行為や行動が伝わるのではない。行為や行動は、あくまでも、その結果でしかない。

【Yさんへ……】

●あなたはすべてをもっている

 かなりきびしいことを書いてしまいました。どうか、冷静に読んでください。私はあなたを怒らせるつもりも、不愉快にするつもりも、ありません。

 あなたに、心の平安を取りもどしてほしいのです。安らかで、落ちついた世界です。

 今、あなたはすべてをなくし、不幸のどん底にいると思っているかもしれません。しかしこれは、たいへんな誤解です。

 実は、今、あなたは、(すべてのもの)をもっているのです。やさしく、子ども思いの夫。家庭と家族。健康。若さ。人生。やさしい母親。あなたの母親には、どこか問題はありますが、しかしこの日本では、平均的というより、平均以上!

 あなたはすべてをもっているのです。あなた自身も、です。聡明な知恵、知識、学識、経験、常識。すべてです。

 ただ一つ、問題があるとするなら、あなたは、自分だけの世界に閉じこもってしまっている。あなたの夫ですら、信じていない。あなたの子どもですら、信じていない。

 ここが最大の問題です。あなたは自分のことしか考えていませんが、(たしかにそういう意味では、自己中心的ですね)、そういうあなたを妻にもち、母にもち、さみしい思いをしているのは、あなたの夫であり、子どもです。

●借金など、何でもない問題

 はっきり言いましょう。カードローンによる借金など、大きな問題ではありません。事業に失敗し、破産しても、夫婦で助けあいながら、懸命に生きている人は、この世界には、ゴマンといますよ。深刻な子どもの問題をかかえながら、懸命に生きている人は、さらに五万といますよ。いちいちそんなことを離婚事由にしていたら、この世の中には、結婚する人などいなくなります。

 (あなたが離婚を考えていることについて、あるいはもっとほかにも、理由があるのかもしれませんが……。夫が単身赴任をしていたという事実が、どうも心にひかかります。どうして単身赴任など、させたのですか? あるいはその前から、夫婦関係が、おかしくなっていたのですか? 私は単身赴任などいう制度そのものに、若いときから、猛反対してきました。「家族がバラバラにされて、何のための仕事か!」とです。)

 それにしても、今、あなたにとって大切なことは、命を削るような転機を迎えることではなく、やるべきことを自分に向ってすることです。

 もしあなたにまだ、いちるの望みがあるなら、そして夫に対する愛が残っているなら、負けを認めなさい。心を開いて、負けを認めなさい。がんばる必要はありません。勇気を出して、心を空に向って、解き放つのです。勇気を出して、です。体は、あとからついてきます。

●もっとさらけ出して生きる

 がんばってはいけません。プライドにしがみついてはいけません。ありのままを、あなたの夫や子どもの前で、さらけ出すのです。それでダメなら、ダメでいいではないですか。ダメで、ダメもと。

 「子どもを白目でにらんだり、指を吸ったり、バスタオルが離せなかったり……」と、あなたは書いています。

 いいじゃないですか、白目でにらみたかったら、にらめば。どうしてそれが悪いことなのですか。

 いいじゃないですか、指を吸いたかったら、吸えば。どうしてそれが悪いことなのですか。

 いいじゃないですか、バスタオルが離せなかったら、もっていれば。どうしてそれが悪いことなのですか。

 私も、神経が不安定になると、ワイフのおっぱいをずっと吸っていますよ。ある雑誌の告白手記に書いてありましたが、毎晩、夫のペニスを吸わないと眠られない若妻だっているそうです。毎晩、チューチューと吸いながら、眠るのだそうです。

 さらに私の知人(もちろん男性)の中には、一流企業の役員をしているのがいますが、その彼の密かな趣味は、大きな尻をもった女性に、その尻で、顔を踏みつけられることだそうです。わかりますか? みな、それぞれです。人、それぞれです。

 みんなそれぞれの方法で、自分の心の問題と戦っているのです。「これはいいことで、これは悪いこと」と、決めてかからないこと! したいことをしなさい。言いたいことを言いなさい。あなたの夫や子どもには、したいことをさせてあげなさい。言いたいことを、言わせてあげなさい。他人にはできないかもしれませんが、夫婦や家族に対してならいい。だから、夫婦であり、家族なのです。

 おかしな基準をもつこと自体、Yさん、あなたには、家族像が入っていないということです。勝手な空想で、理想の夫婦像などつくらないこと。

●あとは、居直る

 あなたはあなた。どこまでいっても、あなたはあなた。居直りなさい。仮におかしな性癖があったとしても、(ぜんぜん、おかしくないですが……)、そんなこと気にすることはありません。

 Yさんが、今、かかえている問題は、一見、Yさんを包む家族の問題に見えますが、ひょっとしたら、Yさんがほんの少しだけ、心の向きを変えれば、すべて、解決する問題のように思います。ある意味で、何でもないですよ!

 どこにでもある。だれしもかかえている。多かれ少なかれ、みな、です。

 イランの笑い話に、こんなのがあります(イラン映画「桜桃の味」より)。

 ある男が、病院へやってきて、ドクターにこう言いました。「ドクター、私は腹を指で押さえると、腹が痛い。頭を指で押さえると、頭が痛い。足を指で押さえると、足が痛い。私は、いったい、どこが悪いのでしょうか?」と。

 するとそのドクターは、こう答えたそうです。「あなたは、どこも悪くない。ただ指の骨が折れているだけですよ」と。

 いいですか、あなたは今、すべてのものを持っている。(すべてのもの)です。(私は生きている)という原点から、もう一度、自分をながめてみてください。それですべてが、解決しますよ。

●すばらしい母親

 Yさんは、若いのに、じゅうぶん、自分を冷静に見つめる視点をもっておられます。すばらしいことです。そこらのママ(失礼!)とは、中身もできもちがいます。メールの内容から、それがわかります。

 それに子どもが男児だから、よけいに戸惑っておられるのかもしれません。Yさんには、「男像」というのが、脳の中に、インプットされていないのです。しかし、それは仕方のないこと。大半の母親がそうです。

 方法があるとしたら、頭の中で空想することによって、あなたの子どもの中に、自分を置いてみることです。子どもの目を通して、自分がどう見えるかを、空想してみるのです。

 たとえば今、私のワイフイは、居間で、あれこれあと片づけしています。そのワイフの視点の中に、自分を置いてみます。そうすると、ワイフの目を通した、自分が見えてきます。

 ワイフはきっとこう思っているはずです。「何も、手伝ってくれないで、パソコンの画面にばかり向っている」と。

 こうして相手の心の中に入ることによって、あなた自身の自己中心性を、克服することができます。意外と簡単ですから、一度、試してみてください。

 Yさんの心をふさいでいる重石(おもし)は、相当なものです。しかしもう、あとは時間の問題です。なぜなら、すでに、Yさんは、その重石が何であるか、気づいているからです。

 あとは、勇気を出して、自分の心を空に向って、解き放ってください。体はあとからついてきます。